来訪者
「はぁ………。」
俺はベットの上で頭を抱える。
怪我が回復して簡易病室となっていたある家の空き部屋は家具を少しだけ追加してそのまま住むことになっていた。
で、その机にのせているのは仕事用のノートだ、メモ帳に使っているそれはいま、異世界の言語の勉強に使われている。
文法などはとうに捨てて、単語の意味の暗記などに努めている。
だが、使われている単語からなんとなく何を言いたいか分かるようになり始めていた。
初歩の初歩には違いないのだが。
言語の習得は死活問題だ、いつまでもここにお世話になれるはずがない、だが、うまく話せなければ仕事どころか、買い物1つままならない。
だが、残念、自分は勉強ができる方ではないのだ。
「ハァ……。」
気晴らしに窓を見つめて外を見やる。
いつもの風景だ、2、3人くらいが前を通っていく。
と、その時だった。
「………?………!!」
一人だけ、こっちをじっと見ている少女がいる。
少女と言っても背は高いが、顔に幼さが残っているから多分16?だと思う。
あっ、どこかへ行って見えなくなった。
「たまたま見てただけかもな。」
そういうと俺は机の方に体を戻した………。
「またこっち見てる………。」
翌日、またあの少女がこっちを見ていた。
なんでだ?
こんどは昨日よりもずっと長くこっちを遠くから見つめている。
「………???」
だが、それでもしばらくするとまた帰っていった。
「✕✕✕、『こんにちは』!」
勢いよく開かれた扉の先を覗いてみると、彼女が立っていた。
ちなみに、さっきこっちを覗いてきたときから3分も立ってない。
まさか、見えないところから接近していつの間にか入ってきたと言うのか。
最初の言葉は分からないが、最後のこんにちはだけはかろうじてわかった、ヨシヨシ、成果は出てるみたいだな。
いやいやそんなこと言っている場合じゃねえ、こいつ一体何なんだ。
少女はずんずん入っていき、つらつらと話し始めるが、こちらが「私の言葉は分かりますか?」といつものように尋ねるとあっ、と気づいたような顔をする。
ひとまずゆっくり話し合おうそうしよう、話せないんだがな。
俺はノートを出すとサラサラと図を書く。
それは顎に手を当て首をひねるいつもの棒人間だ、今回は首をひねってるのが分かるように顔をどんぐり状に変えてある。
すると彼女は手を差し出したのでペンを渡してやる、すると黙々と図を書き続けた。
10分くらい立つと、すべてが終わったノートを差し出してくる。
「これは………!」
これ、漫画形式になってやがる、しかも絵がうめえ!
というかこの世界に漫画ってあるのか?
それはそれとして、まず最初の一コマは、少女が柵の外を見ている場面だ、この少女はこいつだろうか。
次のコマは、少女が柵を飛び越え、外に飛び出す図。
そしてそこからはいろんな建物や風景が描かれ、最後の方でベットから飛び起きる少女のキャラクター。
そしてそこからは、男の人が外を歩き回り、
怪我をして、最後は狭い一室、というか自分の部屋でベットから外を見ている構図が続く。
そしてそこに少女が入ってきて、お辞儀して、吹き出しが出てくる、その吹き出しには外の建物や風景が描かれている。
そして最後にもう一度頭を下げる少女の姿。
うん、わかりすぎるほどよくわかったよ、というかこれ10分でかけるのか、すごいな。
つまりお前は。
「外の世界の話を聞きたい、って言うことか?」