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創魔の黒狼  作者: あけぼのわこん
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06 新しい魔法、高価なお肉

 ついに魔力が30を超えた。

 ゴブリンは11匹、討伐報酬とも数が一致していた。


 ここまで増えればもう少し新しい魔法が使えそうだ。

 考えに考えてきた魔法を試すときがついに来た!

 周囲に大きいな影響を及ぼすことは、魔力的にも難しいが便利にする魔法なら使えそうだ。


 一つ目は落し穴、正しい使い方は段差を作る魔法だ。


 そう、最初に使おうとして1㎝四方しか掘れなかった悲しみの地面魔法。

 実は消費魔力に応じて加速度的に威力が上がるようで、魔力30を使ったところ何と1m四方を陥没させるという凶悪な魔法ができた。

 何が凶悪かってゴブリンの身長が1m程度なのでゴブリンの足元を1m陥没させてしまえば後はねらい打つだけなのだ。


 二つ目はハイジャンプ、跳躍力を高める魔法。


 任意の方向に向かって追い風を生むことで3倍程度の跳躍力と移動速度を得ることができる。

 多分風速的には80m/sといったところだろうか。台風でいう人が飛ばされるくらいの記録的な暴風だ。

 勿論着地時には衝撃まで緩和してくれる優れもの。消費魔力は発動した瞬間に20使用する。

 

 最後は、爆破、小爆発を起こす。


 空気制御で酸素と水素を混合し、着火<イグニッション>をかけて爆発させる。

 空気制御時の魔力量30で木の幹に傷がつく程度の衝撃を発生させられる。運が良ければ燃やせるだろう。

 だが、まだ実践では全く使えない。

 遠くなるほど魔力消費は増え、遠方からでは威力が落ちてしまうくせに、威力を上げるために近くで放つと自爆になる。

 だが、魔力が増えれば化けるのは間違いない。期待できる魔法だ。


 ここまで色々試してみたが、ある程度の原理を指定しないと想像した以上の魔力を要することが分かった。

 『火球を飛ばす』ファイヤーボールと『酸素と水素を継続して供給し指定方向に飛ばす』ファイヤーボールでは、同じ魔力でも圧倒的に後者のほうが圧倒的に威力が高い。

 そして火球を飛ばすというのは非常に非効率だということにも気が付いた。

 ただ、火で攻撃するなら、爆破で十分だ。今自分が使える火球と爆破を全力で使うと、『火で攻撃した』という結果だけで見れば爆破の方が3倍近い威力があった。

 不慣れな魔法なので当然実験は全部その辺の木を使った。山火事起きたらどうすんだろうな、この世界だと。



 さて、3つの魔法を完成させて少しの実験をしたところで、藪の中に夕焼けの光が差し込み始めた。

 あまり気にしなかったが、この世界には高層ビルやマンションなど存在しない。


 電線もなく、一切遮るもののない夕焼けがちょっと目に染みたところで、ハイジャンプで街に向かった。


***


 ぴょいーん、ぴょいーんと兎のように跳ねながら街を目指すが、藪が壁のように立ちはだかっており、突き抜けるたびに肌と服を擦っていく。

 このままでは一張羅のスーツがボロボロになってしまうので、結局歩きに切り替えた。


 しかし、隣で小さなモモンガのようなものが飛来してくるのを見て閃いた!

 少し大きな木に登れば藪よりも上に行けるじゃん!


 「おぉ。流石30歳のまほうつかいだな。」


 自分自身に自画自賛。


 そんなわけでハイジャンプで木に登り、枝から一歩を踏み出 バキッ みだせなかった


 「おおわぁぁぁ。がはっ!」


 ドスンと背中から落ちる。やばい、呼吸できない。窒息させてきた魔物たち、ごめん、こんな苦しかったんだな。

 幸いにも周囲に魔物の影はなかったので、何度かむせながらも呼吸を整えて再び歩き出す。

 足場を作る魔法も考えたけど、魔力が足りない。


 足場魔法に思いを馳せながら、影が増えてきた藪を進む。

 星が輝き始めた頃、ようやく街明かりが見え始めてきた。


「お疲れ様です。」


 門番のオーランドさんに声をかける。


「やあ、無事に帰ってこれて何よりだ。」


 軽く挨拶を交わして早々にギルドに向かう。

 昼食をすっかり忘れていたため、お腹から警告音が聞こえる。


カランカラーン


 受付嬢のシンシアさんに会釈して先に二階の食堂のカウンター席に腰掛ける。


「こんばんは、マスター」


薄くなった髪にでっぷりという表現が一番に思える巨体の老齢の男性に声をかけた。


「あぁ、ヴォイス君じゃないか。新人キラーにやられなくてよかったね。」


 ニコニコ笑顔で振り向くマスター。

 右手に包丁、左手に肉の塊持って笑ってる姿は、食堂じゃなかったらシリアルキラーのようだ。

 昨日の夕飯でも世話になった厨房の主、人呼んでマスターだ。


「いやぁ、血抜きしてたらゴブリンに囲まれて死ぬかと思いましたよ。」


「なんて危ないことをしてるんだ。」


 目を伏せて首を振るマスター。呆れるほど常識だったのか。


「この辺ってそういうもんなんですか?」


「当然だろう。血の匂いは魔物を寄せる。だから狩った獲物は持ち帰ってから捌くのが一般的だ。そりゃあ、味は落ちるがね。」


「どれくらい違うんですか?」


「すぐ血抜きした新人キラーなら、品質次第で金貨1枚は出せるぞ。」


 まじか。あれってそんなに危険な行為だったのか。

 キックラビットの討伐報酬は銅貨50枚。

 この店のサンドイッチの値段が銅貨10枚と考えると円換算で60円=銅貨1枚。ということは、金貨1枚で60万相当!?

 突然降って湧いたお金の匂いに目をキラキラさせる。


「あ~、良くある話だが、金に目がくらんで捕獲したまま街まで持ち込むとか考えちゃいかんよ。安全のために魔物を街に入れるのは禁止してる。」


「まあ当然ですよね。」


 それは街の防衛的にも必要な措置だろう。だが、創製魔法の落し穴と魔力回復があれば解決できる問題だな。


「ちなみに、今回その買取ってできます?」


「明日また別の奴を狩ってちゃんと納品するなら、金貨1枚で買いとろう。」


「わかりました。じゃあ先に新人キラーはお渡しします。せっかくなので血抜きの具合も確認してください。」


 鞄から取り出してマスターに手渡す。


「ほう...ほう?これはこれは。」


 兎の耳部分を掴んでぶら下げ、上から下から斜めから、裂いた腹の中まで確認する。


「これなら十分だ!金貨1枚払おうじゃないか!」


 少し興奮したのかマスターの声が大きくなる。

 金貨1枚に反応したテーブル席の何人かがこちらを向く。


「ほぉ~?変わった服着たボク景気いいじゃぁん。俺らにもコツを教えてくれよ~。」


 テーブル席から一人が立ち上がってこちらに寄ってくる。

 皮で出来た軽装に腰には短剣が何本か装着されており、風貌は見るからに盗賊だ。

 マスターはわずかに眉を顰めた。


「お前さん達が新人キラーの血抜きができるなら、存分にいびってやってくれ。<刃の輩>さん。」


「おぉ?マスター、そいつ血抜きしたの持ってきたのか!」


 まるで冗談だろうとでも言うように視線を落とす。


「そうだとも、これを見てみるといい。」


 そう言って手に持った新人キラーを渡す。


「なっ!これはまた上手い事やってるじゃねえか!」


 この盗賊(仮)の人は意外と話が分かる人だったらしい。


「なあなあ!今度これ頼もうぜ!」


 と振り返って同じテーブルの面々に促す。彼と円卓に掛けていたのは、左から重戦士の鎧を着た顔の左上から斜めに切り傷のある男、1.5メートルは超えているだろう大剣を背中に背負った男だった。

 どう見てもパーティ構成が悪い!全員前衛じゃないか!

 呆れたように大剣の男が返す。


「お前、突然人に絡んでおいてよく頼もうと思えるなぁ。」


「うっせ!飯は正義だ!旨いもんと旨いもん作れるやつは偉いんだぜ!」


 ご飯大好きさんだったのか。見かねたのか重戦士の男も声をかけてきた。


「うちのバカが悪いな。詫びと言っては何だがエールでもどうだ?」


「ありがとう、いただきます。」


「助かる。」


 笑顔で返すと重戦士はニカッと笑って手を挙げた。


「マスター!エール一杯彼に頼む!アベイ!その肉はまた今度だ!」


「はいよー。」


 マスターが樽からジョッキにエールを並々についで持ってくる。

 アベイと呼ばれた盗賊風のご飯大好きは、ちぇーと言いながら自分のテーブルに戻っていった。


「彼らは?」


「Eランクのパーティ<刃の輩>だ。パーティってのは気の合う仲間で集まって一緒に行動するグループの事だ。よっぽど気が合うかしないと大体どこかで破たんする。


 その中でも彼らは相当長く組んでる仲の良いパーティの一つだよ。」


「Eランクっていうとどれくらいの強さなんですか?」


「そうだなぁ。オーク1体を狩れるレベルってところかな。」


 オークか。ファンタジーものだと二足歩行の豚ってところだけど、この世界はどうなんだ?


「Gですら新人殺しですからオークも相当強いんですよね?」


「まあEランクの基準になる魔物だからね。知能は低いが繁殖力が高い上に人里を襲うんだ。」


 くっ殺が実在する世界のようだ。


「なるほど。それとEランクパーティって言ってるってことは個人とは別のランク管理ですか?」


「ご明察。3人パーティなら3人でどこまでの魔物1体を狩れるかが基準だよ。」


 ということはオークとやらは、あの3人がかりでやっと狩れる位の強さということか。


「まあ、外で血抜きして無事だった君なら早々に彼らを抜けるかもしれないね。ああ、ちょっと下に行ってくるよ」


 そういうと金貨1枚を置き1階に降りていった。


 話しながらで殆ど食べていなかったが、今日のメニューはサンドイッチとさっき貰ったエールだ。

 コッペパンのようなバンズにみっちりとお肉が挟まっており、ボリュームが欲しい冒険者には至高の一品である。

 周りのテーブルの人たちも結構同じものを頼んでおり、定番メニューというのがよくわかる。


 軽く平らげたら、いよいよゴブリンの討伐報酬の清算だ。いくらになるか楽しみだ。

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