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邪神の天使の冒険譚  作者: 椎亜
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現状確認

夢を見ていた。

それが、現実に起こり得ることなのかは分からないけど、その時の感覚は今までに感じたことがないほど鮮明であった。


僕の目の前では一人の少女が虚ろの瞳を浮かべ、呆然と虚空を見上げていた。その手には母親らしき女性を抱えている。鮮血に濡れた少女の腕は震えており、それが誰かに対する怒りなのか恐怖なのかは分からなかった。

暫くの時間が経ち、少女が突然立ち上がった。その足は幽鬼の様にフラついている。彼女の瞳と合わさってそれはすごく不気味に映る。

少女は近くに転がっていた長剣を手首の返しだけで拾い上げると、その虚ろな瞳を此方に向けると―――。




▲▽▲▽▲▽▲▽




何処かふわふわとした今までとは異なる感触に朦朧としていた意識がスッと浮上する。

眉を顰めて、まだ寝させろと言うほどに開く気配の無い視界を無理矢理開けてみるとそこには――――女性がいた。


(はっ?)


今生最大のありえない状況に、思わずそんな声が出た。

僕はさっきまで大学から家に帰っていた筈だ。それがどうしたら女性に、それも凄く美人な女性に抱き抱えられているんだ?


(‥‥いやいやいや、本当にどういう事だよ‥‥。)


色々意味不明なこの状況に思わず頭を抱えたくなる。

取り敢えず、この状況は不味いと異様に重たい体を起こそうとする。の、だったが。

―――金縛りに縛られた様に体が全く動かない。

その事実に思わず冷や汗をかくと同時にこの状況を理解しようと頭を回転させる。

僕はさっきまで何をしていた?何でここにいる?どうやってここに来た?なぜ僕は抱き抱えられているんだ‥‥?

そう思考を脳の隅々まで巡らせ―――


――――そもそも自分の事が誰なのかさえ思い出せなかった。




▲▽▲▽▲▽▲▽




――ふむ。

なんだか突然出鼻を挫かれたような気持ちになったものの、基本的に名前や現状その他にも重要と思われる色々な記憶がすっ飛んでいるみたいだが、それ以外の事は概ね覚えているようだ。


日本に住む大学生。名前は記憶が吹っ飛んでいる為不明。年は今年で二十。趣味などは特になく、それでも強いてあげるとすると

創作全般だろう。最近はDIYと言うものにも手を付け始めてみた。

彼女や友達、家族等はいたと思うんだが生憎それも記憶が吹っ飛んでいる為確信は出来ない。


今日は大学の講座が午前中しかなかったから家に帰って作成途中の作品を完成させようと気分高らかに家に帰っていたはずなのである。それが気づくとこれである。全く意味が分からない。

この状況の可能性としたらそれこそ『夢見てる』とか『拉致られた』とか色々思いつくんだけど、まあそれはないだろう。そもそも夢だったんなら仮想空間なんて流行っていないし、拉致られたにしても、拉致られる意味が分からない。誰かに恨み買ってるとかならわからなくもないけど、こんな底辺の底辺を生きている僕に興味を持つ人のほうが少ないだろう。そういう理由から上の二つはなし。

後は何があるだろうか。そう考えていた僕の頭にふと一つの単語が浮かび上がってきた。それは馬鹿馬鹿しいにも程があると普段の僕には失笑付きで言われる可能性。


―――異世界転生、または異世界転移と呼ばれるもの。

そんな阿呆らしい状況を想像して、いやいやいや流石にない。と否定する。そもそも最近の流行りは『トラックにはねられて異世界転生』とか他にも色々ひねっているものはあるけど、それでも一度は絶対に"死んでいる"のである。

それに比べて僕はあれだ。もし今の状況に名前をつけるとしてもこうだ。『気付いたら異世界転生』。

馬鹿馬鹿しさここに極まれりな題名。思わず失笑を浮かべ、そう言えば異世界に来れば『お約束』みたいな言葉があったなと思い出す。


―――ステータス。

自分の能力値などが数値なんかで現れる的なその言葉。

それを半笑い気味に思い浮かべ、馬鹿馬鹿しいと嘲笑する。

が。――次の瞬間にはその口元は引き攣り、余りの驚きに目が自然と見開き硬直した。

僕の目の前にはステータスっぽいものが浮かび上がっていた。

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