ストーカーのいる日常ー6
すさまじく遅れました。
すいません。年末年始は凄く忙しいのですよ(遠い目
「あまりにも帰りが遅いです」
「そうにゃね」
「遅すぎます」
「そうにゃね」
「ねここさん聞いていますか?」
「そうにゃね」
屋上のベンチに腰掛け脱力したねここさんはどうでもいいと言ったように返事をしていました。
御主人様の事であると言うのに、この躾足らずの野良猫は。
今度はもっと強くお仕置きしてあげることにしましょう。
ああ、私の至福の時間である御主人様との昼餉が……
竜胆涼香、女狐め……許すまじ……
え、何故?何故私はあの女の名前を知っている?
まさかあの女ーー
次の瞬間、私は駆け出していました。
御主人様の貞操が危ない!!!!
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。
色褪せた記憶は明確ではないにしろ、子供の恋と言うのは憶えているものだ。
あの時は、無責任にも誰彼構わず『好き』と言ったものだ。
竜胆涼香。ああ、そうか。
彼女はずっと俺を好きでいてくれたのか。
涼香ちゃんはずっとーー
「恵くん、大好き」
耳元で囁かれる。
その声は記憶の中にある物となんら変わりない。
「恵くん、ごめんね。でも私はーー」
次の言葉は、何かで唇を塞がれたように出なかった。
と、同時に、全ての感覚が俺の元に戻った。
唇に何か柔らかいものが触れる感触。
制服越しに触れる、ムッチリとした柔らかい感触。
鼻腔をくすぐる甘い匂い。
そして、極め付けは眼前に広がる目を閉じ、赤らんだ、艶麗な顔。
これはまさかーー
だが、彼女がーー涼香ちゃんが俺にキスをしているとわかったところで、俺は一人の男なのだ。
こんな美少女が自ら望んでーーそれに凄く幸せそうな顔でーーしている今、俺に何ができようか?
それに、こちらも驚きすぎて、何もアクションを起こせない。
「御主人様!!!!大丈夫でーー」
扉が粉微塵に吹き飛ぶと、そこには奈緒が立っていた。
ーー顔面蒼白、この状況に絶句したという状況で。
あ、俺、死んだ。




