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新 傷ついた男 7

「………あれから一月かぁ。」


俺は魔導書を読みながらそうつぶやく。


俺はその間何をしていたかというと、特に何もしていない、ただ訓練をひたすら続けながら暮らしていたそれだけだ、今までと何も変わらない。


変わったことがあるとすればまぁ、サンティシナが常に俺のそばでじっと何をしているのか見ていることだろう、まるで昔のように。


「………へぇ、呪文文字ってすごい、この仕組みとか面白くない?」

「なんでお前しえっと理解できてるんだよ………。」


俺はサンティシナに呆れ返る、こいつときたら、思えばいつも頭の回るやつだったなぁ。


「………じゃあ、これとかわかるのか。」

「うん、これはメガファイヤの魔導書でしょ?」

「どうしてわかった?」

「だって………タイトルに書いてあるじゃない。」

「見るんじゃねえよ馬鹿野郎!!!」


俺達二人はそんなことがあるたびに馬鹿みたいに笑っているのだ馬鹿らしい。


「………これは風魔法?」

「あぁ、そうだ、いまは風魔法の練習を続けている。」

「でも、風魔法って弱かったんじゃなかったっけ?」

「弱いのがいいんだろ?」

「???」




「………あっ、そうだ、久しぶりにあのお店言ってみない、今度は私がサンドイッチ食べたくなっちゃった。」

「いいよ、じゃあ午後になったら行くか。」


俺達はこうしてふと気を休めるために、あのお店に向かうことになった、店内は相変わらず騒がしく、なんだかごちゃごちゃしているが不快感はなく、落ち着きすら感じる。


「ご注文は何でしょうか?」

「グラタンとサンドイッチを。」

「へぇ〜、今日はグラタン頼むんだ〜?」


「はい、お待たせいたしました、グラタンとサンドイッチです、今日はとっておきの仕上げもしてますよ。」

「ありがとうございます。」


「やっぱりいつ見ても美味しそう………うわぁ…………。」

「グラタンかぁ………このでかいの全部グラタンか、こういうのを腹一杯になるまで食べられるのがこの店のいいところだよなぁ…。」


俺はスプーンでグラタンを一口すくう………。


「………?………!?サンティシナストップ!」

「へ?」


サンティシナは間一髪で口に運んでいたサンドイッチを止める。


「なによ………?」

「いいか、よく見てろよ………。」


俺はグラタンを指ですくって肌につける、すると、一分も立たないうちに肌が真っ赤に膨れ上がったではないか。


「なに!?なによそれ!!」

「………毒だ………毒がもられている。」


『今日はとっておきの仕上げもしてますよ。』


「!!!あいつかぁ………!!」


俺は店員に俺たちのテーブルに料理を運んだ男を知らないか聞く、だが、なんと料理を運んだ覚えなどそもそもないというのだ。


「………おい、店員って言ったよな。」

「ああ、そうだ………。」

「もしかして、入り口から出ていったあいつじゃないか、なんで店員が客用の出口から出ていくのか不思議で仕方なかったんだ。」

「それだぁ!!!」


俺は荷物を持って飛び出すが、もう大通りにその男の姿は見えなかった。




「………フフフ、面白い、全く持って面白いじゃないか、そうだろう!」


そう私が部下に呼びかけると、みなが笑いながら同意する、奴め、直感で毒の存在を見抜いたぞ、久しぶりに歯ごたえのある敵が出てきたじゃないか。


「毒が効かないとなると、直接暗殺に出向くしかありませんかね。」

「そこらの雑魚ならあれを盛るだけでいっちょ上がりだったんだが、どうにもどうにも、あの人喰らいには効かないようだ。」


ヒューマンイーター、それがヤツの通り名だった、冒険者は本来対魔物専門の戦闘集団だし、人を簡単に殺せる人間は少ない。


だが、そんな中、やつは盗賊退治を専門に100人もの人間をなますに切り刻んできた、それほど殺しをしてきた人間は我々の生きる裏社会でも一握りほどしか存在しないだろう。


「さて………あの様子じゃ一筋縄では行かないだろう、少々小細工をさせてもらうか。」




「………なに?何があったのアレ、私なんにもわからないんだけど。」

「暗殺者だ、俺の周りを付け狙ってる。」

「はぁ?あんた何したのよ。」

「知らないが………俺は多くの盗賊をいままで始末してきた、だからそれが関係しているのかもしれない。」


俺はあるきながらそう答える。


「………なんとか家についたな、サンティシナ、お前とりあえずもうこの家から出るんじゃない。」

「危険だから?」

「そうだ、といっても俺はこれから食料を買い込みに出かけるから………あったあった。」


俺は例のあの装置を取り出す。


「前に盗賊のアジトで手に入れた結界魔法、探知魔法を展開する装置だ。」

「………アレ、魔法って魂のあるものじゃないと使えないんじゃなかったっけ。」

「そりゃそうだ、だがこれは機械じゃない、これでも生物の一種だ。」

「………へ?」


俺は装置のある場所をパカッと開けて中を見せる、ゆらゆらと蠢きながら青く光る謎の物体が見えることだろう。


「人造生物だ、魂だけの存在で意識もない、こいつをつかって魔法を発動させる。」

「えぇ…………そんなことできるの?」

「魂だけならな、これが肉体までまるっと作るとなるととんでもない労力がいるぞ、人造人間とかを作成した人間は神話の世界にすら存在してないな。」


俺は魔力操作で、その生物に魔力を注ぎ始める、満タンまで充填すれば、3日はもつ。


「そんな便利な代物があるなら最初から使えばいいのに。」

「そんなわけにも行かない、これは俺くらいの魔力量がないと一人で満タンにするのは不可能だ、というか、おれだって一日かかってできるかどうかだしな………ふう、いまはこれで終わり、あとはは魔力が回復してからでいいや。」


そう言って俺は立ち上がる。




「………今日で一週間か。」


不気味だった、奴らの襲撃は、いつまで待ってもやってこない、だが………あいつらをどうにか捕まえるまで警戒を解くわけにも行かない。


「………あぁ、この果物を一個ください。」

「あいよ。」


老人はにこやかな笑みを向けながら俺に果物をいくつか渡してくれる、その代金を払うと俺は速やかに市場から立ち去る。


「………!!!………毒だな。」


俺はその果物の中から一つ取り出すと、ぽいっと露頭に捨てて切り返す、あの老人は、通りに広げた店をすてて、どこかに立ち去っている。


「………くそ。」




「………はい、我々騎士団も全力を尽くして捜査しております、ですが、あなた方を襲撃する人間は見つけられません………。」

「………そうですか。」


俺は心から残念だった、まったく、騎士団でもしっぽはつかめないか。


家に戻るとサンティシナが中でご飯を作って待っていてくれた。


「帰ってきたの?」

「あぁ、果物を買ってきた、甘いものが食べたくなってな………。」


俺はそういって果物を置く。


「………あ〜あ、外の様子どうだった?」

「………あぁ、何もなかったよ。」


俺はそういってごまかす、いま毒を盛られたことを言うと余計な心配をかけることになってしまう。


「………そう、じゃあいただきま〜す!!」

「いただきます………。」








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