溜まった仕事と溜める先輩
春…。少し暖かくなり始め、日の差す時間が比較的長くなり始める時期。ポカポカとした大気がゆっくりと流れ、窓からこぼれる日差しは荒んだ心をなだらかににしてくれるかの様だった。
「ふぅ…平和だなぁ。」
一昨日は酷い1日だった。そう、荒んでいるのだ。俺の心は…、目の前で平然と行われた殺人・暴力…。
更に幸か不幸か。いや、強いてゆうなら不幸かもしれない事に俺の恒久的な職場と個性強めな先輩達が決まってしまったのだ。
俺が住む県の中心。県庁舎の三階、その一室がその職場だ。そう思うと改めて公務員何だなと感じる。が、しかし。問題は先輩達の方だ…
ドォンッッ!
ドアが蹴り開けられる。最早常習的に行われるそれによってドアノブは既に壊れ、修理はされる予定すら無い。
「彩斗!!近くでヒーローショーやるみたいだよ!不良戦隊ワルインジャーの!!行こ!!行こ!!」
「ジェシカ…近くって言ってもそれ片道4時間じゃないか。てかお前昨日も『近く』って言って片道6時間の所誘っただろ?お前日帰り出来るヒーローショー全部行くつもりかよ。」
「ほんとにこの金髪オタクは。サイトは僕と一緒に近くの激辛バーガーを食べる約束があるんだよ。全く…髪の色だけじゃなくて、頭の中まで色々抜けてるな、ジェシカは。」
「オウラさん…勝手に俺との約束作らないでください。てかあなたも『近く』の激辛バーガーっての、昨日言ってた片道3時間の店の事でしょ?あんたも距離感抜けてるよ。」
「彩斗君!こんな変な人といるとモテないよ〜。だからね、今度さ!年下好きの綺麗な女の人紹介してあげるからさ〜…同級生紹介してくんね?」
「さ〜てと。書類まとめるか。」
そう、他の班に比べればこの班は至極単純。その為事務作業も沢山有るとは言えないが放置できる仕事を全て放置していたようで今はたんまりとやる事が有るのだ。
「…へ?、なんで俺だけ無視されんの?」
「嫌われてるんだよ、プププ。」
「嫌われてるも何も…俺が今せっせと書いているのあなたの遅刻理由や無断欠勤その他諸々の書類なんですけど?てか殆ど遅刻か休みってどうなってんすか?」
そうこの男は他2人に比べればいくらか常識は有りそうだが(女性関係以外)とにかく時間にルーズすぎる。期限や刻限とゆう物を全く気にしている様には思えない。
「あー、多い…あのぉ、誰か手伝おうとか思ってくれたりとかは…」
「さーてと。おやつ買いに行ってこよーと。」
「それなら激辛バーガー買いに行くか。1人で寂しく…。」
「俺いてもやること無さそうだしナンパいってこよーっと。」
ドタドタドタと3人が部屋から出ていく。
正しく出社した『だけ』だった。こんな感じだから基本給は殆ど支払われていないがそれを補って有り余る危険手当でこの3人は暮らしている。なんとも自由気ままな3人だ。
「はぁ…こんな3人が公務員って…どんな冗談だよ… 。」
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「…よし、なんか減ったような気がする。」
トントントン
「お疲れ様です。」
嵐のように現れ、去っていった3人。当然扉を閉めることも無いので用があれば普通に入ってこれる。が、その人は丁寧にノックをしてくれた。
「あ、はい。」
「この班の事務作業をしてくれてありがとうございます。あまり強くは言えないですが出す物は出してもらわないといけないので。」
う、嬉しい。まさかこの職場で感謝の言葉を貰う日が来るなんて…
「あ、いやぁ。俺も成り行きとはいえ仕事ですから。」
「まあ、常識のある方が来てくれたようで…本当に嬉しいです…。」
心無しか泣いてる?タイトスカートにシャツとゆうOLスタイルの上にふわふわのカーディガンを羽織っている。髪は肩にかかるくらいでふわふわと緩いカールをかけており。顔も幼げな印象のあるとても愛らしいものだ。確実に年上だろうけど。
「あ!、自己紹介がまだでしたね。私はこの支部の管理官をしている祈織 陽奈と言います。一応上司に当たるので何か分からないことや不安な事があれば、遠慮せず言ってくださいね?」
きゅーーーーん!!何この人可愛い!!
見た目のふわふわキュート感もさることながら言葉から滲み出る優しさが堪らない。
「は、はい!!どんどん聞かせてもらいます!!」
「うんうん!沢山聞いてね!。あ、書類は無理しなくてもいいよ!今のペースでも十分減っていってるみたいだし。あの人達とまでは言わないけど程よく力を抜いてやっていくといいよ!」
バイバイ。突如出来た妹かのように愛らしく小さな手を振り去っていく陽奈さん。
うん!いい職場じゃないか!!




