スライル、6
流れと成り行きでここまで来たが、この侵略戦争は私の心情的には未だに反対だ。戦争がしたいわけじゃない。戦争しなくていい世の中をつくりたかったのに……。トルニエに言わせればそれが甘いのでしょうけど……。
トルニエの作戦会議も全く頭に入ってこない。私は本当にここにいていい人間なのか……。
トルニエに呼び出されていたのでしばらくしてトルニエの小屋に向かう。
「わざわざ呼び止めてどうしたんですか?」
「ああ、悪いな。」
「いえ……」
トルニエと言えど不安になっているのか……。やっていることは今までと変わらないが今回は規模が違う。
「今回の戦はとにかく烏合の衆だ。どれだけ人々の士気を高められるかにかかっている。ひいては総大将であるスライル、お前の心の力にかかっている。」
「総大将!?私が?」
「……ん?ああ、そうだが」
「いつ、私が総大将になったのですか?」
「いつって……、初めからだが?」
「ちょっちょ……、私が?なぜ?」
「まあ、そんなにビビんなって!作戦とかは俺が立てるからお前はドンと構えていりゃいい。お前はこの戦の、紅蓮旗の象徴なんだ。」
「いや、それを言ったらトルニエだって最初からいたではないですか!」
「いいや、俺はお前を手伝ったに過ぎない。発起人はお前だろ?」
「それはそうですが……。」
「世界を平和にするには、やはり世界を一つにまとめるしかない。それが紅蓮旗であり、お前なんだ。皆、お前のために集まったんだ。お前が説いて回って、お前が見つけた世界平和の形なんだ。俺はただの戦争屋さ。俺の代えはいてもお前の代えはいない。」
「でもこの戦いは……。」
「なんだかわかってないようだな……。この戦いは終わればほとんど終わったようなものだ。これからはお前が望んだ世界平和を維持するために必要なこと、法やら施設やらよくわからんが充実させていかないといけない。」
「それはそうですが……。」
「その辺のことは考えているのか?」
「いえ、私には毎日の刺激が多すぎて……。」
「じゃあ、そろそろ考えておけよ。ここから先は後戻りできない新しい世界しかない。」
「……。わかりました。それはそれ、胸に刻んでおきます。ですがトルニエ、何か不安なこと隠してませんか?」
「……テンガロから連絡がない。反乱軍を無事に組織したという連絡を最後に……。あいつは真面目な奴なのに……。」
「ええっと、テンガロってどなたですか?反乱軍?」
「あれ?スライル、テンガロ知らなかったか?」
「ええ。」
「まあ、昔からの友人だ。」
「そうですか。連絡が来るといいですね。」
トルニエはもともとガルネシア王国の人。友達がガルネシア王国にいてもおかしくはない。
「ああ。」
「私はこれで……。明日から頑張りましょう!……これだと今まで頑張ってないみたいですね。明日からも頑張りましょう……。これもなんだか違うような……。トルニエ、こんなときなんといえば?」
「何でもいいわ!もうここまで来たら言葉なんて何でもいいだろ!」
「そうですね。それではトルニエ、また明日!」
「ああ!」
外に出ると風が冷たい。トルニエの言うこともわかる。様々な人がかかわっているがそれがすべて紅蓮の旗に共感したものの力とすれば、それで大国と渡り合える力を手にすることができれば、人々は集まる。紅蓮の旗の庇護下に入ろうとするだろう。そうすれば紅蓮旗のもとに一つになり、平和になる。私の望みではあるが……。いやもう、ここまで来たら仕方ない。自分を騙すしかないトルニエの言う賢者になるしかない。私は世界が平和になるためにガルネシア王国を滅ぼし、新しい国をつくる。
覚悟を決めなくては……。今ここにいることは私が望んだこと……。
ただガルネシア王国は……。ガルネシア王国には恩も縁もあるが運はなかった。




