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バルヴァン、3

突然の方針変更によって山奥を開拓し校舎を建てることになった。戦場で野営用に小屋を作ることもあるバーナフは建築関連の知識もある。バーナフを中心にトルニエ様とバルヴァン、ボルドフの4人で主に校舎を作る。その間スライルさんは必要なものを買いに方々を駆け回っていた。


それから半年……。


「大体形になってきたなこの建物も。」

「ええ。」

ただの森だったそこに立派な建物ができていた。トルニエ様も感慨深そうに腕を組んでいる。このあたりに人は来ないため敵襲に遭うこともほとんどないだろう。目立たないように周りの木よりも低く造ってある。

バーナフの設計図通りに作っただけなのだが、良い出来だ。


「じゃあ、生徒を集めるか。このご時世、有能そうな子供を勝手にさらって育てても許されてしまうが、俺たちは正義の集団だ。そういう誰かが悲しむことだけはしないようにしないといけない。声をかけるとしたら戦争で親や面倒を見てくれる大人がいない子供たちだな。最近戦があった地域を見回りに行くか……。」

トルニエ様は意気揚々と歩み出す。いつも何の迷いもなく進むトルニエ様だが……、ガルネシア王国を滅ぼすと言っていた心意気は今もあるのだろうか……。


「何やっているんだ!来いよ!」

トルニエ様が急かすのでバルヴァンたちは最近戦闘があった場所へ向かった。


「このあたりがそうだってスライルが言ってたぜ!」

トルニエ様が連れてきた場所は見るからに悲惨だ。建物と言う建物はすべて壊されている。一目見て戦争があったことがわかる。見るからに人影はない。

「まだどこかに隠れているかもしれない。手分けして探そう。」


こんな場所に人がいるとは思えないが、いるとしたらどこだろうか……。

死にたくないから知らない人間には見つからないようにする。それと同時に助けてほしいから見つかりやすいところにいる。

たぶんちょっと瓦礫をどかしたところに……、バルヴァンが建物の屋根だったと思われる大きな板を持ち上げるとそこには子供が4人いた。

女が1人、男が3人……。女の子が頭一つ大きい。一番年上なのだろう。交渉するならこの子か……。


「お姉さん、一緒、来て」

「ごめんなさい、私ったらもう可愛すぎるのも罪なもんよね。でもダメよ!レディーを口説くのに手土産の一つもないなんて!」

……、この小娘は何を言っている?


「やめろ!姉ちゃんを口説くな!」

隣の男の子が突っかかって来る。口説いてはいない……。

「違う。バルヴァン、生徒、集めてる。」

「生徒?何言ってるんだ!帰れ!これ以上近寄るとただじゃおかないぞ!」

その辺に落ちていた長い棒を手に取り威嚇してくる。だが使い方が全然なっていない……。ねじ伏せるのは分けないが……。


「まあまあ、落ち着いて君!私達は怪しい人じゃないよ。」

大声を聞いたバーナフがすっ飛んで来てくれた。バルヴァンは会話が苦手なのは皆知っている。バーナフは気配りのできる男だ。……後は任せた。

「じゃあなんだ!」

さっきの男の子がバーナフに突っかかる。

「君たちみたいに困っている子供たちを集めて学校をつくろうと思ってるんだ。私たちと来てくれれば頭も体も心も強くなれるよ!」

「何言ってんだ!そんなこと言ってどこかに奴隷として売り飛ばそうとか考えているんじゃないか?大国に持っていけば高く売れるらしいじゃないか!」

「そんなことはないよ……。」

……もちろんそんなつもりはない。しかし、それをわかってもらうのがどんなに難しいことか……。スライルさんはこれを何度も成功させていると思うとトルニエ様がすごいと言っている理由はよくわかる。

バーナフも次にいうことばを考えているのか黙ったままだ。

どうしたものか……。


「グレン、なんか悪い人じゃなさそうだよ。ちょっと話を聞いてみようよ!」

隣の細身の男の子が口を挟む。

「馬鹿言うな、フレロレ!こいつらが言っていることが本当だったとしても結局はこいつらに使われるだけなんじゃないのか?今何とか生き延びている命をこいつらの戦争の道具に使われるなんて絶対嫌だ!」

「違うよ。たぶん、何もしなければそうなるだろうけど、力は使い方だよ。戦いたくなくても戦うだけの力はいつだって必要なんだ。使い方次第なんだよ。」

「俺もそう思うぜ。大体奴隷にするなら俺たちを問答無用で攫っちまった方が早いだろ。見た目からしてこの人ら相当強いし。」

「キーデルまで……。……まあ、姉ちゃんは何も言わなくていいや。」

「ちょっと!」

「じゃあ、聞かせてくれ。あんたらについていったら俺たちは何を得るんだ?」

彼は鋭い目でこちらを見る。


「……それは、見た方が早い。ちょっと待ってて。」

というとバーナフはボルドフを連れてきた。

「バルヴァン、ちょっとボルドフと組手してくれないか?」

組手?朝もやったが……。まあいいだろう。バーナフも信頼できるやつだ。

「わかった。」

「ボルドフも頼む。」

「師匠と組手ですか?わかりました」

ボルドフは落ちている棒から使い勝手のよさそうなものを2本拾い上げる。バルヴァンも落ちていた棒を2本、適当に拾い上げ向き合う。


……。

無に……、無に……。

沈黙が続く。


「なんだよ、黙りこんで――。」

男の子の声に一瞬気をとられたボルドフの隙を逃さない。

剣(棒)の応酬になる。初手の体勢が悪かったボルドフは徐々に崩れていく。戦闘となるとほかに気を回す余裕はない。高速で放つ布石を含めた86発目の一撃でついにボルドフの守りを崩す。その間8秒。

「……ふぅ。まだまだ師匠には及ばないですね……。」

ボルドフはため息をつく。


「見てたかい、君たち。僕たちについて来れば君たちも彼みたいになれるよ。」

バーナフはこれ見よがしに子供たちに告げる。さっきまで反抗的な態度をとっていた男の子は目を大きくさせていた。

「スゲー、どう動いたのか全然わかんねー。皆行こうぜ!強くなろうぜ!俺も剣使いてー!この技使いこなすにはどうすればいいですか?」

「まったくグレンは単純なんだから……、やれやれ。」

「まあ、それがこいつのいいところだろ。それに確かにすごいし……。」

「何でもいいけどちょっとお腹すいてこない?」


どうやら交渉はうまくいったらしい。

トルニエ様のところへ連れていく。

向かう途中、グレンと呼ばれていた男の子がさっきの我々の動きを真似していた。その動きは遅いし間違いも多いけど、なんだか一生懸命だった。

バルヴァンはその光景が微笑ましく思った。


テンガロとボルドフも戻ってきた。

「それじゃあ、一旦戻るか!」

トルニエ様が声をかける。

今回はうまくいったようだ。




帰り際、

「あっ、師匠。なんだかうれしそうですね!」

ボルドフがバルヴァンの顔を見るなりそう声をかけてきた。


バルヴァンがうれしそう?

でも確かに自分の中で今までになかったものが……。

「そんなことない。」

心を無にしなければ……。

バルヴァンが強くあるために……。




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