エピローグ
「…………ぐあっ………。」
やつは土をかぶった状態で立ち上がる、ちょっと威力が弱かったか。
「きさまぁぁぁぁ!!!!」
やつがナイフを構え、神速の速さで突進してくる、あまりの速さに目で追えない。
「………!!!!」
瞬間、体の中で魔力が爆発して、超高速で動いていたはずのやつの顔を掴み投げ倒した。
………なにが、起こった?
そうか、私はあの一瞬で頭を鷲掴みにされ、そのまま引き倒されたのか。
「………なんで、俺を殺さなかった。」
そう私は、疑問を呈さずにはいられない、戦っているときからずっと思っていた、こいつのせいで死んだ部下は、ついに一人も出なかった、こいつは、百人もの盗賊を斬り殺した人喰らいではなかったのか。
「………後悔しないためだ。」
「何を言っている………。」
「俺は、あのとき無感情のまま、放心状態で、ただ言われるままに戦っていた、正気に戻ったとき、俺の心にあったのは、後悔だった、誰であれ、人を殺すという行為はおぞましい行為だ。」
「………ほう、中々、いいことを言うじゃないか………なるほど、俺を殺さないのも、そのためかい………?」
「………そうだ、俺は理由があればもちろんそれをやることも構わない、だが、そうでなければどんな理由であれ、する気はない。」
「……………フッ、フハハハ………。」
なんて言うことだ、何という男だ。
俺は苦笑するしかない、そして、こう思うのだ、俺も将来、もしかしたら人を殺すことの罪の重さに気づき、そして過去の自分に苦悩するのかも知れない、と。
「………ひとまず、襲撃騒ぎは方がついたか………サンティシナ、無事、だよな………?」
俺は家に入ってそう聞くと、サンティシナはなにやら考え事にふけっている様子だった。
「………喜べよ、これからは外を自由に歩けるんだぞ、おい。」
「いや、そんなことはどうでもいいのよ。」
「どうでもいいの!?」
馬鹿な、こいつ家にすし詰めになっていることにストレスを感じていたんじゃないのか?
「いやね、こんなのが来ちゃったんだけど、いまの状態じゃ、神聖帝国なんて行けないから、どうしようかなぁって………。」
「………え、神聖帝国?」
「そうよ、神聖帝国、私これから本部に転勤になっちゃったのよ………。」