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ラムラッケ!! Dream Christmas  作者: 紫丁香花
8/13

12月24日 火曜日 午前の部

夢を見た。遠い昔にある人から教えて貰った話を。


『良い子には真っ赤な服を着たサンタクロースさんがやって来てプレゼントをくれるんだよ』


『サンタクロース?プレゼント?』


『ーーは何が欲しい?』


『ーーーの持ってるそれが良い』


『これ?じゃあサンタクロースさんに言っておくね』


それから数日後、彼女から貰ったそのプレゼント…永久なる別れに貰ったプレゼントは今も尚、彼の手元に大切に持っている……。



午前8時半、予科2年3組の教室ではワイワイガヤガヤと騒いでいた。無論他のクラスもそうだが、とは言えまだクリスマスパーティーが始まった訳ではない。始まるのは午前9時からだ。


これから各学年が体育館のあるフロンティア館に移動するわけだ、そしてそろそろその移動する時刻な訳だ。


渓「きっ緊張してきたぜ」


孝之「何にだよ」


渓「いよいよクリパだよクリパ!」


孝之「クリパ?」


薄野「クリスマスパーティー……略してクリパだ!」


渓「はぁ、早く留萌さんのチャイナドレス見てぇ…、ハァハァハァハァ」


孝之「きしょい…」


薄野「其れが定山渓だ」


孝之「そこに住んでる人に謝れ」


渓「何処だよそこ!」


等と馬鹿な事を言い合っていると。


恭子「静かに!そろそろ行きますから!ほら孝之煩い!」


孝之「俺か!?」


夏実「他に誰が居るんですか」


孝之「いるだろ!渓とか渓とか渓とか!」


渓「俺だけかよ!」


恭子「だぁあ!煩い!さっさと行く!」


そう叱咤して予科2年3組一同は開会式が行われるフロンティア館に向かったのだった。











薄暗い体育館の中でスポットライトがあたる体育館のステージ、その上にファクトリア学園理事長である永山マキが開会宣言をする。


マキ「其れでは只今よりファクトリア学園クリスマスパーティーを開催します!合い言葉はーー、Happiness!」


パーンとクラッカーがなる。そしてステージでは吹奏楽部による演奏が始まる。これよりこのステージは演奏会が行われる。吹奏楽部だけではなく軽音楽部や有志達で結成したバンドとか。


しかしながらそれらを見ている時間は孝之達にはなかった。


東神楽「さっ急いで準備するわよ」


「「「「「おー!!」」」」」


ここから熱き戦いが始まるのだった。












西神楽「いらっしゃいませ~!」


東神楽「いらっしゃいませ」


薄野「らっしゃいらっしゃい!」


サンタコス喫茶の予科2年3組は序盤から大盛況だ。カウンターにてケーキを注目し可愛いサンタのコスチュームを着た女子生徒が席に着いたお客様迄ケーキを届ける。ばるんばるんに胸が揺れ動く西神楽の巨乳に男子生徒は目が釘付けになる。それだけではない、東神楽のお尻が見えるんじゃないか位の短いスカートに男子生徒は興奮していた。そして彼女曰く今日もパンツを履いてないらしい。

で薄野はパティシエの格好だった。

渓は外に並ぶお客の列の整理を、そして孝之は……。


孝之(予科2年3組誘惑のサンタクロースopen!)


と書かれたプラカードを持っていた。その姿はあのトナカイの着ぐるみを着た姿だった。

恭子と夏実は午後の部から活動する、そしてあの学園のアイドルも……。


彼女達の売上を離すべく孝之はプラカードを持って校内を歩き回るのだった。














クリスマスパーティーにはファクトリア学園の生徒だけではなく一般人の来校もある。その中でトナカイの着ぐるみハピネスくんがてくてく歩いていく。途中子供達と戯れたりする、そしてふと思う。子供達に俺らのクラスの出し物は少し過激何じゃないかなっと。

校内だけではなく、外も廻る。本校生の玄関とも言える煙突広場、レンガ館西側の広場にもハピネスくんは現れる。

廻っていると思う事がある。


一人で廻るのは寂しいっと、レンガ館西側広場の雪像を廻り終えて中に戻ろうとした時大勢の男達の固まりが行く手を塞いでいた。


孝之『何やってんだ?』


ぴょんぴょん跳ねて見てみると女子生徒四人が絡まれていた。孝之は右手を付きだして即座に浮遊魔法を男子生徒にかける、右手を徐々に上げ浮遊魔法を使って男子生徒を三メートル近く上げる、右手をレンガ館の方に体ごと向け、男子生徒をそのままレンガ館の外壁に押し付けた。


その光景を見ていた女子生徒四人の内一人が声を掛けてきた。


「あっあのありがとうございます」


見知った顔だった。と言うかこなファクトリア学園において彼女を知らない者は居ないだろう。留萌奏はたどたどしくお礼を言ってきた。孝之は其に平然と答えた。


孝之『なーに、気にすん……』


そう言いかけて失敗したぁっと後悔する。ハピネスくんの設定では喋れない事になっていたのに普通に話してしまったのだった。

取り合えずジェスチャーしてみるが奏以外の女子生徒の顔付きが段々と強ばって行く。そしてジェスチャーがめんどくさくなってきた孝之は普通に喋りだした。


孝之『まぁあれだ……よ、困った事があったらハピネスくんに任せろ!…いや違うなお任せ!…あっこれで行こう』


巴「何さっきから支離滅裂な事言ってるの?」


痺れを切らしてか奏の友人の巴が孝之ことハピネスくんに喋りかける。


孝之『いや、最初に無口設定にしてたんだけど喋っちゃったからキャラを変えようかと』


唖然とする三人に対して奏はクスクスと笑っていた。


奏「折角可愛いトナカイさんなんですから、もっと可愛く喋った方が良いですよ」


そのアドバイスは的確だった。


孝之『成る程……、やぁ俺…じゃなくて僕はハピネスくん!ヨロシク!ハハ!』


何処ぞのネズミの王国に居るネズミのように甲高い声で喋るトナカイに四人とも笑いだした。


「その喋り方だとミッチーだよ」


「全くだ」


孝之『違うよ、僕はハピネスくん!』


奏「ハピネスくんは何処からきたの?」


孝之『フィンランドからだよ、今日はファクトリアのクリスマスパーティーだからお手伝いしに来たんだよ』


巴「ほー、予科2年3組ねぇ」


孝之が持っていたプラカードを見て言う巴。


「予科2年3組って誰居たっけ?」


奏「ほら千歳くんが居るクラス」


千歳くんと言われても今一つピンと来てないらしく、巴が他の面子の名を挙げる。


巴「薄野くんと羅臼さんが居るクラス」


「あー、成る程な」


巴「にしても一番分かりやすい薄野くんと羅臼さんを先に出さないとは……」


「奏ちゃん可愛い」


奏「いや!あの!こっこれには訳があって!」


慌てふためく奏、今話しているのがその千歳くんだと知ったら彼女はどう思うか。


巴「後で行ってみる?」


「そうだな、奏がぞっこんの相手を見てみたいし」


奏「ふえっ!ちよっちょっと霧恵!」


「私も見たいなぁ」


奏「薙まで!?」


霧恵、薙と呼ばれた女子生徒にからかわれる奏、中々面白い。


巴「因みに千歳くんて今何処?」


目の前とは言えない。


孝之『さぁ、彼も色々宣伝してるからねぇ、何処に居るかーー』


分からないっと言いかけた時、不気味な笑い声が聞こえた後、悲鳴が聞こえた。

漆黒の衣装を纏い、不気味な仮面を着けた彼奴が現れていた。そうブラックサンタだ。

ブラックサンタは雪像のサンタクロースに黒い液体をぶっかけた。


ブラックサンタA「キシシシシ」


不気味な笑い声を出しその場から逃げ去ろうとするが。


孝之『逃がすか!』


トナカイが迎撃する。自身に浮遊魔法をかけ飛び上がりブラックサンタ目掛けて落下する。


孝之『どぉりゃあ!』


ブラックサンタA「キキューン!」


トナカイがブラックサンタを尻で押し潰した。動けなくなったブラックサンタの元に生徒会の人間が駆け寄る。


「そこまでだ!」


「大人しく縄につけ!」


駆け寄る二人の生徒会の頭上に巨大な雪の固まりが襲ってきた。急かさず孝之は右手を付きだし雪の固まりを制止させる。周囲を見回すともう一人ブラックサンタが居たが、直ぐにその場を立ち去って行った。


ブラックサンタを生徒会に預け状況を確認してみる、被害にあったのはサンタクロースの雪像と雪ミクの雪像だけ、雪ミクに関しては二頭身の頭が落下した故首の無い胴体だけの状況になっていた。


このまま悲惨な状態にするわけにもいかない。孝之はこの場をなんとか出来るであろう助っ人を呼び出すのだった。










助っ人を一人呼んだ筈なのに来たのは四人組だった。勿論そこに助っ人は居るのだが、余計な者が一人いた。


秋穂「いきなり呼び出すとは、孝坊も偉くなったもんだねぇ」


余計な者こと恵庭秋穂がニヤニヤしながら言う。この時孝之は既に諦めモードとなっていた。


孝之『僕は孝之じゃないよハピネスくんだよ』


秋穂「シバくぞ」


孝之『空気読んでよ!はぁ…もういいよ、でもまさか秋ねぇに恭子に夏実迄来るとは…』


夏実「私達四人で廻ってたんですよ、そんな時に兄さんから連絡あって」


孝之『兄さんじゃありませんハピネスくんです!』


夏実「やっ、どうでも良いじゃないですか」


恭子「にしても律儀に着るとはね」


話が大部それてしまった。孝之は本来の話題に戻す。


孝之『実は頼みたい事があるんだよ』


其れは呼び出した冬華に向けて言った。冬華は特に返事もするではなくじっと孝之を見る。孝之は話を続ける。


孝之『壊れた雪像を直して欲しいんだけど』


冬華「無理」


即答だった。


孝之『頼むよ、冬華しか居ないんだよ』


冬華「無理」


再び即答で拒否された。

だがこれには訳があった。


冬華「氷像なら作れる」


雪像は無理でも氷像なら冬華はお手の物だ。


孝之『氷像でも良いから作ってくれ、頼む』


冬華「報酬は」


孝之『俺のクラスのケーキ食べ放題』


秋穂「まじで?やろやろ」


孝之『秋ねぇには頼んでないでしょ!』


冬華「食べ放題四人分」


沈黙する孝之、此処に居る秋穂、冬華、夏実、恭子の分を奢る嵌めになるのか……、しかし、最初から何となくこうなるような気がしていた。


孝之『……分かったよ、宜しく頼む』


冬華「契約成立」


冬華は魔法を使って壊れたサンタクロースと雪ミクの雪像の変わりに氷像を作り出す。一気に周囲の温度が下がっていく。

サンタクロースの雪像があった場所に氷で出来たサンタクロースが作られ、雪ミクも作られたのだが雪ミクだけ二頭身から等身大へと変わっていった。

これを見て恭子はふと思った。


恭子「私達が作るまでもなかったんじゃない?」


その問いに誰も答えはしなかったが同乗する。


秋穂「さぁて、ケーキ食べに行くか!」


嬉しそうに言う秋穂、夏実や恭子もうっすら笑みを浮かべている。冬華はいつも通り表情が変わることはなかった。

孝之独りだけが落ち込んでいたのだった。


四人の美女を連れたトナカイの後ろ姿を見て奏達も。


奏「2組……行く?」


巴「行きたいんでしょ」


奏「う…うん」


コクりと頷く奏を見て三人は仕方ないと笑みを浮かべた。


薙「それじゃあ2組にレッツーー」


ゴー!と言いかけた時、連絡が着た。


お客が来ない!


この連絡を受けた奏は残念そうに自分達のクラスに戻っていった。










秋穂「あっ旨いじゃん!」


冬華「美味」


恭子「自分のクラスで自分達の出し物って…」


夏実「何か複雑ですね」


四人掛のテーブル席に座ってケーキを堪能する四人。


西神楽「はいはーい!追加のケーキでーす!」


じゃんじゃん頼む四人、孝之の懐がどんどん寂しくなっていく。


孝之『くそー、彼奴らぁ遠慮無しに頼みやがって……』


薄野「こらこらハピネスくんや、そんな言葉使いだと客が離れるぞ」


孝之『良いよもう、其よりも大部客足が減った気がするんだけど』


薄野「どうやら奴らが動き出したみたいだな」


孝之『奴ら?』


薄野「千歳孝之よ指令だ、昼から予科2年5組に向かってくれ。定山渓を連れていっても構わん」


予科2年5組のチャイナ喫茶、学園のアイドル留萌奏が居るクラスだ。


薄野「チャイナ喫茶がどのようなものか調べてくれ」


薄野の指令を孝之は素直に受け入れたのだった。






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