第八話 超人
「お腹が減ったでござるー!」
オーク肉を食べていると、女侍が肉を焼く匂いで飛び起きたのか、そう叫ぶ。
「肉ー、肉ー」
「あ、どうぞ」
肉肉言ってる女侍にエルが焼きたてのオーク肉を差し出し、引ったくる様に食う。
「うまい!」
女侍が一心不乱にオーク肉をむさぼり食い、気がつくと、焼いてあったオーク肉の串焼きは全部無くなり。満足そうな女侍が居た。
「は! そなた達は何者でござるか」
「エルフィルです」
「バべルだ。お前が川辺に倒れていたから、助けたんだが」
「そうだったのでござるか。誠にありがとうでござる。……そう言えばここは何処でござるか?」
「農工都市ヘベーラとニナリ村の間の平原だが」
「へべーら? 聞かない名でござるな。ここは外国でござるか?」
「外国ってなんだい」
「せっしゃは、“月光国”の者でござる」
「「月光国?」」
知らない名前だ。まあ名前や格好で昔の日本っぽい国だとは分かる。
「月光は島国でござるからな。聞かないのも無理はないでござるよ」
「それで、月光国の人が何で川辺で倒れていたの?」
確かに、それを聞きたかった。
「実は、せっしゃは武者修行の旅に出たのでござる。船で外国に行ってみようと思い商船に忍び込んでいたのでござるが、その船は嵐にあい大破。せっしゃも三日三晩無我夢中で泳ぎ続け、終に気を失なったでござる。その後ここで目覚めたと言う分けでござる」
「そ、そうか」
お、おお。中々濃い出来事を経験していらっしゃる。
「それで、お前はこれからどうするんだ?」
「お前ではなく、せっしゃの名前は桜と言うでござる」
「ああすまん、桜」
「ご迷惑で無ければ拙者も旅に同行したいでござる。せっしゃ腕はたつのでござるよ。相棒の夜桜と共に……夜桜が無い!?」
「夜桜ってこの変わった剣のこと?」
そう言ってエルは、桜の刀を取り出す。
「おお! これでござる。夜桜。せっしゃは一文無しになろうとお前を手放さないでござるー」
「ん? 一文無しだと」
「せっしゃは持って来た銭は海に流されてしまったようで……。と言う訳で、――バべル殿エルフィル殿。給料は食べ物だけで良いから、拙者を雇ってくれまいか!」
桜は右手と左手を地面にくっつけ頭を限界まで下げた。恥なんてどこかの川で流してきたような、とても見事な土下座をして見せた。
「バ、バべル君連れてってあげようよ」
「うーむ」
ここまで見事な土下座を見せられたら、雇うしかないだろうか。……食費だけならいいかな? 何か嫌な予感がするんだが。腕も立ちそうだし良いか。
「まあ、良いぞ」
「おお、かたじけない。バべル殿エルフィル殿。いや雇って貰うならこれからは主殿と呼ばせて頂く」
「主殿なんて、エルで良いよ」
「そうでござるか、ではエル殿と呼ばせて頂く」
なんか女侍の部下ができた。俺は主殿で良いか。食費だけで良いはずなのに嫌な予感が消えないのは気のせいだろうか。
「は! せっしゃの服はどこでござるか」
「ん、そこにあるぞ」
俺が指を指した所には、乾かされた着物が畳んであった。
「服が脱がされている。もしや、せっしゃの体を見たでござるか。乙女の肌はみだらに見せてはいけないと母様に言われているのに」
「大丈夫だ脱がせたのはエルだし、その時俺はここに居なかったから」
「そうだったのでござるか」
「え! なにが大丈夫なの」
エルが何かを言っているが聞こえていないらしい。エルは男だけど本当に女みたいだ。生まれる性別を間違ったんじゃないかな。
「何か釈然としないな-。……あ、そろそろ行こうか」
「そうだな。夜になるまでに行ける所まで行ってしまおう」
「分かったのでござる」
エルは火をけし、俺が荷物をまとめ、桜は草むらで着替えている。
「よし、行くか」
「了解」
「行くでござるよ!」
◇
あれから特に何事もなく夕方になり、そろそろ野営の準備をしなければいけないという時間になった。
「そろそろ野営の準備をしよう」
「野営しやすそうな場所を、さがしてくるでござるよ」
「たのんだ」
「じゃあ、ボクは薪を集めてくるね」
「ああ、分かった」
そう言ってエルは平原の草むらに入って行った。
「主殿ー。丁度良いところが見つかったでござる」
エルが薪を取りに行き、十数分経つと、桜が戻って来てそう言った。
「じゃあエルが戻って来たらそこに行くか」
「分かったでござる」
春風が吹き付ける中、エルが薪を持って戻って来た。
「戻ったよ」
「おお、エル殿。戻ったでござるか。彼方に丁度よい場所を見つけたでござるよ」
「そうかい、バべル君そこに行こうか」
「ああ」
桜が見つけた場所に行ってみると、そこは、草が刈り取られた、平らな場所だった。
「うん、ここにしよう。ボクは火を熾して、夕飯の準備。バべル君と桜ちゃんは野営の準備を」
「「分かった(でござる)」」
辺りはすっかり暗くなり、俺達が野営している場所にある焚き火が周りを明るく照らす。
「……もう、良いかな」
焚き火では余ったオーク肉を木にさして、串焼きにしたものを焼いている。
「じゃあ、食べるのでござるよ。いただきます」
「俺にもくれ」
「はいどうぞ」
エルから串焼きを受け取り、かぶりつく。
「「「うまい」」」
思わずうまいと言ってしまう。オーク肉は何で美味しいんだろう。
「はむはむ。エル殿ー、おかわりでござる!」
桜がオーク肉を一瞬で食い、エルにおかわりを要求する
「はい、どうぞ」
「はむはむ。うまいのでござるよ」
桜は串焼きをほおばり、ハムスターみたいになっている。
……気のせいかな。何か桜の食べるペースが尋常じゃ無いんだけど……。
◇
俺の嫌な予感は当たっていた。
「エル殿、おかわりでござる」
「え! もう無いよ」
「せっしゃもう少し食べたいでござる」
「干し肉なら有るけど……」
「おお、エル殿。欲しいでござる」
桜は、余っていたオーク肉を全部食い。終に干し肉にまで手を出した。干し肉も堅パンも二人前の三日分しか持って来ていない。とてもじゃ無いが足りないだろう。桜って、俺の三倍は食っているんじゃないか。
「ふぅー美味しかったでござる。ごちそうさま」
「なあ、桜」
「何でござるか、主殿」
「お前の食べる量はどうなってんだ?」
「むふー。それはせっしゃの“ゆにーくすきる”でござる」
「どや顔すな! で、ユニークスキルはどんな物なんだ」
「せっしゃのすきるは【超人】というすきるでござる。三倍の能力を得る代わりに、三倍の食料を必要とするのでござるよ!」
桜はドヤ顔で、そう言った。
「何故それを先に言わない!」
「それを言ったら雇ってくれなかったでござろう」
「「…………………………」」
桜はまたもやドヤ顔で言いきった。ここまで、ドヤ顔を殴りたいと思ったことは人生初めてかもしれない。
桜ユニークスキル
名前【超人LV1】所有者 桜
系統 補助系
メインスキル 『超人』 さまざまな能力が三倍に為るが、食料を三倍必要とする。
サブスキル 『???』
必殺スキル なし




