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爆虫の召喚士  作者: 天野 雪人
第七章 清牙帝国編
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第百八話 ニャルカ、Bランク試験を受けるの巻

 秋真っ盛りのこの季節。あの化け物屋敷との対決後、鈴玉リンユーさんから討伐賞金を丸々貰い、働かなくても良くなったので、宿の部屋でゴロゴロしている。そんなゴロゴロしている時に、ニャルカが口を開いた。


「にゃあ、バベル。我、Bランク試験を受ける事ににゃったんだけど」

「……マジで?」

「マジにゃ」


 唐突にそう言ったニャルカは、とくに気負う事なくサラりと言う。

 ニャルカの強さはよく分からないと言うしかない。弱いと思っていたけど、この前はミノタウロスをなぜか一撃で倒せたし、強いと思ったらこの前ゴブリンの子供に一撃でやられていたし……。


「勝算は?」

「我は最強だから人間ごときが作ったチャチな試験は簡単にゃ」


 こいつ舐めくさっとる。Bランク試験を舐めていやがる。しかし、筆記試験は今から詰め込めばいいとして、問題は戦闘力を計る試験だよな。


「あのミノタウロスを倒したときの力は?」


 そう聞くと、ニャルカは露骨に嫌な顔をする。結局、あの力の正体は教えてくれなかったし、聞いたら嫌な顔をするし、訳が分からない。


「我はあんな力に頼にゃい!」


 うーむ。しかし、どうするか……。俺だけで考えてもしかたないな。


「よし、今夜会議をするぞ!」


 ニャルカを昇格させる為に、今夜会議を開くことにした。



 ◇



 ――その夜。


「集まったな」


 あの後帰って来たエルと桜と一緒にご飯を食べ、部屋に集まっていた。


「じゃあ、第一回ニャルカをBランク冒険者にしよう会議を始める」


 小さく拍手がなり、会議が始まった。


「まずは筆記試験だよね」

「それについては俺が詰め込もう」


 どんな問題が出るかは分からないが、俺の時出た問題から粗方予想は出来る。


 ――私も協力しよう。


 ――それは助かる。


 筆記については俺がやると決まり、次は戦闘。


「一番の難関はBランクの魔物を一体一人で討伐だけど……」


 一斉にボーっと聞いているニャルカを見る。が、あんな猫にBランクの魔物を討伐出来るのか? いや、必殺スキルを使えばニャルカでもいけるか。


「エル、ここらへんに二足歩行でBランクの魔物は居るか?」

「んー。うん。オーガジェネラルが歩いて二日ほどの森に居たはず」


 試験では、討伐を手伝うのは駄目だが、場所までの送り迎えは良かったはず。


「でかぽんに乗ればすぐだな。後は現役Bランク冒険者との戦いか……必殺スキルが通用すればいけるか」


 しかし、必殺スキルは魔力を使って仕様する。魔力が少ないニャルカだとBランク冒険者を10秒支配出来るかどうか。


「確かに、人を支配するのは難しいにゃ。だけど、我なら出来る」


 その根拠のない自信はどこからくるんだ。


 ――戦闘訓練しかあるまい。


 ――しかし、ニャルカだぞ。何を鍛えればいいんだ。


 魔力を鍛えても雀の涙だし、力なんて鍛えてもあの子猫パンチが猫パンチになるだけ。


「あ、そういえば、この前ユニークスキルのLVが上がっただろ。どうなんだ?」

「ほれにゃ」


 ベッドの上でボーっとしていたニャルカは、こちらにギルドカードを渡してくる。この前、化け物屋敷との戦闘で上がったLVを確かめる為だ。俺もLVが上がって、新たな爆虫が追加されたし、ニャルカもなにか追加されているんじゃないだろうか。

 確かめてみると。一つだけ知らないスキルが載っていた。


「『強化波動』?」


 名前は強化波動。それは、味方の能力を強化するというもの。ただし自分には効果がない。


「駄目じゃん」


 自分を強化出来ないようじゃ、意味が無い。


「訓練だな」

「それしかないでござる」


 ニャルカの訓練は、今から始まった。



 ◇



 それからは怒濤の日々が過ぎていった。あれから一週間後に筆記試験。詰め込むだけ詰め込んで、試験会場に放り込んだニャルカは、無事合格した。帰りは頭からポロポロ数字とかが出ていたから、もう覚えていないだろう。


 次の試験、Bランクの魔物討伐は、必殺スキルを上手く使って無事合格。そして、今日は最終試験だ。


「最終試験は見れるんだよね」

「ああ。訓練場でやるから、俺達も見られるはずだ」


 なぜか桜は居なくなっていたが、居ないならどこかに出かけたのだろう。今日はエルと二人だけだ。ニャルカはすでに行っているので、俺達も追いかける。


 ギルドに入り、訓練場への扉を開く。ここの訓練場も外で、可成り大きい。その訓練場の一画には十数名の冒険者。そして、それをベテラン風の冒険者や、見るからに初心者といった冒険者が取り囲んでいた。


「もう始まりそうだよ」


 俺達も取り囲んでいる冒険者達の輪に入り、試験を見守る。マニュアル通りの宣言をした試験官らしき森人エルフは、声を張り上げ、Bランク冒険者を呼んだ。


 ギルドから出てきたの三人の男女。大盾を背負った小人ドワーフの男と、杖を持つ魚人の男。そして、着物を着、腰に刀を差した桜……。


「なあ、エル。なぜ桜が居るんだ?」

「分かんない。試験官として呼ばれたのかな?」


 なぜか一緒に出てきた桜は、試験官らしい。なんか前にも似たようなことがあった気がする。


「では、クジを引いて下さい」


 前と同じように、クジを引き、戦う相手を決める。ニャルカは係員さんにクジ箱を下ろしてもらって、クジを引いた。ニャルカがそれを開くと、少し驚愕したような顔をし、桜を見た。


「どうやら、ニャルカの相手は桜ちゃんみたいだね」

「そうなのか」


 ニャルカは桜に勝てるのか……。ニャルカのユニークスキルは、人の支配が難しい。桜は一見なにも考えていない頭お花畑なアホに見えるが、結構いろいろ考えている。……はずだ。精神耐性も高いし、ニャルカだと難しいかな。


 ――しかし、必ずしも勝つ必要はないだろう。


 ――そうだな。なにか可能性を見せれば合格はするだろう。


 ニャルカの可能性か……。


「「「うおぉぉぉぉお!!」」」


 一回戦、魚人族対挑戦者は、魚人族の勝利。どうやら野次馬達は賭けをしていたようで、床で泣き崩れているやつが居る。


「次、ニャルカ選手」


 次の試合はニャルカ。いつも通り傲慢な表情で、試合場に上がる。試合場には桜が待ち構えている。そして、なにかいつもと雰囲気が違う。


「我が最強。お前の夢は最強らしいが、我より弱い」


 その根拠のない自信は本当にどこからくるんだ。


「……猫の戯れ言と思い、聞き流していましたが、ここで力を見せておきます」


 どうやら、桜は本気モードになったらしい。このまじめ口調はそうだ。


「にゃっはっは。愚民が! 我が波動の前には無力と思い知らせてやる」

「試合開始!」


 その瞬間、桜からとてつもない殺気を感じた。

 圧倒的な殺気。死を明確にイメージしてしまう殺気は、すべてニャルカへと向けられていた。

 周りに漏れている殺気だけで、さっきまで騒いでいた野次馬が静まりかえり、試験官も冷や汗をかいている。痛いほどの静寂だ。


「……にゃ、あ……」


 ニャルカはさっきの自信はどこへいったのか。今は、ガタガタ震えている。


「どうしたんですか? もう、お終いですか」


 居合いの構えをしながら、殺気を放つ桜は、そう言う。


「……にゃめるにゃー!」


 ニャルカは震えながらそう叫び、桜に向かって飛びかかった。



 ◇



「にゃは。どうにゃ。我はBランクになったにゃ」


 あの後、結局ニャルカは負けた。しかし、あの殺気の中動いた事が試験官の目に留まり、なんやかんやあって無事ニャルカはBランクに昇格した。


「さすがニャルカでござるな」

「にゃっは~。もっと褒めるにゃ!」


 ベッドの上では、ニャルカと桜が一緒に座っていた。あの殺気の中で桜に飛びかかったニャルカは、桜も認めた。ニャルカと桜はいっそう仲が良くなったようだ。


 ――ふむ。これで一件落着か?


 ――そうだな。


 俺達の冒険は、一つのハードルを越えた。


 はい。これで第七章終了です。当初の予定では第七章は全六話ほどで、化け物屋敷との戦いもあまり長くなる予定ではなかったのですが、いつのまにか二倍の長さになっていました。

 さて、第八章は少しお待ち下さい。合間に、番外編を一本投稿予定です。

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