仕事しない人達には昼休憩なんて有っても無いようです。
「なんていい天気なんだ…タキヤさんの遅刻届け、欠勤届けもあと3日もあれば終わりそうだし…。」
驚く事に彼がここに勤務を始めてから2年も経ってないらしい。が、その間にまともに出勤した日数はわずか4日…。何故先輩の遅刻、欠勤…そしてほか2名も合わせた早退届を書くことが仕事として成り立ってしまうのか……。
まあ、高校中退である俺には高度な事は出来ないだろうから。今ぐらいが丁度良かったりもするけど。
「ここか。」
県庁舎から近いファミリーレストランの看板を見て足を止める。外をふらついていたジェシカから昼食を一緒に食べようと誘われたのだ。
当然県庁舎の中にも昼食を取るスペースは有る。が、そこは非公式の俺達である。当然使えるはずも無いので長めの昼休憩を与えられる変わりに外食で済ますのが基本なのだ。
「あ〜、来た来た!。ここだよ〜。」
俺を見つけると周りの目を気にせず声を上げ、手を大きく振るジェシカ。大きめの白いパーカーに黒いフリフリのミニスカート。そこから伸びるこれまた白く細い足と素晴らしい白・黒・白のコントラスト。こいつの早退届とある程度の遅刻、欠勤届けを書くのが俺の仕事で無ければときめいていただろう。
「うるせぇよ。周りに人いるだろ。」
「いいじゃん別に〜。細かいこと気にしてたら老けちゃうよ?」
老ける?細かい事気にしてようが若い人は若いだろ。
「は?なんで50円玉じゃなくて10円玉が5枚出てくんの?このクソ自販機がっ!!」
バンッ!!
ガラの悪い高校生が通りの自販機に八つ当たりしているのか?。そんな事でいちいちキレんなよ。
「うわ、オウラじゃん。めんどくさいし外見なようにしよ。目が合うと絶対来るからさ。」
あんたかよ。この人は細かい事気にしすぎて逆にガキだな。
俺の中でオウラさんの評価がガッツリ下がった。
「ご注文はお決まりになりましたか?」
店内の方を向いていると目が合ったウェイトレスさんがこちらへ来た。注文したいと勘違いしたらしい。このまま間違いですと言うのもあれなのでメニューを流し見て、無難な物を注文する。
「この…ボリューミー・ジャンキーステーキセットとメロンソーダください。」
「ん〜、私も同じので!飲み物はリンゴジュース!」
かしこまりました。そう言ってぺこりと頭を下げ、去っていくウェイトレスさん。仕事に対して真面目に取り組むその姿に今の自分を無意識に重ねてしまい、心の中で小さく頑張れと声を掛ける。
「うわ〜、ガン見してるのちょっと引く〜。サイトもやっぱり男の子なんだね〜。」
「うるせぇよ。少なくともお前の5倍は見る価値有るわ。」
「ねぇ君!ちょっとお昼一緒に食べない?奢るからさぁ〜。」
「は、はい?私、今お昼休憩中なんですけど?てゆうかあなたみたいな昼間っからフラフラしてるような人…普通に引きます。ナンパする時間あるなら仕事探して下さい。」
「が、がはぁぁぁ!!…」
平日の昼間っから仕事中の女性をナンパとかゆう猛者が振られたショックで変な声を上げてるなぁ…
「うわ、タキヤじゃん。道路に膝ついて空見上げてるとかダッサ。目が合うと絡んできそうだし見ないようにしよ。」
お前かよ。女好きとは言え無秩序に声掛けてんのかよ。オウラさんと良い、こいつらは休憩中になにしてるんだ…
再び店内を見る。今度はオウラ(さん)の時とは違い、自然と先程注文を取ってくれたウェイトレスさんを目で追い掛ける。
昼とは言え平日。客の姿はまばらで、そのせいか接客をしている店員も彼女ともう1人のみだ。
料理を乗せたトレイを両手に持ち、トコトコ。
「こちら熱いので、お気をつけください。」
ぺこり。トコトコ。
「ご注文をお伺いします。………はい、かしこまりました。」
ぺこり。トコトコ。
落ち着いた雰囲気がありつつもあっちえこっちえトコトコと駆け付けてはぺこりと頭を下げる。
人懐っこい印象を受け、まるでご飯をおねだりして回る犬の様だ……かわいい。
「ねぇ〜。なんでニヤニヤしてるの?タキヤみたいだよ?」
「え?まじで??」
いかんいかん。あの反面教師の様になってはいけない。チラッと外を見ると丁度トボトボと歩きながら去っていくタキヤ(さん)が見えた。実に情けない背中だ。
「お待たせしました。こちらご注文されたボリューミー・ジャンキーステーキセットとドリンクになります。」
ゴトンッ。先程のウェイトレスさんが重厚な音を立てて俺の前に注文したステーキを置く。
「あ、あれ?こんなにでかいの?」
一体なんgあるんだ?ラグビーボールの真ん中を厚さ4cmで切った様なでかさだぞ…
「はい。ボリューミーサイズなので食べ応え満点ですよ!でも無理は禁物です。ゆっくりとお食べ下さいね。」
にこり。天使スマイルで俺の腹の心配をしてくれるウェイトレスさん。呼吸の際にストレスも一緒に吐き出している様な3人を知ってからはあらゆる女性が天使に見える…。
グチィ、ボ、ボキャァアッ…ブチッ
とか思ってると目の前でジェシカが骨付きチキンさながらに肉の塊にかぶりついている。もはや食事ではなく捕食と呼ぶべき様だ。
「ふぁあいふぉ…ふぁべふぁいふぉ?」
「お前は周りの女性を少しは見習おうな。」
凄惨な様を前にした俺は、笑顔で乙女もどきにアドバイスをしてあげた。




