25.本選に向けて
ゆうゆうと闘技場を後にする。
出口で出迎えるのは。
「ケンシーン! 無事でよかったの」
ぼふり。勢いよく抱き付くゴミィ。
「憲伸さん。おめでとうございます。えーと……」
抱き付くゴミィを見てか、ためらいがちに俺の手に触れる撫子。
おのれ撫子め……
この触れるか触れないかという、絶妙のボディタッチ。
本選で当たる時は、手を抜けと。そういうサイン。
またまた、あざとい色仕掛けで攻めやがる。
「うーん……にゃんともいいがたいにゃん」
ココロちゃん。
もっと祝福しても良いのだぞ?
「ガトリングガン……ココロちゃんも噂でしか知らない武器にゃん。ちょっとその武器は反則にゃん?」
ココロちゃんの言うことも、もっともである。
これは正々堂々の試合で使う武器にあらず。
連射可能な大量殺人武器。
人の技術は、このような武器を作るにまでいたったのだ。
いかに人をたくさん殺せるか?
そのための。戦争のための武器。
取り扱いには注意が必要である。
「にゃんにゃん! 試合で使ったらダメにゃん!」
ノーコメントでお願いします。
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予選開催から1週間。
いよいよ本日から最強武闘大会。
本選の開催である。
本選は16名による勝ち抜きトーナメント。
「私と憲伸さん……2回戦で当たりますね」
俺が負けることはありえない上、撫子も強い。
間違いなく当たるだろう。
「ケンシンもナデコも。1回戦の相手。英下衆国の選手なの」
本選出場16名のうち、英下衆選手は8名。
いずれも1回戦は、他国の招待選手と当たるよう組まれていた。
銃のパフォーマンスのため。
1回戦は、他国選手をズタボロにしてやろうという魂胆。
あとは英下衆同士で適当にちちくりあい、英下衆選手が優勝する。
そういう筋書きだろうが……
銃など刀の前に恐るるに足らず。
その事実を、俺が証明してみせるとしよう。
そのためにも、まずは1回戦。
俺の相手は、ウツゼ・スナイパという選手。
「ココロちゃん。このスナイパという選手。どのような相手か?」
「にゃん! ココロちゃんも英下衆選手にゃん。教えられるわけないにゃん!」
ケチくさい奴……俺とココロちゃんの仲だというのに。
「敵と味方にゃん。それ以上なんもないにゃん」
敵と味方だからこそ。だ。
正々堂々の真剣勝負をした仲。
すでに俺とココロちゃんは、ライバルであり。
ココロちゃんの力に、敬意はあれど軽蔑はない。
「にゃあ……そういわれると、むずがゆいにゃん」
むずがっている場合ではない。
いいから早く情報を教えろと。
「うー……闘技場へ入る瞬間。注意するにゃん」
それだけ言うと、ココロちゃんは飛び跳ねて行ってしまった。




