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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第六章 エンシャル帝国編
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第八十二話 Bランク昇格最終試験! 「俺みたいな常識人……」

二日連続投稿!

 係員に案内してもらい、指定された部屋に俺達は向かう。


「この部屋です」


 係員は扉の前まで案内すると、帰っていった。

 案内された部屋は会議室のようなつくりになっており、すでに全員集まっていた。俺達は空いている椅子に座って試験官を待つ。しばらく待つと扉が開き、試験官が入ってきた。


「全員集まっていますね。では、最終試験の説明を始めます」


 獣耳をピコピコ動かして、試験官は説明を始めた。


「最終試験の内容は現役Bランクとの対戦です!」


 会場はざわざわとした雰囲気に包まれる。


「一対一で戦ってもらいます。勝利すれば昇格し、勝利しなくても光るものがあれば合格です」


 ふむ。勝てば昇格。勝てなくても自分の能力をアピールして認められれば昇格か。


「武器は特に制限しません。殺さない事はもちろん。大きな怪我を負わせない限りどんな道具もユニークスキルも使っていただいて 構いません。


 ……道具を使ってもいい? それだと回復薬とかで復活しながら戦う事も出来るだろ。


 ――それだけの根性があれば良いって事じゃないか? それに、道具をメインに使う冒険者の強みを奪わない為だろう。


 ――なるほど。


「場所は冒険者ギルドの試験場。明日の9時の鐘が鳴るまでに来てください。あなた達がBランクに昇格することを祈っています」


 試験官はそう締めくくり、部屋を出て行った。


「行くか」

「うん」


 俺達は立ち上がる。他の冒険者も立ち上がって部屋を出て行く。その後に続いて俺達も部屋を出る。


 ――勝算はあるか?


 ――まだどんな相手か分からないし、勝てるかは分からん。だけど、勝つ事は出来る。


 ――勝つ事は出来るってどういう事だ?


 ――手段を選ばなければな。まあ、ルール通りやるなら少し厳しいが、冒険者らしく戦えば勝てるだろ。


 ――そうか。どうやって勝つかは聞かないでおこう。


 俺達は試験会場を出て分かれる。俺は道具の買出し。エルはナイフの手入れに工業区に。桜は鍛錬するからと早めに宿に戻った。



 ◇



 今日は晴天。最終試験はそんな日差しのもと行われた。集合場所の試験場は外にあり、かなり大きい。さすが帝都というだけあるだろう。


「さっそく最終試験を始めましょう」


 獣耳試験官はそう言う。


「今日の相手、Bランク冒険者の三人に来ていただきました」


 試験官の横にはただ者ではない雰囲気を放つ三人の男女。


「俺の名前はハルバルド。創炎の異名をもっている」


 一人目は赤い髪の細身の男。一本の剣を腰にさしており、前衛型だと分かる。


「あたしはサヤ。霧雨って呼ばれてるよ」


 二人目は青髪の女。豪華な杖を持っているから魔法使いなのだろう。


「最後は僕ですね。僕の名前はユウラ。基本は魔物を専門に狩っています」


 最後は緑色の髪をした背の低い男。身軽な格好から、エルと似たような戦い方をするんだと思う。


「役割はバラバラでお呼びしました。あなた達にはこれから戦ってもらいますが、戦う相手はクジ引きで決めます」


 最後に運も試す気か。確かに冒険者には運も大切だ。


「では、クジを引いてください」


 試験官はクジの箱を置く。

 正直あの霧雨って人とは当たりたくないな。名前からしてぜったいに水魔法を使ってきそうだし、相性がすこぶる悪い。なんてったって爆虫は水に弱いからな。


「どうぞ」


 俺の順番が回ってきたので、クジを引く。中を開けると、創炎と書かれていた。


 ――この中で一番相性がいいんじゃないか?


 ――だな。


 エルは青の人。桜は緑の人とそれぞれ当たった。


「では、試験番号順にこの試合場で戦ってください」


 試験番号12番の男が、最初に試合場に立つ。相手は緑の人だ。


「さあ、かかってきな」


 そして試合が始まった。



 ◇



 それはほぼ一方的な試合だった。12番さんの攻撃は緑の人に当たらず、逆に攻撃はすべて当たる。12番さんは失格となり、その後もほぼ同じだった。しかし……。


「134番番合格!」


 大剣を使う小人ドワーフは赤の人を倒して、合格した。戦い方はいたってシンプル。先手必勝それだけだ。開始と同時に攻撃し、みごと合格した。


 いままでの戦闘を見てて分かったことがある。それは、最後の人は有利だという事。最後は疲労が蓄積していくので、相手のBランク冒険者達は疲れている。もちろん休憩はとっているし、回復薬で体力などは回復しているが、見えない疲労というものはある。


「次、267番!」


 待っていると俺の番が回ってくる。指示通り試合場に立つ。試合場は魔道具で結界を張ってあるから外に攻撃が行く事はない。


「お前が挑戦者か?」

「ああ」

「見た限り魔法を使う後衛型。いや、杖などは持ってないから、召喚系で召喚する召喚士か?」


 うーむ。当たってる。


「では、試合を開始します」

「準備OKだ」

「こっちも」

「それでは、試合開始!」


 試験官のその言葉と同時に、戦闘が始まる。俺はまず爆虫の図鑑を召喚して、小型の爆虫を10匹召喚する。


「そっちがしょっぱなからユニークスキルを出してくるなら俺もだ! 『火の化身』」


 赤の人がユニークスキルを使うと、からだが火に包まれる。しかし、このタイプの火使いは俺のとくいといってもいいだろう。


「爆虫突っ込め!」


 爆虫に指示を飛ばし、男に突っ込ませる。


「っ!」


 赤の人はそれを回避しようとするが、遅い。爆虫は火に突っ込み、爆発した。


「ガハ!」


 爆虫の特性として火が点くと主の命令関係なく爆発する弱点が存在する。しかし、相手が火を纏っている場合はこれが長所となる。火が点くと爆発するという事は爆発までの準備が要らないのだ。普通は取り付いて少し準備してから爆発するが、火が点くと一瞬で爆発し、威力も上がる。そんなものを近距離で受けたらたまったものじゃない。


「はあはあ。強いな。だが、もうくらわん! 『火砲』」


 赤の人は両手から火の玉を打ち出してくる。すぐに回避するが、どんどん撃ってくる。


「くっ! これだけは使いたくなかったが!」


 俺は爆虫の図鑑を開き、幻影型を召喚する。


「爆発だ!」


 幻影型は地面に降り立ち爆発の準備をする。


「『火砲』『火砲』『火砲』!」


 しかし、その間に攻撃はどんどん撃ってくる。

 

 ――回避が!


 幻影型が爆発してあたりに霧が撒き散らされるのと、俺に火の玉が当たるのはほぼ同時だった。


 ――大丈夫か!


 俺に火の玉が当たるとマモンが声を上げる。


 ――ああ。なんとかな。


 俺には傷一つついておらず、燃え後すらない。


 ――……そんな手を使ったのか。


 マモンも俺の心を読んで驚く。そう、俺は昨日買った使い捨ての魔道具。防御のブローチで防いだのだ。この魔道具の効果は単純。攻撃を防ぐ、ただそれだけ。どれだけの攻撃を防げるかは作った者の腕で変わるので、俺は良いやつを買っておいた。かなりの出費だったがBランクになれるチャンスを逃すといやなのでこれも必要経費だ。


 ――まあ、道具で防いだが、これでお前の勝ちだな。


 ――ああ。この霧を撒き散らしてから相手が倒れた音がしたから間違いない。


 この幻影型は相手に幻影を見せる霧を撒き散らす爆虫。精神攻撃に耐性がないとこれをくらって終わりだ。赤の人は明らかに精神攻撃に耐性なさそうだったし最初からこれ使っておけばよかったかな?


 霧が晴れたころには、赤の人は倒れており、俺の合格が決まった。


「バベル君やったね!」


 俺の合格が決まるとエルと桜がやってくる。


「まあ、相性は良かったし道具も使ったからな」

「それでもすごいでござるよ」

「まあな。お! 呼んでるぞ」


 桜を呼ぶ声がしたので、桜は試合場に走っていった。

 その後、エルと桜も無事お相手のBランク冒険者をボコボコにして、合格が決まった。


「これで最終試験は終了です!」


 試験官の言葉に、失格した10名は暗い雰囲気を漂わせている。結局合格したのは小人ドワーフの人と俺、エル、桜の四人だけだった。


「合格した134番、267番、268番、269番は後日ある説明会に出席してください。そこでBランクのカードを受け渡します!」


 試験官はそう言って試合場を後にした。俺達もぞろぞろとギルドを出る。


「みんなで受かって良かったね」


 ギルドを出るとエルが話しかけてくる。


「ああ。大変だったけどな」

「だけど楽しかったでござる」


 桜も楽しそうにニコニコする。


「バベル君。桜ちゃん。こんな話知ってる? 高ランク冒険者はまともなものではなれないっていう」

「ああ。聞いたことある。試験に合格して、その後死ぬ者のじつに6割がまともな者で、頭のネジが外れてたり性格が個性的だったりするものは生き残るって話だろ?」

「うん。Bランク以上はみんなどこかおかしいんだ。みんなまともじゃない。普通人でもBランクになると変になるって話だし」


 うーむ。俺みたいな常識人は死ぬっていうジンクスだろ。あくまで噂レベルだし。


 ――バベル君。バベル君。君は本当に自分が常識人だと思ってるのか?


 変な口調になったマモンが聞いてくる。


 ――なにを言ってるんだ。俺なんて少し守銭奴で少しえげつない以外は普通の村人と変わらないだろ。


 ――はっあー。


 マモンが大きなため息をつく。


 ――まったく。お前は。


 ――まあ、俺も普通と違うとは少し思ってるけど、まだ常識の範囲内だろ。


 ――なーにを言ってるんだ君は。


 最後のマモンのあきれ声はずっと聞こえていた。

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