第六十三話 無人島そのしっくす!
「……なんでここに居るんだ?」
気づいたら、俺は俺の精神世界に居た。
「それは、お前が血反吐を吐いて倒れたからだ」
いつの間にか目の前に立っていたマモンがそう言う。
「血反吐を吐いた?」
「ああ」
たしか、爆虫王を召喚した瞬間目の前が真っ暗になった気がする。
「そう、おまえが倒れたのは、瞬間魔力大量消費症状だ」
名前なっが!
「爆虫王の召喚魔力が、多すぎたんだ。お前のもってる魔力が、今500ぐらいか? それを越えて魔力を大量に消費したから、お前は死にかけた。青の炎がなければ死んでたぞ」
マモンは胸の前で手を組んで、説教をしてくる。
「それはお世話かけました」
「はあ、もう怪しい召喚はするなよ! 今回は私が治してやったが、今度は無理だ」
無理? どういう事だ?
「治療したから、もう大丈夫だ。さっさと行ってこい。まあ、しばらくは、動けないほどの怪我をしているからな」
「え! 青の炎で治療したんじゃ……」
「それ以上治療すると、くろまめ達のスタミナ回復様の炎がなくなるぞ」
マジか-。じゃあ、仕方ないな。
「ほれ、さっさと行け」
「おう。そうだ。マモンありがとな」
「フンッ。私がかってにしただけだ」
マモンのその声が聞こえると同時に、俺の意識は浮上していった。
◇
「痛っ!」
目覚め最初に感じたのは、グチャグチャになった体の痛みだ。
「にゃー。目覚めたにゃ?」
目の前にはニャルカの顔が見える。
「ニャルカ?」
身を起こすと、小屋の中で寝かされていた事が分かる。
「俺が倒れてどれぐらい経った?」
「3時間ぐらいかにゃ?」
3時間か。もう昼になる。
「エルと桜は?」
「バベルが落ち着いた所で、荷物をまとめたり、旅立つ為の準備にいったにゃ」
「そうか」
俺は傷む体を起こして、小屋を見渡す。俺の横ではニャルカが本を開いており、特に変わった所はない。
しばらく体を起こしていると、小屋のドアが開く音がした。
「バベル殿-。大丈夫でござるかー」
ドアを開けて入って来たのは、桜だった。
「桜か?」
「バベル殿。起きたのでござるな」
桜は俺に向かって飛んでくる。
「ああ。なんとかな」
「大丈夫でござるか?」
「だいじょばない」
「じゃあ、しばらく休まないと」
桜がアワアワしながら言ってくる。
「いや。島は出るぞ」
「いいのかにゃ? さっきメッチャ痛そうにしてたけど」
「え! それは大変でござる」
「確かにメッチャ痛いが、一日二日で治る怪我じゃない。治るまで待ってたら数ヶ月はかかるぞ」
ずっと島にいるぐらいなら、無理をしてでもエンシャル帝国まで行って、回復効果をもつユニークスキル持ちか、回復魔法士に頼んだほうがいい。
俺はその旨を桜に伝える。
「そうでござるか。……エル殿もそろそろ帰ってくるし、バベル殿がいいなら行くでござる」
桜もしぶしぶながら納得したので、俺は今日出発する事になった。
◇
「バベル君。本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だ。問題ない」
あのすぐ後、エルが帰って来たので、俺は出発する事を伝えると、そう言ってくる。正直メチャクチャ痛いが、赤の炎で体の内側を強化しているので、なんとかなっている。
「はあ。そう言ったバベル君は金でしか動かないからね」
よく分かっている。
――おお。守銭奴守銭奴。
――褒め言葉ですね分かります。
――褒めてない!
「もう準備は出来たし、行くでござるよ」
「じゃあ、桜ちゃん。バベル君を運んで」
「もちろんでござる」
桜は俺をお姫様抱っこをする。
「あまり痛くない」
抱かれた時に振動があまりなかったし、俺が痛くないように抱いてくれる。
「バベル殿も上手いでござるよ」
「そうか?」
桜を抱っこしたのは、コボルトキング討伐のときだけだけどな。
「じゃあ、動くでござる」
桜は小屋のドアを開けて、外に出る。
「え!?」
小屋の外に出ると。目の前に壁があった。
「これは……爆虫?」
「バベル殿が倒れた後に、のこったでござる」
爆虫王はちゃんと召喚されていたのか。
爆虫王の大きさは3mほど。色は黒と茶色の中間みたいな感じだ。
「この大きさなら寝る事も出来るし、エル殿と相談してこの爆虫に乗ろうと言っていたのでござる。バベル殿いいでござるか?」
「ああ、いいぞ。……うーん。なんか変だな?」
「変?」
なんだろう。この爆虫王はなんか変だ。不完全というか……。
「バベル殿?」
考えていると、桜が覗き込んでくきた。
「おお。なんでもない」
「そうでござるか」
「それより。名前は……“爆虫戦艦三号突撃船でかぽん”にしよう」
――また変な名前を……。
マモンも名前をディスってくるし、桜も『またか』といったような表情をする。
「もう何もいわないでござる」
「それは結構。この大きさだと改造のしがいがあるな」
「くろまめのあの装備といい。バベル殿って地味にあんな感じの得意でござるな」
「まあな」
「じゃ、準備をするでござる」
桜は俺をデカポンの上に寝かせて、小屋に戻る。
――うう。痛い。
デカポンの上は丸くなっているので、痛みが体中をかけまわる。
――青の炎で治療するか?
――飛べなくなる可能性があるんだろ?
――そうだな。途中島があれば休めるがそう都合よくいく可能性も低いし、この爆虫も魔力を大量にくいそうだな。
――ああ。維持魔力だけでかなりかかりそうだ。
爆虫には維持魔力というものが存在し、召喚しっぱなしだと一日一回維持魔力がかかる。大型になるほど高いので、俺は小型を数匹召喚するだけにとどまっている。
――ま、私には関係ない。お前はただの宿主だからな。
そうかな? 俺はお前との距離が縮まっている気するぞ。
◇
「うん。海風が気持ちいいね」
「思えばいろいろな体験をしたでござる」
でかぽんに乗り、海から無人島を見ている。
「そういえば、あの小屋を残したままでござるが、いいんでござろうか?」
「ま、いいんじゃないか? いたた」
「大丈夫? エンシャル帝国についたらすぐに回復魔法士に頼まないとね」
「そうでござるな」
エンシャル帝国は隣国だし、指名手配が他国にも回っている可能性があるが、まあ、今はいいや。もしものための準備も後でしておこう。
「出発にゃー。ゴーゴー」
ニャルカはでかぽんの上でふんぞり返って叫ぶ。
「さて。いこうか」
「そうだな」
こうして、俺たちは名もない島を後にした。思えばいろいろあった。イレギュラーに遭遇したり、爆虫王を召喚して死にかけたり……あれ? 変なことしか起こっていない気がする。まあいいや。だれかが『想定がーい!』と、叫んでいる気がするが……。
作者「想定がーい!」




