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誕生3

グレン

この戦が始まって3日目になるが、戦争ってなんか思っていたのと違った。昨日はずっと本部待機でやったことと言えばいつもと同じ訓練メニューだけだ。初日こそ戦場に出たが、剣を抜くほどの最前線ではない。初めてだからと言うことで場の空気になれるために送り込まれた。確かに最初こそドキドキしていたが午後には慣れてきてむしろ退屈だった。もっと血で血を洗う、熱気あふれる、命のやり取りをする場だと思っていた。まさかこんなに静かなんて……。

そして、3日目の今、俺たちはいったいどこを歩いてんだ!?2日目の夕方からトルニエ様に連れられて師匠とボルドフさんとどこともわからない地下道を歩いている。明らかに人工的に作られた道のようで、天井や壁はすべて石でできている。俺たちの進む道の横には水が流れている。お世辞にもきれいとはいえない水だ。本部を出てからもう半日近く歩いているが一向に終わりが見えない。


初日のゴルジオさんの負傷により2日目は劣勢を強いられる展開となり、本部で打開策を思案していたトルニエ様だったが、何かを思いついたようで俺たちだけを連れて動き始めた。スライルさんとバーナフ先生は後から来ることになっている。しかし、それにしても……。前線が劣勢だからてっきり最前線に出て俺のすごい必殺技の数々を披露するのかと思っていたのに、こんな誰もいない場所を歩かされるなんて!俺の使い方を間違えてんじゃないのか!?


……もしかして、俺たちだけ撤退している?まあ、作戦の中枢にあるのはトルニエ様だし、トルニエ様さえいればまだ学校のみんなもいるし、力を合わせればまた何とか……。


道中、途中で何度も休憩を挟みながら行軍を進めるがあまり話はない。まあ、この面子で話が弾むような話題もないか。だけど今日の師匠はいつもあまり話さないが、今日はとりわけ不機嫌そうに見える。

「まだ怒っているのか、バルヴァン?」

トルニエ様が師匠に言った。師匠は怒っていたのか……。きっと師匠もこんな薄暗いところを歩かされていることに納得言っていないのだろう。俺たちは戦場で派手に活躍するために特訓してきたんだ。師匠の気持ちよくわかります。

「……。」

師匠は何も言わない。相当ご立腹だ。

「でも仕方ないだろ。戦力としてはどうしても手練れがあと一人は最低でも必要なんだから。テンガロがいれば話は変わってきたかもしれないけどさ……。」

戦力?ダメだ、話がわからない。そもそもテンガロって誰?

「……。」

「なあ機嫌を直せって!」

「……もういいです。バルヴァンはバルヴァンのやることをするだけ……。」

そう言った師匠はいつもどおりの無表情だが、いつも以上に冷たい目をしていた。でも、話を聞いている感じだと師匠が怒っている原因はトルニエ様にありそうだ。トルニエ様に対して師匠が怒るなんて……、珍しいことがあったもんだ……。


しばらく進むと螺旋階段が見えてきた。それを見るとトルニエ様は感心したように言った。

「バルヴァン、本当だったな。そんで、この螺旋階段を上っていけば王宮の屋上に出れるんだったか?」

「ええ。」

……ん!?何の話だ?ここは王宮のどこかなのか?

「それが本当なら……、いやまあ、ここに階段があるってことはきっとその情報も信じていいのだろう。屋上には……、敵はいないだろう。いてもそんなにいないだろうから問題はない。よし、じゃあ、作戦を言うからみんな聞いてくれ。」

作戦?ちょっと自体が飲み込めない。

「そこの階段から屋上に上り、そこから階下に迫っていって王を狙う。基本的に武装していない敵は殺すな。深手は与えていいが死なないようにな。特に豪華な着物を着ているやつは偉いやつだから生き証人になってもらう。王は生け捕り厳守だ。」

ちょっと待って……。王を生け捕りって、王は王宮、つまり敵の陣営の最も奥にいるんじゃないのか?何でそんな簡単に!?ここって敵の本陣のど真ん中なのか!?

まあ、遠くからでも見えるくらいそれなりにでかい王宮だから隠し部屋や隠し通路があってもおかしくはない。おかしくはないけど……。何でそんなのがあるの知ってるの?まあ、トルニエ様はこの国に昔使えていたって言うし、そのとき知ったのかもな。王宮の構図が突然変わるわけないし。いやでも、こういうのって誰もが知っていていいものじゃないよな。忠実な臣下の振りしてていざというときに裏切るかもしれないし……。となると絶対に裏切らない人というと……。

いや、情報源はどうでもいい。これから一番大事な戦いが始まるってことだ!ちょっと心の整理が……。しかし、こんな道があるなら何で初日から使わなかったんだろう?トルニエ様はこんな道がある素振りなんて見せてなかったしな……。



「それにしてもスライルのやつ遅くないか?」

トルニエ様が不意につぶやく。そういえば……先に行っててくれって言われたから先に来たけど……、もしかして道に迷ったんじゃ!

「バーナフもついているから大丈夫。」

「まあ、そうだよな。バーナフがいないのはきついけど、スライルがいたらいたで人質とかにされても困るしな。よし、この4人で突入しよう!」

「そうですね。」

4人で突入!?さすがに今まで黙っていたが4人で突入って無謀すぎないか!?これは何も言わずにはいられない!

「大丈夫だよ、グレン」

そういって師匠がまた方に手を置く。

「師匠……。」

……じゃない!師匠が俺の言いたいことじゃない!

「ああ、わかってるって……。敵の本陣に4人で突っ込んで大丈夫なのか心配なんだろう?」

トルニエ様がちょっと困った表情でそう言った。

「そうですよ。不安ですよ!」

「大丈夫だ。王宮内には兵士はほとんどいないから……。」

「何でそういいきれるんですか?」

「この戦いは城門を守りきれるかの戦いだからさ。いや、少なくともソルナードはそう考えているはずだ。だから最前線にザンゾニスを配属している。本来懐刀としてここぞという場面でしか使わないザンゾニスを初日の最前線でな。あいつが戦の最前線を一番の要所と捉えている何よりの証拠だ。」

「でも、それとこれとは……」

「王宮内に兵を滞在させる意味はない。いたとしてもたいした戦力にならない負傷兵とかだけだ。あとは官僚とか給仕とかの非戦闘員のみだろう。そいつらは俺たちの敵ではない。実質空っぽだ。まあ、王の周りにはいるだろうが、多くても20人はいないだろう。わずらわしいからな。そもそもあの王が人に囲まれている状況をよしとしないはずだ。」

王の性格のことを言われても分かりませんが……。

「問題はその数十人の兵の質だが……、ザンゾニスがいなければバルヴァンでどうとでもなる。だからお前は思いっきり剣を振るったらいい。」

……そういうものなのかなー。不安だー。

「グレン、迷ったら今までの訓練を思い出せ。グレンならできるとバルヴァンは信じている」

師匠がそっと俺の肩に手を置いてそう言った。

「はい!」

結局この状況になったら一番下っ端の剣士はやれといわれたことをやるしかなく、それ以外の返事はできないが……、なぜだろう、師匠に言われたら不安がなくなった。俺は戦で活躍するために剣を振るってきたんだ。師匠とともに戦える日が来るなんて、気合が入るぜ!


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