第百二十一話 悪者達の会議
――ガルハ王国のとある洞窟。
そこには、三人の人間が集まっていた。
「さて、作戦会議を始めるか」
そう言ったのはピアスを付け、髪を金色に染めた男。
「それがいいぜ。なあ、婆さん」
もう一人のメンバーの老婆に向かってそう言ったのは不気味な男。
「だれが婆さんだい。あたしゃまだ60だよ」
「充分婆さんじゃねえか」
「……戦争でもしたいのかい」
婆さんと呼ばれた女性の肩にはいつのまにかカラスが留まっていて、あたりには大小様々なカラスが召喚された。
「おいおい。冗談だ」
「……今回は許してやろう。これにこりたら女性に年齢の事を言わないことだね」
婆さんはカラスを送還すると、鼻を鳴らして金髪の男を向く。
「じゃあ、仕切り直して、魔法都市マルカーニャを緒とす会議を始めよう」
この場を取り仕切る金髪の男が、物騒な事を言い出した。
「別に、普通に襲って制圧すればいいだろう」
「なに言ってんだい。村規模じゃなくて大国の都市を襲うんだよ。一筋縄じゃいかないだろ」
不気味な男にたいし老婆は最もな意見を述べる。ガルハ王国は世界屈指の国土と軍事力を持つ国だ。とくに魔法に特化した部隊。魔法戦士隊は世界でもトップ集団があつまる部隊である。
「そうだね。だけど、今は国の軍は居ない」
「……どういう事だい?」
「王都と国境を守る最低限の兵を残して、全軍が賢者の遺跡の攻略にのりだしている」
「「!?」」
場を取り仕切る男の言葉に婆さんともう一人の不気味な男が驚く。それはそうだろう。数百年前までは二つ名持ちに国の軍が挑む事はあったが、二つ名持ちの強さが知られて以降は命知らずや英雄志望の若者が死にに行く位だ。
「そりゃまたなんでなんだい?」
「どうやら国は賢者の遺跡に眠る財宝を求めているようだ」
「財宝ねえ」
「風邪の噂によると、ガルハ王国の姫が病に伏して、その病気を治す薬が賢者の遺跡にあるという事で行くらしい」
「なるほど」
ガルハ王国の姫といえば、神の寵愛を受けた美姫とも言われるほどだ。盲目的な信者も多数居るらしい。もちろん王も溺愛しており、そのような姫が病に伏したとなれば軍が動くのも理解は出来る。
「じゃあ、軍は心配ないわけだね?」
「ああ」
「じゃあ、普通に襲おうぜー」
「駄目だ」
軽く襲おうと言う不気味な男にたいし、場を取り仕切る金髪の男はストップをかける。
「なぜだ?」
「軍は心配ない。最低限の兵なんて敵じゃないからね。しかし、ガルハのSランク冒険者“砂漠戦士”リンドウ。彼は軍に同行せず、国を練り歩いている」
砂漠戦士ことリンドウは、ガルハ王国のSランク冒険者だ。エルフとドワーフのハーフという珍しい種族であるリンドウは、世界でも屈指の腕を持つ。その力は単独で小国を落とせるという噂だ。
「それに、部下から国境の近くで“戦神”を見かけたという報告も上がっている」
「……そうか。……だが、襲う事を辞める訳じゃねえよなぁ?」
「もちろんだ」
不気味な男の言葉に、金髪の男は力強くうなずく。
「じゃあ、戦力の確認でもしようか。絶影法団はどれぐらい動く?」
男に向かって、六大盗賊団の一つの名前を言う。
「あー。幹部が三人。あと下っ端どもが200人ほど」
「あたしゃんとこは人数が少ないからね。幹部一名に兵が50ほど」
「なるほど。僕の所も福団長の奴に部下が300名ほど」
場を取り仕切る金髪の男は、人数を聞き、頭の中で作戦を組み立て始める。
「うん。リンドウが来なければ充分いけるね。あそこはAランク冒険者が一名に。魔法を研究している引き籠もりしかいないから」
「リンドウが来たらどうするんだい?」
老婆はもっとも重要なリンドウ対策をしない金髪の男にたいし、そう言う。
「そりゃリンドウが来たら終わりさ。僕達は、それぐらいの覚悟でやるんだ。せいぜいリンドウが来ない事をいのんだね」
無茶苦茶。都市を一つ落とすという男の発言にしてはあまりにももろい作戦。リンドウという一番の脅威を無視するという。
「……そうかい。じゃあ、もういいかい? あたしゃも忙しいから、決行する日になったら呼んどくれ」
老婆はあまりに穴だらけな金髪の男の発言に異議する事なく立ち上がる。
「もう結構だ。じゃあ、国に喧嘩を売る事にしようか」
六大盗賊団。“百匹のカラス”“死霊団”“絶影法団”は結託してガルハ王国に喧嘩を売る。それは、最悪の事件の始まりだった。




