プロローグ2
体が動かん。
まず思ったのはそれだった。
「なんだ、なんだ?」
首だけがかろうじて動くので見れば、包帯が
もうグルッグル。
これは動けないわけだ………。
「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕。」
「………!」
見るとベットの脇にしわくちゃの老婆が立っている、細い、非常に痩せている。
「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕、✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕✕✕。」
とうとうと喋り始める老婆だが、相変わらずその言葉は理解できない。
試しに一言言ってみる。
「あの、私の言葉は分かりますか?」
「✕✕?✕✕✕✕✕✕✕✕✕?」
老婆は困惑した顔つきになるが、俺が何度も問いかけるとようやく言葉が違う事を理解する。
「✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕!」
そういうとササッと荷物をまとめて老婆は出ていった。
「婆さん、どうだったんだい、あいつの調子は。」
「いや、それがね………。」
扉の脇で待っていると婆さんが出てきた。
「異国の人なのかねぇ、聞いたこともない言葉を喋りだして、全くわからんよ、これはどうすればいいんだろうね。」
「いやいや、異国の人間がなんでこんな場所に来る。」
「やかましい、私ができるのはやつを出来るだけ五体満足にして治すことだよ、そんな事は考えたくもないね、疲れてるんだ、帰らせてもらうよ。」
ほうらしょっと、そういって道具箱を持つとゆっくりとさっていった。
男………バルタイはそんな婆さんの背中を見ながら扉を開け、自分も中に入った。
あの老婆が去って少ししたら、こんどはあの白い狼の体当たりを受け止めた男が入ってきた。
服で隠れて見えないがかなり筋骨隆々に見える、相当鍛えてるみたいだ、まあ、あれは鍛えてる、でどうにかなりそうにないと思うのだが。
「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕。」
「えーと、私の、言葉は、分かりますか?」
そういうと、だめだと言わんばかりにため息をつく。
この人の言葉もやはり分からない、何故か英語の授業をしっかりやっていれば、そんな場違いで頭のおかしい思念が浮かぶがそれは振り払っておく。
さて………どうしようか、コミュニケーションは多かれ少なかれ絶対にとっておかねばならない事柄だ。
そうだな………まずは、自己紹介から?かな?
「えー………私は鈴木幸一です、ス・ズ・キ・コ・ウ・イ・チ、鈴木幸一。」
そうか細い声で言う。
相手は一瞬ポカンとした顔をしていたが、なんとか動かせない指を動かし自分を指差しながら名前を連呼する。
やがて彼も言いたいことが分かったようで、
「✕✕、✕✕✕✕✕✕✕『すずキコーいち』✕✕✕✕?」
と、会話の中に自分の名前らしき単語が混ざり始める。
俺は彼を指さして「あなたはだれ?」と問い続けると彼は何やら言い始める。
その中に『バルタイ』という単語が混じっているのがわかった。
「バルタイ、あなたはバルタイですか?」
「………✕✕✕✕!✕✕✕✕✕✕✕✕✕!!」
すると顔色が明らかに変わりバルタイ、バルタイと連呼する。
良かった、見た感じ彼はバルタイで合っているようだ。
いろいろ語形変化などありながらも、結局のところ言語など単語をいかに暗記できるかの
問題なのだ、少なくとも聞くぶんには、だが。
まぁ、あれだ、この後もこの手法でコミュニケーションをとろうしたが、一つ問題が発生した。
それは、「包帯グルグルでまともに身動きの取れない現状、この手法の要であるジェスチャーのバリエーションが指で何かを指すこと程度にならざる負えず、自己紹介以上の事ができない。」というものだった。
そのため結局コミュニケーションは俺が一通り完治する数ヶ月後を待たねばならなかった。
数日がたった。
当然ながら俺はベットから動かすことができないし、何もやる事がない。
ベ窓の外を見る。
いろんな人間が外を通るが、みんな明らかに日本文化のそれじゃない、服も言語も家の様式も。
何もかもだ。
「異世界、ねぇ………。」
信じたくはない、が、この前のドラゴンといい、そうなのだろうな、俺は異世界に来てしまった。
その事にワクワクを俺は抑えられなくなる。
そうだろう、剣と魔法の世界なんて、憧れない奴はいないだろ。
「こっから出れさえすれば、な。」
「ありがとうございます。」
「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕。」
そういって食事を運んでくれた人が去っていく。
うまく動かない手でなんとか食う、もう1ヶ月はたっただろうか?
「………水が飲みたいな。」
動けないけどな。
はぁ、とため息をつく。
不便なことは多いが、とくに言葉の通じないことから発していることが多い。
これだって、動けなくても言葉さえ通じれば持ってきてもらうことができるのだ。
言葉が通じないのは想定外だったな。
転生物じゃなくて転移物では基本スキルかあるいは説明なしか、とにかく言葉が使えることがほとんどだしな。
当たり前だ、そんなことしたら言葉の習得の描写を出さないといけなくなる。
そんなこと書いてたらいつまで経っても終わらない、その設定を入れるやつは馬鹿だ。
そろそろ治るかな、とふと思う。
1ヶ月辺りまでは体がジクジク痛くてたまらなかったが2ヶ月になるとそれも引いてきた。
あと、退屈にもなれ始めたな、ここのところゲームどころか体を動かす事も、訪れた人と話すことすら出来なかったからな。
気が狂うかと思ったが、なれるとここは静かだからいいもんだ。
「っと、もう夜か………眠くならないな、そうか、ずっと寝たきりじゃ当たり前だな。」
………当然ここには人はいない、独り言をブツブツ言う癖がつかなければいいが。
そして、3ヶ月目の朝………とはならない。
これはそうしてようやく寝ついたすぐの話だ。
最初に思ったのは思った以上に暑い、という事だった。
正確には、熱い、というべきか。
ここで一つ問題だ、この電気のない世界で代わりに明かりに使われているものはなんだ?
「………う………うおっ!!!?」
真っ赤。
もう、真っ赤も真っ赤なんだなそれが。
火柱は天井近くまで届き、すぐそこまで迫っている。
「誰かっ!!誰かいないのかっ!!」
俺はバカみたいに誰かいないのか、を言い続けるが誰もきてはくれない。
「クソっ、くっそっ!!」
俺はどうしようか、どうしようかと必死にない頭を回転させる。
この時点で起きてから3分。
すでに布団の何処かに燃え移っていてもおかしくないが、奇跡的に無事だ。
だが長くはない。
「誰かっー!!!!」
「✕✕✕✕✕!!」
そういって突然入ってきたのは薬師の老婆だった、鬼の形相だったが、目の前の火柱に腰を抜かしそうになる。
「✕✕✕、✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕✕!!」
そういって老婆は去っていく。
「頼れる人がいない、か。」
俺はそうつぶやく。
その思念は今に始まったことではない。
友人や、家族。
地球だったら、こんなことになっても絶対に助けてくれただろう。
たが、いない。
自分一人だ、頼れるのは。
「はぁ………。」
自分一人で異世界に転移した、その事実の重さをわからされた日だった。
3ヶ月目、思ったより早く傷も治り、包帯もベットから動けるくらいは取れるようになった、そして、バルタイがやってきたんだ。
これ書いてるあたりでなんとなくなろうの機能は理解できました。
まぁ、テストだろうが何だろうが一応ガチでやってるので捨てたりはしませんが、今のところ。
見てる人いるかな………?いるといいなぁ………。