ルード、2
王が遅いとぼやくものだから私がトラーノを呼び戻しに行くことに……。なんでまったく……、まあナンバー3の宿命か……。しかし、その途中で思わぬものを目撃する。彼の部屋に向かう途中で奴がイーリス様と立ち話しているところを目撃してしまった。
トラーノの奴!
戻りが遅いと思ったらさっきイーリス様とお話をしているだと!?
ぐぬぬ、やはりあいつは癇に障るな!
散々小言を言って急かしたトラーノが会議に戻るとその後はつつがなく進行した。
王は最初の3人の処分を言いたかっただけのようでトラーノが戻ると書面の確認だけしてとっとと部屋から出て行き、また白紙に戻った改訂予算案の件といい、人事の件といい他にやることが増えたため、ソルナード総司令の軍事報告だけ済ませるとそのまま解散という流れになった。
この会議でまたしても仕事が増えた。私は頭の中でこれからの仕事の段取りとトラーノへの苛立ちを整理しながら自分の部屋にもどる。部屋に戻ると私の右腕であるクルドフがイスに腰掛けてコーヒーを飲みながら書類を眺めていた。
なんだかんだで私がイライラしているときに彼は私を落ち着かせてくれる。私の家の前でボロボロになっていたところを拾ったのが始まりか。トラーノは私のことを庶民の出と思っているが私は立派な貴族の出だ。まあ、階級は下っ端の下っ端で庶民と大差ないと言えばそうだが、何かにつけては庶民の出の割によい働きをするというトラーノの態度はイラつくのだが……、まあいい。そこからクルドフとは2人3脚で出世してきた。クルドフは頭の回転が速く、様々な政策を考えてくれる。それに出世して自分で市民権を買い、彼はもう奴隷ではない。今はただの相棒だ。
「ルード様、先ほどトラーノ様の遣いが参られました、新たに3名を処分するとのことです。」
クルドフは読んでいた資料を持って来ながら報告する。
「クソ、トラーノめが!」
「え?トラーノ様が処分されたのですか?今回も王の独断かと思っていましたが……。」
「すまん、トラーノは何でもない。してその3人のデータがそれか?」
「ええ。」
クルドフは書類を手渡すと私のコーヒーを入れる。
「みんな若いな……。20代中盤くらいか……。働き盛りではないか。何でこうも未来の働き手ばかり……。王は何をお考えなのだ?」
「それは私にもわかりかねます。」
「まあそうだろうよ……。」
それがわかれば私も困りはしない。
「人材を処分するおかげで財源は浮くのだが、王がたまに開くパーティーで予想外の出費もあるからな……。」
「先日もノリノリで参加していたではないですか……。」
「それはそれ、これはこれ。私は仕事とプライベートは分ける主義なのだ。」
「……いえ、もう何も言いませんよ。」
クルドフが遠い目を向ける。
「どうせクビにするなら高給取りの無能宰相トラーノあたりにすれば毎日パーティーでも何も問題ないんだけどな。」
「またそんなことを……。」
クルドフはコーヒーを差し出すと少し呆れ顔で机に向かう。
「王の性格に詳しい人物はおられないのか……。」
「……ファレンス様などは?王の教育係も務めていたお方ですし幼いころからの王を見ておられます。王が気心を許している唯一の人物ではないでしょうか……?」
「そうか、ファレンス様か……。でも、あの人王が即位された後、一度どこか立ち去られたらしいからな……。王がクビを連呼するようになったのは数年前からだしな……。王がおかしくなった原因を知らないんじゃないか?……ん!ファレンス様か!そうだな!早速行ってこよう!」
「どうされたのですか?」
「さっきイーリス様とトラーノの会話が少し聞こえてな。今イーリス様はファレンス様とお茶をしているのだ!」
「さっき公私混同しないとか言ってませんでした?」
「それはそれ、これはこれ」
「……そうですか。……行ってらっしゃいませ。」
明らかに呆れた顔をされたがそんなことは気にしない。
「いや、私がファレンス様のもとに向かうことで仕事が遅れるのは申し訳ないと思っているが私の仕事よりも大きい、これは国家の問題だ。帰ったらきっちりと仕事をこなすから心配するな!ちょっと早めのお昼休憩ってことで!」
「その心配はしていませんよ。まったく……。」
では何を怒っているのだ?
ああ、そういうことか。
「お茶が飲みたいわけじゃないよ!お前が入れてくれたコーヒーも好きだからな!今飲んでいくから!熱っ!」
「もういいですよ!とっとと言ってとっとと帰ってきてください!」
妙な剣幕で私は部屋から追い出された。
まったく……。
口ではいろいろ言うが幼いころから私を助けてくれるあいつには助けられている。
いい部下を持ったものだ。
私は颯爽と走り出した。




