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少女サンティシナ

そこで少女の方を見てみると、すごいキラキラした目でこっちを見ている。

まいったな………。

話せるなら話したっていいんだが、自分はせいぜい特定の単語を連呼することくらいしかできないし、こんな絵はかけないし、そもそも自分ここに来てから自分の部屋とあの森の風景しか見てないぞ、まさか地球の事を書けと言ってるわけでもあるまい。

だが………。

また少女の方を見てみると、すごいキラキラした目を未だに向けている。

………これを引き剥がすのは骨が折れそうだ。

とりあえず………言葉を話せないで誤魔化すことにするか。

とりあえずペンをとって図を書く。

それは棒人間に吹き出しが出ていて、その中にはバツが書かれた物だ。

………しかし、この世界にはもう吹き出しもあるのか。

すると少女は全開にしていた目を細め、サラサラと図を書いてよこす。

そこにはまた頼み込んでいる少女のキャラクター。

ちなみに流石に棒人間だ、長い髪がついているが。

なるほど、まあ確かに言葉が通じないのはもう知っているだろうし、その上で来たんだからそりゃ引き下がるわけがない。

さあどうしようか。

こんどはさっきの棒人間の吹き出しのやつを書き、吹き出しの中にはたまによく見るもじゃもじゃしたやつを書く。

意味は説明しづらい、という意味だが、ちゃんとわかるだろうか?

そういうと少女も頭に手を当て考える。

引き下がる………か?

もうひと押しで帰ってくれそうだ。

最後にこう書いてやる。

棒人間すら書いていない、ただのバツ。

それを見ると少女が悲しそうにこちらを見てきたのでこちらもそつなく首をふっておく。

「✕✕………、✕✕✕✕✕✕✕、『帰る』✕✕✕✕✕✕✕。」

そういうといそいそと少女は荷物をおいて帰っていった。

こうしてひとまずこの珍客をうまく捌く事にひとまず成功した。



その日は、ね?



「✕✕✕、『見てる』✕✕✕『何』?」

「うわっ!!?」

突然窓からかかる声に俺は驚きを隠せないが、とりあえず落ち着いておく。

「あの、なんですか。」

どうせ伝わらないが日本語で問いかける。

すると意味は分からないがなんとなく雰囲気で言いたい事は分かったようで、『見てる』

だの『ここ』だの、何だの言ってくる、とりあえず見てるだけ?なのか?

「はぁ………。」

俺はひとまず何もしてこなさそうなので、机に戻って勉強に集中する。

少女はそれが終わるまでずーっと見ていた。



「✕✕✕、『分からない』✕✕✕?『本当』✕✕✕✕✕?」

「あぁそうですね、『分からない』『分からない』。」

そう適当にあしらうと、何よその態度と言わんばかりの顔をしたあと、あっ、と言葉が通じている事に気がついたらしい。

こいつがぷりぷり怒り出す前にしっかり教えておく。

「『勉強』『勉強』えーと、『わかる』『いくらか』。」

すると少女は目を丸くして。

「✕✕✕✕、✕✕✕✕『勉強』✕✕✕『してる』✕?」

と返してきた。

「そうだよ………、ええと、『少し』『少し』。」

はぁ、とため息をついて少女は窓によりかかる。

そしてまるで寝起きのときに脅かされたかのように跳ね上がり、こういう。

「『手伝う』!!」

「えっ………?」

次の瞬間脱兎のごとく駆け出して、俺の部屋に入ってくるまで1分もかからなかった。



「✕✕✕、✕✕✕『ほしい』?」

「『ほしい』………?ああ、教えてほしい、か、そうだな………。」

俺はさっと立つと扉を開けて外へ出る。

驚く少女に来いよ手招きする。

「あったあったこれだよ。」

俺がやって来たのは食堂だ、そこからフォークを取り出すと、それを差し出す。

それを困惑した顔で彼女は手に取る。

「『違う』『違う』、『教える』。」

ああ、と言う顔をしてフォークの単語の発音を教えてもらう。

「✕✕✕✕、『フォーク』、『フォーク』✕。」

「『フォーク』、『フォーク』ね、『いい』?」

そう言うとそれだとウンウンうなずく。

そうだな、じゃあこれだ。

俺は食堂のテーブルの上でサッサと書く。

それは、棒人間から吹き出しが出ていて中にあ、とかう、とか書いてある図だ。

???と一瞬困惑するが、すぐに気がついたようだ。

「『言葉』。」

「なるほど、これは『言葉』、と言うんだな、『合っている』?」

こくこくとうなずく。

なるほど………いや、これ思ったよりやってくれるかもしれないぞ。

自分の話す単語の発音は全部バルタイや老婆から教えてもらったものだが、彼らはめったにこないし、こうやって伝えようとしてもわからない事が多い。

だが、こいつはなんていうか、飲み込みが早いし、スムーズだし、ちゃんとちゃんと言いたい事を理解してくれる。

何より、毎日来てくれるからな。

「『お願いします』。」

そう言って俺は頭を下げると一瞬また困惑した顔をするが、すぐにそれはドヤ顔になった。

そこで、彼女から肝心要の事を聞いていない事に気がつく。

「『名前』。」

「???」

「『あなた』『名前』。」

「✕✕✕?✕✕✕✕『ニーナ』、『ニーナ・サンティシナ』、✕✕『みんな』『サンティシナ』✕『言う』✕✕✕✕。」

「『サンティシナ』ね、じゃあ、これからはそう呼ばせてもらうよ。」



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