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プロローグ3

俺は門番の仕事を仲間に交代してもらい、やつのもとへと向かう。

今日はいよいよコーイチと本格的に話し合いをすることになる。

しばらく空き家を貸すにせよ、もう大丈夫だと出てってもらうにせよ、話を聞かないうちには判断がつかない。

「おう、婆さんか。」

「コイチはこっちだよ、ほら、きな。」

俺は婆さんの言われるままに向かうと、そこには服からまだ白いものがひらひらしながらも、大方包帯をとってしまったコーイチがいた。

コーイチはこっちに気づくと手を降って軽い挨拶してきたのでこちらも同じようにする。

椅子は3つあった。

それに俺と、コーイチと、婆さんがそれぞれ座る。

「いや婆さんもいるんかい!!」

「やかましい!」

まあ、それはそれとして、と咳払いをしたあという。

「コーイチ、コーイチ、これから君が何なのか、聞かせてもらおう。」

身振りを混ぜて言うと、コーイチは頭を縦に降って答える。

そしてコーイチは、いつの間にかコーイチの手に戻っていたバックから、本を取り出す。

それを広げると白紙が見える。

「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕。」

言葉については全くわからんのでこの際身振りに集中する。

と思いきや何もせずに細い棒を取り出し始める。

「…………?」

それの先端を彼は擦ると、なんとそこから線が出ていく。

インクによって書かれる線が。

「羽ペンか!!」

一瞬あまりに思っていた羽ペンと姿とちがかったために困惑したが、どうやらそのようだ、最も、普通はインクをつけてから使うはずだが………?

コーイチは紙にサラサラと書き続け、それはやがて簡単な図になる。

まず、棒人間が2本の木の間に立っている図。

そして、棒人間が膝立ちになり、頭を抱えている図。

「この木は何だ?森のことか?」

「この膝立ちの図は、悲しんでいる?いや、それとも困っているのかね?」

「森にいて、困っている………?」

困っている俺たちの様子を見かねたのか、コーイチはまた紙とペンを取る。

そして書いたのはさっきの膝立ちで頭を抱えた棒人間と、その四方にある矢印4本、それは外側に向かって刺されている。

「………迷っている?迷子?いや、正確には、遭難?ということ………か?」

「だいぶ見えてきたんじゃないかバルタイさんよ、どれ、ちと貸しなさい。」

コーイチからペンを借りると婆さんは紙に何やら書き始める。

それはただの棒人間と、前にある四本の線、それは平行に並び、その先端にはバツがつけられている。

そしてそれとは別に棒人間の後ろにも線が描かれ、それだけ先端にバツがない。

「フッ、婆さんこんな図形もかけんのか。」

「やかましい!」

「これはどういう意味なんだ。」

「他に何か言う事はあるか、と言う意味で書いたんだがねぇ。」

「ワザワザ書かなくてもあるなら勝手に話すのでは無いか?」

「やかましい!」

コーイチは首をひねってしばらく考えたあと、何か意を決した様子で紙に図を書く。

それは非常に簡単なもので、三角と四角が合わさる家の図にバツを書いた図だ。

「家が………燃えた?」

「なんで燃えるんだい?どっちかというと、なくなったと言うことではないかねぇ。」

それを見てコーイチは棒人間を書いて、家と棒人間の間に平行な2本線………道らしきものを書く、そしてそれにバツがついている。

「………帰れない?」

「と、言う事だろうねぇ。」



念の為その後もジェスチャーや絵で会話を取り続けた結果、何か解釈を間違えたところもないようだ。

もしもその確認すら間違いでなければ、彼、スズキコーイチは、おそらく森で道に迷い遭難した挙げ句、何かしらの理由で家に帰ることができない、と言うことだろう。



「ちゃんと伝わったかな………。」

そんな事を部屋へ帰るときつぶやいた。

扉を開けるとかつて簡易的な病室になっていた自分の部屋は今机などささやかな家具を運んでくれて自分の生活スペースへと早変わりすることになった、火事で焦げてたところも直されている。

椅子に座って考える。

今思うと正直賭けだったとは思う。

バツやマルなど簡単な記号は英語すら上回る広く普及した共通記号の1つだろうがそれは地球の世界の話にすぎない。

この異世界でも同じかはわからないのだ。

そこらへんが通じてよかった。

あの後の絵やジェスチャーを使った会話で向こうも理解している事が分かった。

あとは、彼らが自分をどうするか、自分としてはそりゃ他人に負担をかけたくないが、こんな有様じゃ出てってところで野垂れ死ぬしか選択肢がない。

働くにしても、会話がまるで通じないんじゃしょうがない。

「参ったな………。」

異世界生活は4ヶ月目に突入しようとしていた。


ここでプロローグ終了です

長くなったなぁ…………。

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