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プロローグ

「そんな、駄目だよ…」


目の前に広がる異様なる光景に俺は顔を背けながら言った。


今何が起こっているかというと……


目の前には頬をほんのりと艶色に上気させたメイドが俺の服を脱がしにかかっている。


奈央(なお)……」

「安心して下さいませ、ご主人様。私に全てを委ねて頂けませんか?」


俺の専属メイドーー奈央の上目遣いの甘くとろけるような言葉に俺は自制できるわけもなく、コクリと頷いた。するとスルスルと服を脱がしていく。やはり、メイドの性分であるからか手慣れている。


俺の服を綺麗さっぱり脱がせると今度は奈央が服を脱ぎ始めた。

まず、メイドの制服のリボンに手を掛け、スルスルとそれを解くと緩んだ胸元が顕となる。


俺は目が離せなかった。


屈んだりした時に大きいとは思っていたけれどもここまでしっかりと見るのは初めてだった。


『…ゅ……ま……』


五月蝿い、今いいところなのだ。


奈央はボタンに手をかけ外していく。


一個づつゆっくりと。


『ごしゅ……ん…ま!』


後もうちょっとなのだ。


奈央は最後のボタンを外し終えた。


俺の勝ちだ!


「ご主人様!!」


急に眩い光に照らされ、覚醒を促される。

後もう少しだったのに、結局大事なとこは見えず終いだ。


俺は起き上がり、ぶすっとした顔で目の前のメイド姿の少女ーー奈央を見る。


「もう、なんで起こしたんだよ…」


俺はそうぼやくと奈央はシュンとして言った。


「申し訳ございません。ですが…ご主人様が余りにも深い眠りでそのまま逝ってしまうのではないかと不安で不安で……」

「そんな事あるわけないだろ……はああ……」


俺は盛大にため息を吐いた。


すこし離れていた時期もあるが奈央は幼稚園の時から俺に仕えている。


その時からだったが奈央は少し心配性が強い。

そして最近はそれが殊更に強い。

そんな事もあり、俺はしばしばそれに手を焼いているのだ。


「奈央、出て行って」


服を着替える為に俺はそう言うと奈央の雰囲気は豹変した。

その瞳からは光が失われている。


なにか地雷でも踏んだのか?でも服を着替えるのに普通の事だよな。

奈央が怒ったら怖い。それも凄くだ。

だから俺は日々、細心の注意を払って生きているのだが……


「出て行けって……ご主人様はもう(わたくし)が必要ないのですね。もしかして女が出来たのですか?ああ、そうですねそうですね、やっぱり彼女が出来たのですね。優しくてかっこいいご主人様の事です、悪い虫が(たか)るのも無理はないです。ご主人様の慈悲の手に勘違いした雌豚が烏滸がましくもご主人様に手を出した。ご主人様は優しいから断れなかったのですね。そうなんですよね。ご主人様はなにも悪くないのですよ。ただ、悪いのはーー赦されないのはその雌豚の方……相手は誰でしょうか?私が話をつけて参ります。話だけでは済みそうもありませんが大丈夫ですよ。世界を敵に回したって私はご主人様のお側に居ますから。私はずっとご主人様の専属メイドなのですから。安心してください。今すぐにでも私が行って参ります。大丈夫ですよ、落ち着いてください。私たちの生活(へいわ)永遠(とわ)に失われる事はありませんから」


俺がそう逡巡していると奈央は饒舌に途切れる事なく、そして感情の起伏を見せずに言うとニッコリと微笑んだ。それに俺は戦慄を覚える他ない。


だって目が少しも笑っていないだもの。


そしてそのまま一礼すると部屋を出て行こうとした。


「ちょっと待って!ちょっと待って!」


奈央の背中に慌てて声をかける。

するとピタリとその動きが止まり、こちらに振り返った。


「こんな私すらも心配して頂けるなんて…やはりご主人様はお優しい。ですが、安心して下さい。それほど難しい事ではありません。サクッとグサッと直ぐに済みますので」

「サクッと終わらせるのはいいけどグサッとは駄目!奈央!」


そう俺は突っ込みながら奈央の手を掴んだ。


ここは早めに誤解を解かねばまずい事になる。

それだけは避けたい。


「あゝ、ご主人様のお手が私に………この感触、永遠(とわ)に忘れません!」


いえ、忘れて下さい。

咄嗟に手を握ってしまったが、思い返してみればハグはもちろん、手を繋いだこともなかったな…

俺も小っ恥ずかしい感じは否めなく、さっさと誤解を解くことにした。


「出て行って言ったのは服を着替えるからだよ」


おれのその言葉は予想外であったのか奈央は目をパチクリさせている。


こんな顔見たのはいつぶりだろうか。

幼稚園の時が最後であったと思う。最近は事務的になって来ているからな。

時たま、感情に起伏のない声でお世辞を話すし、そんなに俺が嫌いなのか?


「ああ、そ……そうでしたね。取り乱してしまいまして、申し訳ありません。では、失礼いたします」


と、奈央は少しの沈黙の後、顔を耳まで真っ赤にしてアワアワと出て行った。

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