新天地
森、森、とにかく森だ。
「まだ抜けないのか………。」
そんな言葉をもう何回も呟いた。
「だけど………まあ、あるき倒すしかないか。」
村を出て1日たった。
テントを一つ頂いたので、それを設営し、保存食をかじってねた。
野営初心者に火起こしやら料理やらは求めないでいただきたい。
しかし………なんだか最近体の調子がいい。
これほど歩いても筋肉痛一つ起こらないし、白狼を倒したときも、あっといぅに喰らわれてもおかしくなかったのに、善戦することができた。
訓練の成果………でもないか、あの程度のトレーニングをたかだか半年続けたくらいでグリズリーほどの狼と互角に戦えるわけがない。
思えばこの世界の人間の身体能力はおかしい。
最もまともに見たのはバルタイだけだが、あんな巨大な狼の突進をかろうじてとはいえ受け止めるのは普通じゃない、乗用車に突っ込まれるようなもんだぞ?
「もしかしたら、魔法的ななんかで、身体能力が上がっているのかもしれない。」
まあ、それくらいじゃないと遭難時に見てたドラゴンとやり合うことなんて出来やしないんだがな。
爽やかな風が顔を撫でる。
「平原………!」
そこはだだっ広い平原だった。
そして、目的の地。
カルドキア、その巨大な城壁が見える。
「ついにここまで………!!」
俺はもう少しと再び歩き、遂にあの15mはある城壁に、ぽっかり空いた入り口にたどり着く。
そこは商人の馬車やその持ち主であふれ、俺は列に並ぶのを余儀なくされる。
「おっ、お前さんは商人じゃないね、冒険者かい?」
「いえ、なりに来た、自分はあっちの村の方からきた。」
「あっち………ああ、クレ村か!遠いところから来たな………しかしあんた奇妙な言葉使いだな、文字が読めないっつうのはわかるが。」
「ああ、自分いろいろあって………ね?」
「………まあいい、ほら、身分証か、あるいは銅貨三枚だ。」
そう言われたが、身分証はなし、なので銅貨3枚の方を出す。
「あいよ、そして、ようこそカルドキアへ!」
冒険者ギルドは、カルドキアの大通りを少し行ったところにある。
冒険者ギルドはその業務の単純さから登録一つで加入できる事になっている。
そして今日にでも依頼を受けて仕事をこなす事ができるのだ。
それ故、奇妙な人物が訪れることも多い。
中には犯罪者も働くためにやってくる事もあり、ベテラン受付嬢の中にはある程度見ただけで犯罪歴のある無しがわかるものもいる。
今日も、一人の男が訪れた。
一見するとただの初々しい冒険者志願者にも見えるが、ベテラン受付嬢のサーラは何か違和感を覚える。
その男は今まで見てきたどのタイプの男とも違かったからだ。
「登録、お願いします。」
そう何処かぎこちない喋りで、カウンターに歩いてくる。
「はい、登録でございますね、ではこちらの用紙に必要事項の記入をお願いします。」
そういって出されたのは一枚の紙、当然日本語ではなくこちらの言葉だ。
あ〜あ、自分文字を習う暇も、わかる人もいなかったんだよな………。
「あの………文字、わかりません。」
「そうでしたか、なら私が代筆いたします、まず、名前を………。」
「これで終わりました、では、最後に血液の提出をお願いします。」
「はっ………?」
「これから魔法で登録させていただきます、その際あなたの血液が必要不可欠なのです。」
「なるほど………。」
俺は差し出された針に指を刺して、血をだす。
それは鉄の板に落ち、まるで取り込まれるかのように消えていく。
その後しばらく受付嬢が奥に消え、やがて自分の名前やその他いろいろを書いた鉄の板を差し出す。
「これが冒険者の証明である冒険者証となります、どうぞお納めください。」
「ありがとうございます。」
「これがあれば手数料なしの素材、討伐部位の引き取り、冒険者としての証明、その他様々なサービスをご利用になれます、冒険者業は今日にでも始められます、説明は以上です、ただ魔物の部位素材を納品をする事もできますが、個別の依頼を受けることができます、依頼ボードはあちらとなり、引き受けるにはこことは別のカウンターで受注する事となります、これで基本的な説明は以上です。」
「はっ、わかりました。」
俺は外に出る………その前に依頼ボードを見てみる。
と、ここでも問題に気づく。
「読めねえ………。」