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20.拳銃

2人。英下衆大学の校門を出る。

憲伸とゴミィ。


「ゴミィ。退学して良かったのか?」


「うん。良かったの」


満面の笑みを向けるゴミィ。


……良いはずがない。


ただ、俺を大学から引き離すための方便。

今の改型では……俺の力では貴族クラブに対抗は不可能。


それがゴミィの判断。

しゃくではあるが……正しい判断。


貴族クラブを相手に戦争と言ったは良いが……実際のところ不利は免れない。


超・天才剣士・改は強い。

しかし、右肩の損傷。

今の改型は、本来の半分しか性能を引き出せていない状況。


ただ俺を危険に巻き込まないため。

泣く泣く、ゴミィは大学を離れる決断を下したにすぎない。


「違うの。講師の人を見て思ったの。いくら頭が良くても。知識が豊富でも。それだけじゃ駄目なのって」


そうなのか?

頭さえよければ、それで人生安泰に思えるが。


「バターナムは貧しく技術も劣る国。でも、みんな優しい良い人ばかり。国を出るときも、たくさん見送りに来てくれたの。王様もわたしの留学費用のため朝食のおかずを減らしたって」


国王の朝食代を削らなければ、留学費用を出せないなど。

それは、逆に大丈夫なのかと心配になる。


「わたしが学ぶのは、目指すのは、その優しい人たちが平和に楽しく暮らせる国。だから──」


ゴミィは俺が腰に吊るした拳銃を見つめる。


「ケンシンの拳銃。後で見せてもらいたいの」


「ん? もちろん構わない」


「ありがとう。英下衆国の最新技術の結晶。拳銃の技術を持ち帰る。それが一番必要と思ったの」


……なるほど。

これからの時代は銃。

そう判断したとするなら、それは正解。


超・天才剣士ですら、対抗するに苦労する武器が銃。

この銃を量産。

兵士に持たせたなら、バターナム国はあっという間に強豪国の仲間入りである。



ゴミィの自宅。

戻ったゴミィは、さっそく拳銃を手に何やらガチャガチャやっていた。


「むー。今の作りだと銃弾を1発しか装填できないの」


撃った後の10秒間。

再装填までに生じる隙が銃の欠点。


ココロちゃんは複数の拳銃を隠し持つことで、連続射撃を可能にしていた。

あれは富豪である貴族だからできる芸当。


「何とかなりそうかも。なの」


このような貧弱な部屋で。ロクな設備もなく改造出来るとは思えないが……そこは天才。

バターナム国を代表する天才で、英下衆大学1の天才というゴミィ。

そう言うからには、何とかなるのだろう。


コンコン


部屋のドアがノックされる。

ゴミィは机の上に拳銃を乗せ、何やら作業中。

仕方がない。俺が出てやるとしよう。


「はい。どちら様だ?」


ガチャリ。

ドアを開けたのは、撫子とココロちゃん。


「にゃーん。おにいちゃん犯罪行為で退学だって聞いたにゃーん♪」


「もうっココロちゃん。憲伸さん。退学だなんて嘘ですよね? 冤罪ですよね?」


2人とも。

俺を心配して来てくれたのか?

ありがとう。


「にゃん? お祝いにゃん。これで貴族クラブから睨まれなくなるにゃん。あとは早く国へ帰るだけにゃ」


それもゴミィのおかげ。


ゴミィが通学する限り、ゴミィを守る俺も通学の必要がある。

誰が決めたとかではない。

それが、俺の。超・天才剣士・改の意地。

そして、俺が通学する限り、貴族クラブとの衝突は避けられない事態。


その俺の意地を守ったまま、俺の安全を確保するため、ゴミィは退学したのだ。


「残念ながら退学は本当だ。が、復学の可能性はある」


「本当ですか!」

「ないにゃん」


ゴミィは、もう大学で学ぶことはないという。


確かに軍事機密である銃について、大学で学ぶことはできないだろう。

だが、それ以外にも。

まだまだ学ぶべき知識は多く、可能であれば復学させてやりたい。


「この俺が、英下衆大学にとって必要な人材であると。大々的にアピールすれば、大学の方から泣いて復学を頼んでくるだろう」


「すごいです。さすが憲伸さん!」

「来ないにゃん」


俺の復学さえ決まれば後は簡単。

校長の頭を銃で脅して、ゴミィの復学を認めさせるだけである。


「すごいです。さすが憲伸さん!」

「駄目にゃん。そんな危険思想だから退学なるにゃん」


すでに道筋は見えた。


「2ヵ月後に開催される英下衆最強武闘大会。それに参加し優勝する」


「えっ……と……それは」

「仮に優勝しても復学は無理にゃん。まあ、優勝も無理だけどにゃん」


もともとが渡英した俺の目的は2つ。

1つ。奈美の仇を討つ。これはすでに達成済み。

2つ。奈美が成せなかった最強武闘大会優勝を達成する。


後2ヵ月あれば、俺の怪我も癒える。

その時が勝負の時。


「無理にゃん。肩甲骨はそんな簡単に治らないにゃん」


英下衆大学は現在。貴族クラブという暴力に支配されている。


そこへ最強武闘大会優勝の俺が復学。

暴力に弱い講師どもは、貴族クラブを捨て、あっさり俺に乗り換えるだろう。

何せ最強の優勝であるからして当然の判断。


「講師もヒドイ言われようにゃん」


まあ、俺が学園を支配したとしても、弱いものイジメは行わない。

せいぜいが貴族クラブの連中にパンを買いに行かせる。

そのくらいに留めておいてやるとしよう。


「おにいちゃん。復讐がセコすぎるにゃん」


今から大会当日が楽しみである。


「……憲伸さん。大会。どうしても参加するのですか?」


当然。

最強武闘大会を名乗るからには、俺が参加しないわけにはいかない。


「そうなると、私と戦うことになります」


当然。そうなるだろう。

2人ともに勝づづけるなら、必ずどこかで対戦する。


超・天才剣士・改は相手を過小評価しない。


先日。グラウンドで見た撫子の剣筋。

認めたくはないが……俺より一段上。

おそらくは奈美と互角の実力にある。


学長が奈美の代役として、撫子を選んだのも当然。

剣の腕前だけでいえば、確かに天才少女といえる。


もっとも剣筋が良いからといって強いとは、勝てるとは限らない。

経験においては、圧倒的に俺が上なのだ。負けるつもりはない。


「私も負けるつもりはありません。ですが、憲伸さんと戦いたくありません」


それも当然。

超・天才剣士・改を相手に戦いたいなど。

自ら自殺を志願するようなもの。


しかし……それは常人の発想であって、剣豪の発想でないもの。


剣豪。いわゆる戦闘マニアであれば。

奈美などはそうだが、強者との戦闘をこそ、楽しみに待ち望むものだ。


まあ、奈美はそれが災いしてココロちゃん相手に大怪我。

大会に参加できなくなったわけだが……


ともかく、強者との戦いを通じてこそ、新たな成長がある。

それを避けようとするのであれば、自身の成長を否定するも同然。


撫子。おそらくは……参加しない方が良いように思える。


竹刀を使っての試合なら良いが……

今回。開催される最強武闘大会は、実戦。

真剣を、武器を使っての命のやり取りだ。


実戦は権謀術数。騙し騙されの化かしあい。

相手を欺いてでも、何をしても勝利を目指す。

図太い、卑怯といってもよい精神が求められるもの。


撫子は剣士としては、常識人すぎるのだ。

まるで普通の女学生。

それが撫子の魅力でココロちゃんが懐いている理由なのだろうが……


何でもありの今大会。

もしも当たるならば……100パーセント俺が勝つだろう。


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