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創魔の黒狼  作者: あけぼのわこん
18/26

18 すっごいきらい

 門から少し離れた草むらに着地すると、目を回したルナを抱きかかえたままギルドに向かう。

 少し前まで連れていなかった少女に門番のオーランドが驚いた顔をするが、お姫様抱っこから問題ないと悟ったのか何も言わなかった。


 時間は夕暮れの直前、このまま宿を取ることも考えたが、空腹に耐えかねてギルドを目指した。


カランカラン


 偶然入り口の掃き掃除をしていたシンシアさんと遭遇。


「え?ヴォルフさん?ハーピー狩りに...ってえぇぇぇえええ!どこから女の子なんて拾ってきたんですかああぁあ!?」


「拾ってきたって、子犬じゃないんですから。」


「・・・。獣人、の方?」


「はい。」


「子犬じゃないですかああああ!」


 獣人って犬扱い何だろうか。


「騒がしいと思ったら、ヴォルフ君ですか。・・・何やら変わった趣味をお持ちで。」


 マスターあなたもか。


「色々あって拾いまして。説明の前に食事にしたいんですが頼めますか?」


「二人前かな?」


「ええ。」


マスターはニカッと笑うと巨体とは思えないスピードで食堂に上がっていった。



色々な疑惑はさておくとして、二人掛けの椅子にルナを座らせると清算の話を進めた。

今日はいつもの受付カウンターではなく、カウンターの横にあるテーブルに座っている。


「待ってる間に依頼品の清算お願いできますか?」


「あ、はい。というか、もう帰ってきたんですか?普通なら往復でも2週間かかるんですが。」


「そこはその...頑張りました。」


「ふふふっ、そういうことにしておきましょう。」


 腕で白目でふにゃふにゃになっているルナに目を向けて微笑むシンシアさん。


「で、依頼の品なんですが。」


 小袋いっぱいに入っている風切り羽を取り出す。ぱんぱんに入っている袋を見て、これまた固まるシンシアさん。


「これ、お一人で?」


「えぇ。」


「わーお、正直信じられませんね。まあ、そこはヴォルフさんですからそういうことにしておきます。」


 ちょっと待っててくださいねー。といってカウンターの奥に入っていくシンシアさん。

 まだ起きないのでルナのピンと尖った犬耳をもふもふしてみた。


 そういえばしっぽってあるんだろうか?


 暫くもふもふを続けているとピクンと体がはねた。


「ほぇぁ?」


「おそよう。」


 もう夜ですよ。目元をこすってい寝ぼけているのは可愛いんだけど、無防備すぎやしないだろうか。


「ふわはぁっ!」


 どがっしゃーん


 慌てて飛び退ったため椅子から転げ落ちる。側頭部から地面とキスした嫌な音がした。


「ぶふぇ。」


「うら若き少女がそんな声出すんじゃない。ルナ、ほら大丈夫?」


「はいぃ。」


 涙目で立ち上がって椅子に戻ってくるルナ。


「何を遊んでいるんですか?清算出来ましたよ。何の冗談かと思いましたが討伐証明が43枚ありました。

 え~っと、ハーピーの討伐報酬が金貨2枚と銀貨30枚なので、金貨98枚と銀貨90枚です。」


「え?は?金貨、98枚?」


 隣で聞いていたルナが目を丸くする。いや、沢山狩ったなぁ、とは思ったんだ。ここまでになるとは正直思ってなかった。

 申し訳なさそうにシンシアが尋ねる。


「大変遺憾な話をしてもいいでしょうか?」


「どうぞ?」


「銀貨が90枚渡すと困っちゃうので、金貨1枚で銀貨10枚のお釣りもらえませんか?」


 何がそんなに申し訳ないのかと思ったら、大変拍子抜けなお願いだった。


「それくらいでしたらいくらでも。」


 快く渡して清算を終了する。


「あ、それでハーピーの討伐の依頼報酬ですが、流石に40匹を一度に、ということだと報酬額の引き上げをせざる得ません。

 まぁ頑張ってくれてありがとうボーナスってやつです。」


「そういうのもあるんですね。」


「そこはギルド支部毎の裁量なんですけどね。それで、報酬を上げる条件と言っては何ですが、情報提供をお願いしたいんです。


そういって少しお茶目な雰囲気でメモと羽ペンを取り出すシンシアさん。


「構いませんよ。」


「そう言ってもらえると思ってましたよ!」


「では、ハーピーの数ですが、今回回収できた討伐証明以外で言えば、三分の一は遠くに落ちるなどで手に入りませんでした。」


 嘘ではない。剣の腹で殴ったハーピーが当たり所が悪かった時もあり、たまに四散したのだ。

 流石に飛び散った破片から集めるのは憚られたので、そういったものは捨て置いてきた。


「それでもあの数ということは最低でも60匹はいた、と。」


「逃げ帰ったのは10匹以上だったのは記憶してます。早い段階で不利を悟れる位の知能はあったようですね。」


「Bランクの魔物だと個体毎にある程度知能が違うというのは、たまに聞きますねぇ。」


 攻撃一辺倒な魔物としか今までやってこなかったので、驚いたが案外そういうものだったのか。


「それだけ沢山居るとなると、クイーンがいる可能性が高くなりましたね。」


「ほぉ?クイーンがいるのか?」


 突然後ろから男の声が掛けられる。振り返ると、なんだか王子様といった風貌のやたらキラキラした騎士がいた。


「レナードさん。お久しぶりですね。」


「ああ、お久しぶりシンシアちゃん。ハーピークイーンがいるんだって?」


「目撃情報ではないので断定ではありませんが、山のハーピーの数から可能性が高いという見解ですね。」


 キラキラ騎士は腕を組み、少し思案する。


「依頼になるまでどれくらいかかるかな?」


「明日には依頼を出しますよ。お暇があれば受けてください。」


「・・・そんなに早く出るなんて珍しいね。」


 キラキラは胡散臭いと言わんばかりにこちらを見てくる。

 そしてその一瞬シンシアさんの目に緊張が走る。

 他の冒険者も視線すらよこさない所を見ると、よっぽど高ランクの冒険者か有名なトラブルメーカーか。


「その方、ヴォルフさんというんですが、短期間で一度に40匹の討伐証明を持って見えましたので、ギルドとしても流石に有力な情報として判断しましたので。」


「はっ。獣人風情を連れた冒険者が一度に?おい、貴様、ランクは。」


 こいつルナが居る前で獣人風情、と言ったぞ。


「Dですが?」


「Dぃぃいランクうぅぅ??」


 いちいち気に障るキラキラだ。


「飛んだお笑い種だ!ギルドもこんな奴のいうことほいほい聞くなんて落ちたもん」


 バタッ


 頭にきたので顔の周りにだけ一酸化炭素を集めてやった。


 突然に気を失って倒れるキラキラ騎士。呼吸というのはステータスの影響を受けないのだろうか?

 状態異常的に言ったらこの状態が何になるのかは、気になるところである。


「キラキラ男はおねむ時間の様ですので、放っておきましょうか。」


「あなた、今何したの?」


 後ろから凍てつくような声が掛けられる。殺気というよりは悪寒。

 明らかに体が恐怖を感じているような、そんな気がするほどの冷たい声。


「何もしていませんよ。彼がお疲れだったんじゃないですか?」


 そういいながら振り返ると、青みがかった髪を三つ編みにして右に垂らした女性がいた。

 どこから見ても魔法士でございと言わんばかりのローブにとんがり帽子、手には杖を持っている。


「しらじらしい。まあいいわ。悪かったのは明らかにこっちだし。シンシアちゃん、悪いわね。」


「いえ、いつもありがとうございますセリアさん。」


「『凍結の揺り籠、フロージング』、全くレナードの獣人嫌いにも困ったものよ。そっちのお嬢さんも、悪かったわね。」


 主人の影に隠れるようにしていたルナに声をかけるが、ルナは何が起こったか分からず、唯々ビビっており、無言でうなずくしかできなかったようだ。


 セリアと呼ばれた冷たい声の女性は、キラキラ男の首根っこを掴むとそのまま引きずっていく。

 どう考えても体格差のありすぎる男を片手で引きずっていくと思ったら、マントを凍らせて抵抗を減らしているらしい。


 何という無駄な魔法の使い方。と思うと同時に発想力と無駄にでも魔法を使えるという事実から、高ランク冒険者と予想を立てた。

 今度会ったらセリアさんには、引き取ってもらった例を言っておこう。


「話の腰が折れてしまってすみませんでした。さっきのはBランクパーティ<氷牙>のレナードさんとセリアさんです。」


「Bランクというと貴族と同レベルと聞きましたが。」


「そうですね。高位の冒険者は下位の爵位と同等の発言力があると言っても過言ではありません。」


 しかし、そこまで言うと少しだけ渋い顔をする。


「実力はあるけど獣人嫌いが酷過ぎて、トラブルが多い、ってところですか?」


てへ、と舌を出し、にへらと笑うシンシアさん。


「顔に出てました?」


「ええ、それはもう。」


「と、情報提供ありがとうございました。話は逸れてしまいましたが聞きたいことはおおよそ聞けましたので、後はこちらにお任せください。

 クイーンがいる可能性となると、ハーピーの殲滅及びクイーンの調査・討伐になりますので、Bランク以上からの受注になりますので。」


 この一見に関してはこれ以上関係することはなさそうだ。

 話を終えるとルナを引き連れて、マスターの元に向かうのだった。

 そろそろ出来上がってるかな?

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