新 謎の四人組 4
「………コーイチですか、なるほど、なるほど………まさかこんなところで異世界人に出会うとは思っても見ませんでしたよ。」
帰り際にそうつぶやく男がいた。
(………大予言にある厄災、その内容は未だ不明、しかしこのところ異世界人と思われる人物や異世界人の有力な痕跡の報告が急速に増加している、帝国の諜報部も大変そうで、その上今度は直接会うことになるとは、全く全く、どんな偶然ですかねぇ………まぁ、いいでしょう、異世界人は必ずしも敵にはなりえない、この人間の活動記録にも不審な点は見当たらない、今のところは、自由に泳がせていても構わないでしょうね………。)
「………コーイチ、そういえば………いや、なんでもない。」
多分、リューゼさんも内心気になっているんだろうなぁ、俺とあいつらとではどことなく顔つきが似ているからなぁ。
だが、まぁいい、それについてはおいおい話すとして、当分やることは………明日の授業の概要をそれとなく考えて、片端から詰め込んでおくことだ。
あぁ、忙しい忙しい、単純な戦闘技能ならいくらでも自分の経験から教えてやれるけど、こういう形式的なあれはまったくとんちんかんだからなぁ。
「………………あれ、他の生徒じゃね?」
「うん、めっちゃこっち見てるよね。」
俺達は窓の外を見ると、その金髪の男の子はさっと姿を消す。
「………はぁ、生徒か。」
「僕達この世界に来てからあの男の人以外の人と話したことないなぁ………。」
「馬鹿だなぁ、普通にリューゼさんやコーイチさんがいるじゃないか。」
「そうだったけど、それだけじゃないか。」
僕は外の練習場をみやる。
「………リューゼくん、君のクラスは一体どうなっているのかね?」
そう教師達になんども聞かれたが、全て答えられないとだけ返しておいた、それは本当だ、結局校長は他の教師に事情を話したりはしなかった、魔法院が極力情報の流出を避けろとお達しを下したからだ。
今のところ数奇な目で見られているだけで特に問題はないが………。
「………しかし、他のクラスと合同で迷宮探索とかもあるんだがなぁ、やっぱり彼らだけで別に行くことになるだろうか………?」
「………えぇい!!!」
「はぁっ!!」
空中を壁などの障害物を蹴りながら移動して、空中で鉢合わせするたびに拳を交える2人。
「………なんであの歳になって殴り合いを始めるかなぁ………。」
「………男の子って、そういうものじゃないの。」
「そんなことないと思うけど、あいつらがおかしいだけだよ………。」
しかし。
僕は彼らの超人じみた動きを見る、身体強化は当然使っているだろうが、あんな動きはまだ僕にはできない、時間をかければ行けそうな気配はするが。
「………メがファイヤ!!」
恵美が魔導書を片手にそういうと巨大な火球が飛んでいく。
そうそう、恵美も忘れてはいけない、彼女は魔力量もあるし、魔導書も読める、魔導書を見ながらであればすべての魔法が使えるだろう。
もっとも魔導書を読みながらの魔法は大変構築までの時間が長いし、コーイチさんやリューゼさんは魔導書を丸暗記した上でそれを一瞬で構築できるらしい。
「………僕もやってるけど、呪文文字が読めればなぁ………。」
幸い、魔法に関しては和也や浩二より一歩リードしている、それはそれで恵美がいるのだが、それを言えばこっちには剣術と身体強化がある。
「………迷宮探索ですか。」
「あぁ、1か月の訓練ののちこの近辺にある迷宮に入らせ、実践を経験させる。」
「………早すぎませんか?」
俺はリューゼさんにそういう、いくらなんでも1か月で迷宮探索なんて………。
「あぁ、普通の学園だったらしないだろう………だがここは本来選ばれたエリートしか入れない世界一の魔法学園だ。」
「それもそうでしたね………。」
そうだそうだ、なにせリューゼさんやギセルさんが卒業した学校だもんなぁ。
「………問題といえば、彼らに魔物を殺したりするようなことができるのかということだな。」
「しかし、少なくとも戦闘をする職業につくなら必ずぶち当たる壁ですよね。」
「あぁ。」
初めての人間が生き物を殺す………羽虫くらいならともかくとして小動物を殺したりするのは精神的にとてもくるものがある。
彼らに果たしてこの試練を乗り越えることができるだろうか?
現地入りしてから一時間たった。
俺はいま、部下の手配した馬車の中に隠れている、この馬車にありとあらゆる殺しの道具を載せたまま。
「………善良な門番には到底見せられないなぁ、そうだろう。」
「はい、こんなものを見せてはこしをぬかしてしまうでしょうな。」
無数の強力な魔道具、毒、呪いをかける様々なアイテムなどもある。
ただ殺すだけなら他愛もないことだが、一切の痕跡を残さないとなればその難易度は格段に跳ね上がる。
「………コーイチか、ボスも一体全体なんで1冒険者に固執するのやら………。」