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バルヴァン、6

この晩のバルヴァンはボルドフと共に学校から連れてきた生徒の引率をトルニエ様に頼まれている。今まではバーナフが面倒を見ていたが、バーナフはトルニエ様と作戦会議をしている。

面倒を見るとは言ってもそんなに大変ではない。トルニエ様の学校からこの戦場に連れてこられたのは1人だけだからだ。残りは王と国軍のほとんどが遠征に来ていて手薄になったファラニクス王国の防衛に当たっている。もともとファラニクス王国民の自衛意識は高いが、上に立って導ける人材はロプナスとかいう人だけでほとんどいないらしいが、うちの生徒たちが来れば何とかなるだろうということらしい。


「師匠!俺!なんか明日が楽しみです!」

と剣を磨きながらもきょろきょろと落ち着きのないグレンだけ。

バルヴァンたちのような戦闘員は上官の命令に従って目の前の敵を倒すだけ。頭を使うことも不安になったり興奮したりする必要がない。目の前に自分より強い敵がいたら死ぬだけ。

「グレン、熱くなるな、大事な時ほど冷静になれ。今日はもう寝ろ!」

「わかりました。それではおやすみなさい。」

グレンは剣などを整理するとすぐに横になった。初めての戦場で気が動転しているのか……。たくさんの集落で似たような状態になった人を見てきた。その人たちは夜中に興奮が抑えきれなくなって、本番で失敗していたがグレンは大丈夫そうだ……。


明日が本番……。心がざわつく。今までこんなことなかったのに……。


少しでも個の力が卓越している戦士がほしかったトルニエ様はバルヴァンが手塩に育てたグレンに目を付けた。確かに今のグレンはバルヴァン以外に相手ができる人はいない。だけど、戦場は初めてだ。初陣でこれほどの大きな戦……。不安でしかない。

バルヴァンもトルニエ様に反対してみたけどダメだった。トルニエ様の言う勝率を上げるためには不確定でもグレンの力が必要だと……。バルヴァンは言葉が尽き、結局押し切られる形でグレンをつれてくることになった。


本来、バルヴァンたちが使う弐刀天承は他を圧倒する剣技と共に心頭滅却し、ただの殺戮兵器になることが求められる。バルヴァンも戦いの前には頭も心も無にして、体が求めるままに剣を振るう。これが本当の弐刀天承……。だけど、結局、グレンには弐刀天承の剣技しか教えられていない。あれを教えるとなる心を破壊しなくてはならない。場合によっては記憶も……。俗と繋がるすべてを断ち切り、ひたすら己の中の無我と向き合い続け、深く深く……。

なぜだろう。何度も思った。グレンにも真の弐刀天承を教えなくてはと……。でも、バルヴァンにはそれができなかった。教えようとするとなぜか手が止まる。弐刀天承の剣技をマスターするだけで十分負けない。と思ってしまう。

それはバルヴァンが師匠として、人として未熟だから……。


明日は負けられない。

バルヴァンも今日は早く寝よう。




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