冒険の経過
「これです、これで全部ですね?」
「あいよ、そうだよ、ところで、足らない物品があるんだよ、また言ってきてくれないか?」
「はい、わかりました。」
俺はこうしていろんな工房とよろず屋を行き来してもう5日が経った。
「さて、こいつもササッとおわすか。」
「よし、今日のところはこれでいいよ、あんたも他にやる事あるんじゃないか?」
「まぁ、そうですが、構わないですよ?」
「へっ、そんなことないくせに、ほら、これが代金だ。」
俺は今日もジャラジャラ硬貨を持ち歩く。
なんで100枚ごとの繰り上がりなんだ?おかげでこっちは硬貨なんて15枚くらい持っときゃいいやとはかけ離れた生活を送ってる。
「間に大鉄貨とか入れればいいのに………。」
そんなことを思いながら俺は冒険者ギルドに入っていく。
「何か依頼はないかなぁ………。」
俺は依頼ボードの前で頭をかきながら依頼を探す。
「お、この採取依頼、良さそうだな………。」
そういってペリッと剥がして受付へ持っていく。
ここで「お前文字読めるやんけ!」と思うかも知れないが、実はこの依頼の紙、ランクとかとはべつに採取、狩猟、護衛、雑用などの簡単な依頼内容がわかるハンコが押されているのだ。
まぁ、この世界じゃ文字が読めないことはそこまで珍しい事じゃないし、冒険者ギルドは異国の人が来ることもあるらしいからな。
そのことに気づいてからはそれである程度の目星をつけてから受付に並ぶようにしていた。
「これは………薬草の採取ですね、このような形の薬草を採取する依頼です、近くの森や平原に分布していたと思いますよ。」
「ありがとうございます、じゃあ、受けます。」
俺はそうしてその依頼を受けると、懲りずにまた外へ向かう。
「さーて、どこかな…………。」
俺は平原を歩く。
森の中に入るのも考えたが、また木の葉や泥で服を汚すのもあれなので、平原で済ますことにしたのだ。
「そういえば、平原にも魔物っているのだろうか。」
そう首をかしげる。
自分はカルドキアにたどり着くまで魔物に出会った事はない。
果たして平原には何がいるのだろうか………。
「おっ、見っけ。」
俺はあるき続けてついに薬草を一つ見つけることに成功する。
こういった薬草はポーションの素材や軟膏、それ以外にも様々なことに使われるそうだ。
「これじゃ足りなすぎるなぁ………まだまだ探さないとだめか。」
そう言いながらおれはあるき続ける。
そんな時だった。
「………?なんだ?」
そこから先は、腰ほどの背丈のある草が群生していた。
「………あ、これは………。」
おれはふと見るとお目当ての薬草が生えているのがわかった。
「………ていうか、ここはかなりいっぱいあるな。」
ここを漁れば早く目的の量を取ることができるかも知れない。
「どれどれ…………。」
おれは草を掻き分けて、入り込むっ!!?
「あっ………!?」
おれは足をもつれさせて転ぶ、頭から行くようなバカは流石にしないが、いろいろかすり傷ができてしまう。
「なんだこれ………紐?」
おれは足に絡まる紐に気づく。
ちょうどいい高さにくるよう柵のようにはられており、それにつまずいたようだった。
「まさか、原始的とはいえ、罠?」
見られてなくて良かった、そう心底思う、こんなのに引っ掛かったと知られたら一生笑いの種にされてしまう。
「それより、誰だこんなものを設置したのは………。」
おれは周囲をわけもなく見渡す。
こんな罠、仮にも戦いのプロの冒険者が設置するはずもない………俺みたいなのはともかくなっ!!
3個、
3個だ。
おれはこの比較的高い草が生い茂る場所で、さっきのを抜いても3個の罠を見つけた。
流石にあんな原始的なものではなく、もっとマシなやつだったが、この草に隠れて見えにくい。
「誰が設置したんだ………。」
おれはそう呟いてから程なくして、その正体を知る。
最初はなにかがガサガサすごい動いていて、明らかに何かしらの生き物がいるのがわかったところだ、近づくと、それはチラチラ草の隙間から見えて、人型に見える。
子供サイズで、肌は緑、そしてその頭は後頭部が出っ張って、鼻は魔女のようにとんがっている。
「ゴブリン………っ!?」
その時一体がこちらを見た。
バレた。
おれは剣を抜く。
ゴブリンはFランクだ、硬い毛皮も鱗もないし、攻撃が通ればどうとでもなる。
「こっちから行ってやる!!」
おれは走って奴らに突撃し、一体切り伏せる。
生き物を殺すことにもだいぶ慣れてしまった、人型の魔物なのに殺すことのの抵抗がまるでしない。
ゴブリンはどんどん集まってくる。
多い、いや多すぎる。
15体ほどのゴブリンが駆け寄ってくる。
「まずったか………!?」
おれは失敗を感じた。
ゴブリンの繁殖力高い設定はラノベの常識だが、いきなりこの人数で襲ってくるというのは考えてなかった。
「ハッ!!」
おれは2匹目、3匹目とやっていく、だがこんななんの手入れもされていない草むらで戦うのは骨が折れる。
あちらは体が小さいからだいぶマシだろう、白狼をやったときの手口をやり返されたというところだ。
「フンッ!!」
とは言うものの、連中は精々棍棒程度しか持っておらず、素手でかかってくるものもいる。
圧倒的なリーチの差、武器の差がそのまま戦闘の結果に直結した。
8匹、そこまで行ったとき俺は突然倒れる。
罠っ!!?
それは落とし穴だった、非常にうまく隠されており気が付かなった。
俺はこうしてずっこけるわけだが、そこをゴブリンは見逃さない。
あっというまにボコボコにされる。
殴られ、踏みつけられ、それでもなんとか立ち上がる………。
そこからはミスはなかった。
俺は全員をやり、討伐部位の耳を切り取る。
「………そういえば、こいつらにも魔石ってあるんだっけ。」
俺は普段使ってるナイフで、試しに心臓をグリグリえぐってみる。
すると、血でビチョビチョになる中、ついにお目当ての魔石に辿り着く………。
「ちっさっ!!」
それは小指ほどもない、それこそ砂利の粒並みの魔石だった。
「これは………使えなさそうだな。」
それに、服も血で汚れそうだ、今回は大丈夫だったが………。
「なるほど、そのあたりではゴブリンの出没が多くなっていたんですよ、そこらへんで陣取ってたのでしょうか?」
「わからない、テント見てない、薪のあとも、ひとまず換金してください。」
「はい、そうします。」
俺は、冒険者ギルドに帰ると、依頼品と討伐部位の提出をした。
「帰ろう、今日はつかれた。」
ゲームじゃないんだから、朝から晩までレベリングとも行かない、むしろこうやって狩りに従事できる時間など一日のうち、4分の1程度だ。
俺は宿には戻らない、最初の3日だけ使い、あとは別のところで寝ている。
俺が止まったのはカルドキアの建物の中の一つ、どこか寂れた建物、その前で止まる。
俺は中にそそくさと入った………。