表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創魔の黒狼  作者: あけぼのわこん
9/26

09 巨豚がきょとん

街を出てすぐの藪は松明を持った後発組が、先に歩いて払ってくれる。

一番危険な先陣を任せる時、余計な負担をかけさせないという常識らしい。

非常に楽な思いをしながら森まで着くと、今回の戦闘における対策を考え始める。


身長は2.5mの接近戦闘型、物理防御がないに等しい自分にとって一撃も喰らえない。

相手の進行方向と自分の間にいつものように穴を作る。魔力が増えたので、2mを超える大穴も問題ないだろう。

複数個所に落し穴を設置し、木の上から爆破魔法で奇襲を仕掛ける。

遠距離からの爆破になるので、こちらを見つけるにも時間がかかるはずだ。


時計がないので約1時間程度歩き、他の冒険者たちからのエールを受けて一人先に向かう。

少しでも早く向かうため、松明は持たず創製した指向性光源魔法の<マグライト>で照らし、ハイジャンプで進んでいく。


どれくらい進んだだろうか?初めての相手に手汗が滲む。

ノシノシと足音いう足音とギィギィという不快な声が近づいてくる。

木の上までハイジャンプで飛び、5mくらいの高さを枝から枝へと飛び移って音の方向へ向かう。


見えた。予想以上に数が多い。森の中を縫ってオークが30近くは歩いている。

手には棍棒や木の棒を尖らせた槍のようなものを、持っており全員が戦闘向きのようだ。

更に近づく、音を殺して木に飛び移る。

真下にオークが来た時、あまりの光景に衝撃を受けた。


半数近くのオークが手に女性を持っている。中には鎧を着た冒険者らしき者もいる。

男は...既に殺されたのだろう、槍に貫かれて串刺しのまま旗のように揺られていた。


まずはどこまで効くかわからないが、無音で攻める。

(ウォーター)

口の中だけで唱え、真下の5匹の肺を水で満たす。

増加した魔力量のおかげで同時発動でも1L近くまで一気に流し込める。

突然仲間の5匹がのたうち、痙攣する光景にオークは動揺する。


【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】


今までの増加量から行けば天地の差がある程の魔力接収。

4割近くは増加した魔力で更に5匹を溺死させる。


【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】

【魔力を5テイクしました】


上には気付いていない。上昇した魔力を上乗せして溺死させ続ける。


「ぐがぁぁぁぁあ!」

最後尾のオークから咆哮が聞こえ、残ったオークが一斉にこちらに向かって走ってきた。

気取られた!動く相手にはウォーターは非常に相性が悪い。


「落し穴!」

踏み込んだ一歩の足場を失い地下に消える3体の。

思い切り駆け出したせいで、落ちたオークの後頭部を蹴りつけて転倒、更に転倒したオークで転ぶ後続のオーク。


今度は爆破魔法で蹴りを付けることにした。


バガンッ バガンッと破裂音が響く度に、オークの頭部が砕け飛ぶ。

忘れていたとばかりに発炎器を取り出して投擲。20mくらい先の最後尾に投げつけるが、バットのようなスイングで発炎器があらぬ方向に飛んで行った。

よく見ると明らかに雰囲気が違う。オークリーダーとでも言えばいいのか。

他のオークに比べて頭一つでかい上に、鎧のまで来ているところをみるとコイツが首魁で間違いなさそうだ。


その後10回の爆破音が消えた時、最後にはオークリーダーとの一騎打ちになっていた。


「来いよ豚野郎!」

挑発が効いたのか、雄たけびを上げながら一歩を踏み出し仕掛けられた落し穴で地中に消えていくオークリーダー。

誰が来させるかっての。

「モノカーボン」

落し穴の中に一酸化炭素を生成し音がしなくなるまで、濃度を上げていく。

完全に沈黙したのを確認して全ての落し穴を元に戻した。

さて、オークリーダーは意識を完全に手放してはいるが、一酸化炭素がまだ周囲にあるので軽く風を吹かせて吹き飛ばす。

オークリーダーが持っていた剣が目に入ったので先に回収しようとする。

刀身は片刃の約1mで赤黒く、刃の背は揺れる炎のように波打っており、柄も少し凝った造形ながら無駄のないフォルムだった。

だが、思った以上に重かったので脇に置いておいた。


「さて、血抜きするか。」

なぜこのタイミングで血抜きするのか?それは食べてみたいからだ。

見た目、二足歩行の豚のような外見なので、たぶんうまい。

そしてきっと血抜きしたらもっとうまい。そんな気がしてならなかった。

自分のいる場所を3m四方分隆起させ、剣で首を刎ねる。


【魔力を10テイクしました】


やはりリーダーは別格だったようだ。魔力量が他の倍ということは本当なら相当の個体だったんだろう。

ここで、新しい戦い方を思いつく。剣だ。


「と、それはともかく吊るさないとな。」

地面を隆起させ足を固定し持ち上げ、その下を再び掘ることで足をもって宙づりしているような状態にする。

そしてある程度血が流れたら、腸部分を裂いて千切って穴に放り込んだ後、風の魔法で血の匂いを上空まで巻き上げる。


地面の魔法は発動した瞬間だけの魔力消費なのですぐに回復する使いやすいが、

逆に常時作用しないといけないような、風を吹かせ続ける魔法は、発動中はほかに魔力を回せないので使いどころが難しい。

あくまで、魔力量が不足する『今は』だけかもしれないけど。


ギルドの後発組がくる前に全ての落し穴と隆起した地面を戻す。

全滅しているオークの群れの真ん中で、3m超のオークを血抜きしている姿に冒険者たちは目を丸くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ