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第三王子目線の話です~


連載開始いたします。ブクマ、評価、ご感想ありがとうございました。ご感想は、今回から受付しません。活動報告に詳細書かせていただきました~。

でも、これから頑張ります。



「ファッション王族だもん、仕方ないよぉ」


 お気楽な性格の、同い年の第四王子が、ゆるっとそんな事を言ったので、腹が立って頬を抓ってやった。


「抓ったら赤くなっちゃうから、やめてあげて。これからお見合いパーティーなんだから」


 慌てて私の手を掴んだのは、やはり同い年の第五王子だ。三人の中では一番大人びていて、いつだって冷静な判断を下す。


「ファッション王族なんて言われて、悔しくないのか? 貴族令嬢達だって、陰ではそう言って私達を馬鹿にしているくせに、茶会や夜会で私達を見ると、クネクネしながら誘ってくる! 気持ちが悪い!」


 第三王子として生まれ、幼い時より、王子としての教育を一所懸命受けてきた。今代は、上の二人の兄が完璧すぎる為、王位継承権はほぼゼロの私達だが、大人になれば対外的な政策には関わって行く。その為に、厳しい教育が必要だった。

 平和な世の中だ。国内も、世界的にも、もう何百年も平和が続いている。だったら何もしなくても良いかと言えば、そうではない。平和だからこそ、他国との関係維持の為に尽力しなければならないのだ。

 絶対王政など、遥か昔。どこの国でも、王の他にリーダーのような者を国民投票で決めて、政を行っている。貴族達は、自領を治めながら、国民のリーダーの政策に従って、自分達の使命を全うするために動く。だからといって、リーダーとなる人物が特別偉いわけでもない。命令に従わないからといっていきなり死刑になるわけでもないし、ペナルティは、その罪の大きさによる。

現在、王室は、国の歯車のひとつでしかない。対外国の為の政の機関だ。自国へ他国の要人が来た際のもてなしや、他国で何かあった際の訪問、貿易関係など、一人一人が、身を粉にして働いている。一体、世界にいくつの国があると思っている? 煌びやかな衣装の裏で、体はもうボロボロなのだ。人員不足。だから、王は子孫を増やさなければならない。正妃の他に側妃、寵妃と、婚姻を結び、子を生して行く。同い年の兄弟がいるのは、その為だ。


「まあ、実際、キラキラしてるところに、令嬢達は憧れてるんだと思うけどねぇ。私達はそれなりに美形だし、王族に嫁いだら、ずっと王城で暮らして、他国の要人が来たら毎日晩餐会、他国へ訪問したら、向こうでも毎日晩餐会。そういうところばっかり報道されているしね。いっつもいい服きてるし、美味しいもの食べてる写真ばかり見ているだろうし。まさか、食事もする時間がないぐらいタイトなスケジュールで国々を回っているなど思いもつかないだろうね」

「貴族連中も、娘には甘いから、お気楽なご令嬢ばかりだものね。ご令息達は、親から少しは厳しさを聞いているのか、少しでも爵位が上の家に婿入りしたいと思っているようだよ。上に行けば上に行くほど、発言権もあるし、下は雑用ばかり押し付けられるからね」

「ほら、見てごらんよ。いま会場入りした公爵令嬢に、他家の令息達が擦り寄っていってるよ? あ、でも全員撃退されたっぽいね。面白い。あの娘、今日の見合いには乗り気じゃなさそう」


 城から、茶会の会場を三人でオペラグラスを使って眺めていた。確かに、一人だけ、不機嫌そうな令嬢がいる。公爵令嬢という事ならば、もしかすると、王族狙いなのかもしれない。それにしては、地味な格好をしていた。


「私は、配偶者など要らない」

「フランシスはまた我儘を言って……。私は欲しいな、配偶者。ボロボロになった心を癒してもらいたい。優しいご令嬢を探さなくちゃ」

「私も、各国に訪問する際に、美しいパートナーを伴いたい。どこへ出しても恥ずかしくない才女が良いな」

「あの中に、そんな女がいるものか」

「フランシスは馬鹿だねぇ。才能を見極めるのが大事なんでしょ? その為の教育機関じゃないか。最初から何でも出来る人間なんていないんだよ」

「フランシスには、理想はあるのか? こういう女性ならば、というような」


 女は嫌いだ。幼い頃に大好きだった叔父上。その妻である女は、毒婦だった。破廉恥なドレス、破廉恥な化粧。いつも口角は意地悪にあがっていて。これでもかとふりかけられた香水のせいで、奴が近くにいるといつも食欲が減退した。匂いで頭が痛くなる。それを誰も指摘しない。叔父上とともに、各国の要人に挨拶している時も、気持ちの悪い色目をつかい、相手のパートナーの顔を顰めさせる。ボディタッチも激しく、我が国の恥だった。あれなら、叔父上一人だけで仕事をさせた方がマシだ。

 ある日、私は叔父上に呼ばれていると聞き、部屋を訪ねた。だが、部屋の中にいたのは、毒婦だった。唇に指をたてながら静かに近付いてきた女は、あの甘ったるい匂いをさせて、ガウンを脱いだ。中は全裸だった。全身粟が立ち、私は叫んだ。何事かと集まってきた護衛に縋り付き、嘔吐した。女は裸を見て吐くなんて失礼だとかなんとか喚いていたが、私はそのまま気絶してしまった。私が十歳の時だった。

 その後、女は離縁され、牢屋へ入れられた。まだ幼い私を襲おうとした事の他に余罪がたくさんあった。主に、姦淫罪だ。王族には、そんなに大きな力はないので、死刑などにはならない。その内、牢屋から出されてしまう予定だ。逆恨みされていないといいが、と、今から不安を覚えている。


「理想……立場上結婚しなければならないだけで、私に特別な何かを求めるでもなく、互いに干渉し合わない生活を受け入れ、各国訪問に連れていってなどと強請ったりせず、子も欲しがらない女……だろうか。あと絶対に譲れないのが、胸は小さい方が良い」

「…………フランシスの理想って、逆に難しいよね!」


 そんな事を話している内に、私達が会場入りする時間になったと迎えがきた。



(つづく)


ゆっくり更新していきます。

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