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旅たちの刻限

バルタイがやってきたのはサンティシナと出会ってから3ヶ月後だった。

「✕✕✕、『相談』✕『ある』✕✕、『ついてきて』✕✕✕✕✕?」

「『私は』『構わない』。」

そう返すとバルタイが驚いた顔をして、「『できる』✕✕、『しゃべる』✕✕?」

「『勉強』『した』。」

そう簡単な返事を返すとそうかそうかとうなずくバルタイ。

「『こい』。」

俺はついていくと、バルタイはとある家の中に入り、椅子を勧める。

「『ありがとう』。」

「『いい』『いい』………✕✕、『話』✕『ある』………『言ってた』『もう』。」

「そうですね、もう言ってますね、で、『何』『話とは』。」

「『あなた』✕✕✕『ここ』✕『おいて』✕『できない』。」

その瞬間、一気に空気が重くなったのがわかった。

ああ、来るとは思ってたよ、遅かれ早かれここをでなければならないときが。

知ってるさ、だからこうして言葉をサンティシナから必死に学んできたんだ、言葉だ、言葉され話せればなんとかなるんだ。

だが………間に合わない。

「『今』『出ていく』『困る』………『準備』『できてない』。」

「『違う』✕✕、『すぐ』『ではない』、✕✕✕✕『半年』✕✕✕✕。」

半年か、半年………その間に仕事は取れるだろうか。

そんな心配を察したのかバルタイは続ける。

「『仕事』✕『心配』『ない』………『冒険者』✕✕✕✕『知ってる』?」

冒険者、か………。

今や異世界系小説でその単語を聞かないと言うのはまずありえない。

冒険者ギルドに所属し、ダンジョンに潜ったり魔物を狩って、素材を売る人間だ。

当然知ってはいる………まぁ、ここで言う冒険者が同じかは分からないが。

「『そこ』✕✕『年齢』✕『満たせ』✕『登録』『できる』✕✕✕✕✕✕✕。」

「『誰でも』?」

「『そうだ』。」

しかし、それはそれで問題がある。

「『自分』『戦えない』。」

「『稽古』✕✕✕✕『やる』、『今』✕✕✕✕『精一杯』✕。」

ガサガサ立ち上がったと思えば奥に入っていくバルタイ、しばらくすると布をかぶった細長いものをふた振り持ってくる。

「『持て』。」

そう言って投げてくる、さっと受け取って紐を解くとそれは木刀だった。

それも日本刀をもした曲線的なデザインではなく、直線的でより細い西洋刀のデザインだ、まあ当たり前か。

「『明日』✕✕『始める』、『いい』✕?」

「………『はい』。」



ついにかぁ………。

覚悟はしてたけど、やはりくるものがあるな。

バルタイとあった家……多分バルタイの家だ、あの人普段門番の仮眠室で寝泊まりしてるらしいが……を振り返る。

思えば、軽い絶望が襲ったとき、思ってたことほど誰も救いの手を差し伸べてくれなかったわけではなかった。

サンティシナもそうだし、バルタイ、ああ、薬師の老婆がいなければ今頃死んでたな。

でも、もういなくなる。

「強く生きなきゃ。」

そんな臭い事を言って格好をつけていると、

「『おーい』!」

「!!!『お前』!」

振り向くと、遠くからせっせとかけて来る少女の姿。

サンティシナだ。

「『何』✕『あった』✕??」

「『ちょっと』『あった』、『ちょっと』『あった』。」

そう癖でつい連呼すると、サンティシナが眉を寄せてなんか言う、なんだって?馬鹿みたい?悪かったな!!



「『そう』………『いく』✕✕✕。」

「ああ。」

「✕✕✕、『急ぐ』✕✕✕✕。」

ここで言う急ぐとは、だいぶわかってきた言語学習の最終学習の事だ。

自分たちは、学校とか、人とか私とか、Iとか、meとか、そういう単語の、中でも日常会話でよく使うものに絞って暗記してきた。

千も二千も単語を覚えているはずなのに、実際に片っ端から言おうとしてもできて五十から百くらいだった、と言う経験はあるだろうか、そういう事情から特に使っている単語に限られたのもあるし、一度に学べる物量的な問題もほぼ毎日スパルタ的に打ち込まれたとはいえある。

しかし、その結果が、とかを、とかです、とかとにかく細かい言い回しや語形変化はまだ叩き込めていない。

まあ、半年でそこまで喋れるようにするのは絶対無理だ、だが、喋るよりかは聞くほうが遥かに難易度が低い、それくらいはそこまでわかるようになりたいのだ。

「✕✕✕✕、『外』✕『世界』✕『話』✕✕『聞かせて』✕✕✕✕?」

あっ………。

約束こそしてないけど、サンティシナって、俺から外の話を聞きたいから手伝ってくれてるんだった………。

どうするか………こればっかりは、なんとかごねて………誤魔化すか。

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