22.予選受付
俺とゴミィが退学となって2ヵ月。
いよいよ、今日。
待ちに待った英下衆最強武闘大会が開催される。
「ケンシン。準備はだいじょうぶ?」
ギプスを外した右肩を回す。
2ヵ月前に折り砕かれた肩甲骨。
戦うに支障はない。
「問題ない」
右腰に太刀を。左腰に小太刀をはいた後。
最後に小太刀の脇。
左腰のホルスターに拳銃を吊り下げ準備は万全。
「行くぞ! 超・天才剣士・改。出陣する」
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最強武闘大会。
会場となるのは、英下衆市の中心に位置する英下衆闘技場。
「わー。すごく賑わってるの」
周辺には、すでに大勢の人が集まっていた。
いずれも、ガタイのある連中ばかり。
「浮かれるな。ここにいるのは、全員が大会参加者だ」
本日、開催されるのは予選のみ。
最強武闘大会。
本選は16名によるトーナメントで行われる。
うち。すでに15名は決まっている。
いずれも英下衆をはじめ、世界各国から推薦された強者ばかり。
残る1枠。
一般参加の枠をかけた予選が、今日、これより開催される。
「でも……ものすごく多いの」
確かに。
ざっと見渡すだけでも、500人はいるだろう。
優勝賞金の100万ドル。
一攫千金を狙い、腕自慢が集合したというわけだ。
「……だいじょうぶ?」
予選参加が100人だろうが1000人だろうが。
こちらは超・天才剣士・改である。
おそれる必要は何もない。
「憲伸さん! 応援に来ました」
その声は撫子か。暇な奴。
「にゃん。せいぜいがんばるにゃん」
ココロちゃん。可愛い。応援ありがとう。
俺は大股に受付前まで進み、受付嬢へ登録の意志を伝える。
「超・天才剣士・改。大会参加を希望する」
「はい。お名前。性別。年齢。出身地のご記入をお願いします」
差し出された用紙にサラサラっと記入する。
「はい。超・天才剣士・改さん。男。20歳。日本。それでは、この番号札をお持ちになり、控室でお待ちください」
受け取る番号札は、964番。
「ええ?! こんなに大勢が参加するのですか?」
……1000人だろうが。とはいったものの。
現実を考えると、これでは残弾が不足する。
予選は拳銃の使用を控えめにいくしかあるまい。
「行ってくる。ゴミィは適当に遊んでいてくれ」
「うん。でも遊ばないの。応援する。ケンシン。ガンバレー」
「憲伸さん。無茶しないでください。危ないなら降参ですよ」
「敵前逃亡は恥にゃん。死ぬまで戦うにゃん」
3人の声援に背を向け、闘技場内。
その控室へと進み入る。
室内に居るのは、ざっと50人ほど。
さすがに1000人もの予選参加者。
全員が入れる部屋はないため、複数個所に別れているのだろう。
「おお? にいちゃん。もしかして日本人?」
立ち入る俺に、馴れ馴れしく話しかける1人の男。
黒髪に平たい顔した、30代だろう地味な男。
目立つのは、その得物。
1.5メートルはあろう野太刀を1本。背負っていた。
「俺っちも日本から来た、野田ってんや。お互い頑張ろうや」
同郷の剣士。
しかし、あのような長大な得物。
使いこなせるのだろうか。
「おお?! 俺っちの得物が気になる?」
俺の視線に気づいたか、野田という男が顔をほころばせる。
「こりゃー我が一族に代々伝わる野太刀。斬鉄刀っつーんや。鉄骨でもぶった切るぜい」
本気で言っているのだろうか?
薄い鉄片ならともかく、建物の柱などに使われる鉄骨を叩き斬るなど。
超・天才剣士・改でも無理な所業。
このような雑魚に出来ようはずはない。
とんでもない、ほら吹きである。
「まあ見てなって。英下衆騎士の盾やら鎧やら。全部ぶった斬るぜい?」
もしも、ほら吹きではなく本当に叩き斬れるのなら。
重装甲が売りである英下衆騎士にとって天敵となるだろう。
問題は……今回の大会。
英下衆の主力は、騎士ではない。ということだ。
「にいちゃんは……何や? 2刀流かいな? 珍しいやっちゃなー。で、小太刀の脇にあるのは何や?」
「銃だ。鉄の弾丸を発射する。銃使いと相対するなら、遠距離からの攻撃に注意することだ」
英下衆国が開発した新しい武器。
この男が知らないのも無理はない。
「銃? なんやよーわからんが、弓みたいなもんなら楽勝やろ。注意するんは騎士やからな」
今回の大会は銃を大々的にアピールするための場。
英下衆国の主力は、騎士ではなく銃使い。
斬鉄刀……残念だが、活躍の場はないだろう。
「予選参加者のみなさん。予選準備が整いました。闘技場までお集まりください




