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コーイチの回想 前編


「………起きたか。」

「こ………こは………。」

「私の屋敷じゃよ、お前、1年も眠っておったんじゃぞ?」

「………!マジか………。」


俺はもぞもぞと起き上がろうとするがうまく動かない、何日もベット生活を続けると体が動かなくなるアレだ。



「………ここは、あの怪物と戦った場所だった、一帯はクレーターだったはず。」

「そりゃあ1年たっとるから治るものも治っとる、まだまだ傷跡も多いがな。」


スリューシャの言うとおり、まだまだ建築途中のものや、更地の部分も多い。


「………死者は、いくら出たんですか。」

「そうじゃのう、十人二十人じゃ済まなかったはずじゃ、墓所には慰霊碑を建てて、何千もの花束が飾られておる。」

「………。」



俺はそれからしばらくして街を出た、俺は一度今までどおりの生活に戻ったように思えた、だが違った。


「………やっぱり、撃てない。」


俺は魔導書を片手に玉のような汗を浮かべるが、ついにメガカオスアドルビュートもギガクラス魔法も使えなかった。


「消費量が、違いすぎる………。」


改めて俺はギセルさんやリューゼさんの凄さを思い知る、その力が長年の努力に裏打ちされていたものだということを。


「成長、できない………。」


何をしても、駄目だった。


自分で言うのもなんだが、ここまでやってこれたのは才能のおかげだったんだろう。


そして、その才能ではBの壁を打ち破ることができないというだけの話だった。


メガクラスの魔法が使える回数は増えていくが、ギガやアトルビュートに届くことはない。


俺の成長は、止まっていた。



「………はぁ。」


俺はなにもない日でも魔法を使い続ける。


今まで探索続きで止まっていたトレーニングをやりだした、しかし何をしても変わらない、成長しない。


「………どうすりゃいいんだ、俺は………。」

「すみません、あなたが私達を護衛してくれるという人ですか。」

「………!!はいっ、そうです、すみません来なくて、トレーニングが長引いちゃって。」 

「そうなんですか………。」


それは護衛の依頼を出した商人の老夫婦で、俺はその依頼を受けていた。


「ここから先は、野党の多い地域だそうですね。」

「そうです、だから私達も護衛をつけることにしました、ほんとうにたまにならそうではなかったんですが、この一ヶ月で三人もやられたそうです………さぁ、乗ってください。」


俺は馬車に乗って周囲を警戒していく。


「………険しいですね、ここは。」

「はい、これで野党がいるんだから、溜まったものではありません!!」


そう言って彼は苦笑いする。



「私の特製スープです、どうか召し上がってください。」

「ありがとうございます………ん、美味しい、美味しいです。」

「ありがとうね、フフッ。」

「妻はスープを作るのがうまくてね、このために結婚したようなもんですよ。」


そう言ってから、二人は顔を見合わせ笑い出す。


「………こんな真夜中に森のなかにいても暇ですね。」

「そうですね、私も最初は娯楽なんてなにもない旅の道中、どうやって時間を潰そうかとそればかり考えていましたよ。」

「この人文字が読めるから、たまに本が手に入る機会があるなら買ってくるんです、でもね、この人が買ってくるのはいつも子供向けの童話なんですよ?」

「それしかないんですよ、全く困ったもんですよ。」

「………それ、1つ借りてもいいですか。」

「えぇ?まあいいですよ、ちょっと持ってきますよ。」


そう言って彼が差し出してきた本は古びているが、ページは破れたりしておらず、大切にしているのがわかった。


「………『王様と騎士』『おかしな百姓のおかしな話』『果てを目指すカモメ』………。」

「お知りになられないかもしれませんね、どれも地方でほそぼそと伝えられる童話を本にしたものだそうで。」

「なるほど………。」

「………交通の便は良くなりました、それでもまだまだ人が遠くまで行き来することは少ない、だからこのような本が書かれても地方の童話でおわってしまう、私はたまにこれを村の子どもたちに読み聞かせて、広めようとしてるんですよ。」

「夫は、子供達に読み聞かせてるときがいちばんいきいきしてるんですよ。」


そう言って二人はまた笑い出す。



「………っ危ないっ!!」


馬車に揺られているとき、気づくことができたのは奇跡だった。


俺はシールドで飛んできた矢を防ぐと奥からチラチラ盗賊が見てとれる。


「メガウォーターッ!!」


俺が生み出した水球は盗賊を軒並み引き倒し、砕けて四散したあとも水流が押し流していく。


「止めてくださいっ!罠があるかもしれませんっ!!」

「わかった………。」


俺は馬車を止めて魔法で迎撃を続ける。


「………数が多いっ………。」


俺は木を影にしながら近づく盗賊たちに手こずってしまう。


「「「ウォォォォォッ!!!」」」


奴らは突然道に躍りでて、斬りかかってくるのを俺はメガロックで吹き飛ばす。


盗賊は気を失ったのか起き上がらない、それに追撃を加えようとして手を止める。


「いや、盗賊とはいえ、人殺しだぞ………生け捕りにするしかないか。」


これは別に不思議なことではない、冒険者は魔物を狩ったりするが、流石に人を殺すのはごめんという人間が多く、生け捕りにする人間は多い。


「………だがっ、そうなると打てる手も限られるかっ。」


俺は相変わらず湧き出てくる盗賊達を捌いていく、矢は初級のシールドで十分で、それで何回も防いでいく。


「クロスボウっ!!」


俺は最後の一人の肩に矢を当てて、それで全てが終わった。


「どうしますか、可能であれば騎士団に突き出すのが普通なんですが。」

「はい、しかしこんな小さい馬車ではどうにも出来ない………。」

「では、可能な限り乗せて、あとは道に縛って放置にしましょう。」


まぁ、流石に乗せられないからと無罪放免というわけにも行かない、俺は一人一人木に縛りあげていく。


「運が良ければ通りがかったやつに助けられるかもな、あぁ、野党には気をつけろよ?」

「この………くそったれがぁ。」

「ところで、この中でリーダーをやってる奴は誰だ、言ったやつだけは無罪放免でいいぞ。」

「なんだとぉ!!」


盗賊は口々にいろいろ喚くが、その中に「左端のやつがリーダーだ」という声が混じっていたので、俺は尋ねる。


「お前がここの頭か。」

「………あぁ、そうだよ。」

「よしっ、じゃあお前は馬車に乗って騎士団行きだ、ほれ、乗れ。」

「おいっ、俺はどうすんだよっ。」

「お前は………そうだな。」




「腕は後ろにまわして縛る、だが木には縛らない、どこへ行くもいいし、後ろの手で曲芸師みたいに仲間を助けるのも、好きにしろ。」




「………おい、まさか俺を餓死させる気じゃねぇだろうな。」

「飯は食わせるよ、ただし、腕は解かないからな。」


俺は夫婦の方に歩いてくる。


「彼はこっちがやっておきます、だから安心してください。」

「盗賊の頭を放っておくわけにも行けないから、仕方ないことなんだろうね。」

「すみません。」

「いや、謝ることじゃないよ。」

「スープを持っていってもいいでしょうか、さっきから食い物をよこせとうるさくて。」

「いくらでもとっていきなさい、なに、ちょっとくらい構わないよ。」


俺はスープを皿によそってやつのところに持っていこうとした。


「ほれ、あ〜んして食わせてやるからな…………っ!?」


俺は皿を思わず落としてしまう。


やつがいない。


その時、商人の夫婦が座っていたところから悲鳴が聞こえる。


俺が走り出すと、盗賊の頭と、先程逃したその手下が、ナイフを二人に突き立てているところだった。


「なっ………。」

「フハハハハハッ、ざっまあねぇぜっクソジジイ!!」

「見てくださいよこれっ、こんな子供用の童話なんて読んでてさぁ、馬鹿じゃねぇのかっ!!!」


そういって手下のほうが童話の本を焚き火に投げ捨てる。


「………。」

「じゃあなまぬけぇっ!!そこでそいつらと仲良くしてなっ!!」


ハハハハハハと笑って闇夜の中を走っていく二人、それを見ながら、俺の頭から血が引いていくのが分かった。


夫婦の目はすでに虚空を見つめていて、もはや息をしていないのは分かりきっていた。


「………生きてかえれると思うなよ。」


俺は、辛うじてそう声を絞り出す。



「フハハハハハッ!!!」

「ざまあみろよ老害がっ!!」


そう言って二人はかけていく。


その後ろを振り返れば、極大の土の塊が浮かんでいるのが見えるというのに。


「アハハハハハハ………あっ。」

「なんだ……!!?」


見れば、部下の頭は吹き飛ばされ、残された体だけが静かに倒れた。


「そんなっ………うがぁっ!!?」


頭の方にもそれはあたり、骨の折れる音が響く。


「お前に当てたのは試合のとき使う魔法だ、威力は低いから安心しな。」

「ヒ………ヒヒヒヒ………ざっまぁねぇぜその顔よぉ、最高だ、その顔を見るのが楽しいんだよ………!!」

「………………。」

「ヒヒヒヒヒ……グァァァァァアア!!!」


俺の魔法はやつの顔面をしっかり捉え、嫌な音が聞こえてきた………。

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