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ラムラッケ!! Dream Christmas  作者: 紫丁香花
6/13

12月16日 月曜日

月曜日の朝から学園内は騒然としていた。


花梨「どうやら、動き出した見たいですね」


恭子「ええ、そうですね」


生徒会プラス臨時風紀委員の孝之達はアトリウムにある巨大なモニターを見つめて言う。

モニターにはこう書かれていた。


ブラックサンタ降臨






被害状況、予科、本校ほぼ全クラスの出し物に墨汁か何かの黒い液体でブラックサンタ降臨と書かれていた。

レンガ館壁にも同様の被害が、そして本校玄関前広場にある煙突にあるクリスマス限定のサンタのオブジェが黒色姿になっていた。

また一部のクラスにて破壊工作が行われていた。


これらの被害を唯一免れたクラスがひとつだけある。


孝之「普通に考えたら、そのクラスが主犯だって思うけど…」


それだけはない、何故なら主犯が自分のクラスの出し物に墨汁で落書きするほどだ。

其に理由としてはこの考えが一番合っているだろう。


恭子「留萌奏……、彼女が在籍するクラスは何一つ被害が無いわね」


孝之「学園のアイドルってだけで被害無しか、でもこれでひとつ分かったことがある」


雅「何じゃ?」


春音「何が分かったの?」


生徒会室で話し合う一同、僅かな沈黙の後に孝之は答えた。


孝之「犯人は複数、そして主犯の薄野が今回の件にはまだ手を出していない」


花梨「何故そう言えるのですか」


孝之「もし薄野がやるなら留萌奏のクラスも襲撃する。あいつの信条は男女平等、ギブアンドテイクだからです」


恭子「男子生徒は少なからず留萌さんに好意を持ってるから襲わなかった…」


雅「成る程、いくらお遊びでも、好きな女の泣き顔は見たくないか」


孝之「好きな女だけじゃなく、普通に考えたら女の子の泣き顔何て見たくねーだろ。何考えてんだか」


花梨「しかし、このまま被害が拡大するならクリスマスパーティーを中止せざるを得ないですね」


その言葉に孝之は大袈裟に反応した。


孝之「ちょっ、ちょっと待って下さい!いくらなんでもそれは!」


花梨「クリスマスパーティーは学園の出し物です。生徒が好き勝手にやるのも限度があります」


雅「しかしながら、それを中止にするのは勝手ではないかの」


反論したのは雅だった。


雅「其に今此処で中止をするのはノエルの悪夢の思う壺じゃ、其に他の生徒にも可哀想じゃろ」


花梨「平穏無事に事が終わるなら開催すべきだと私は思います」


雅「平穏無事に終わるのはつまらんじゃろ、其に生徒達はこんな事に屈指はしない、我々も同じじゃ」


花梨「学園は生徒だけのものではありません」


雅「生徒が居てこその学園じゃろ」


対立する二人、前々からこの二人の対立は生徒会内では有名である。生徒会内、教師陣から支持される花梨に対して生徒に支持される雅、二人とも其々の主張があるのだ。


この主張を纏めるのは彼女の仕事だ。


由香「では~、先ずは~今後の~ノエルの悪夢の~対処~と~、対策を~たてましょう~、クリスマス~パーティーは~、余程の~事~が無い限りは~開催します~」


花梨「会長!」


由香「クリスマスパーティーは~楽しい~イベントですよ~、中止するのは~悲しいですよ~」


その意見に反論はなかった。かくして生徒会は対薄野攻略戦を考え出すのだった。









墨汁の被害は魔法を使って何とか処理した。がしかし其だけでは意味がない。

先ずは今後被害が出ないようにすることを考える。


墨汁を魔法洗浄液で綺麗に落とす孝之と恭子。


恭子「たく、何で私達がこんなことしなきゃならないのよ!かったるいわね!」


等とぶつくさ文句を言う恭子。孝之は黙々と作業する。

どうすればあの薄野達馬鹿を止められるか、奴等はかなり本気でクリスマスパーティーをぶち壊そうとしている、自分の計画だけでは乗り越えれるのが少し厳しい感じがしてきた。


恭子「ちょっと聞いてる!?」


孝之「ん?あえ!?何が?」


いきなり話しかけられびっくりしてしまった孝之、恭子は孝之が言い訳をする前に言う。


恭子「だーかーらー、どうしたらあの馬鹿を止められるかっ話よ」


孝之「あー、その話しか、俺も考えてはいるんだけどさぁ。まーたく思い付かん」


恭子「目には目を、歯には歯を、馬鹿には馬鹿を何だから少しは考えなさい」


孝之「だから考えて……つか馬鹿とは何だ馬鹿とは!」


恭子「薄野に対して抑止力になると思ったんだけどなー」


孝之「彼奴ほど止めれねーものはねーよ、暴走機関車トーマスだよ」


恭子「薄野の天敵っていないのかしら」


孝之「其れは……恭子だろ」


恭子「いつもゴテゴテになるじゃない。何て言うのかなぁ、薄野にギャフンと言わせたいわ」


ギャフンと言うだろうか。そんな疑問も思う。少なくともブラックサンタ達の動きだけでも止めたい、何故なら実行犯は奴等なのだから、しかし誰がメンバーなのかは分からない。

一人予想つくが、何れにせよその一人を抑えた所で事態が変わることはない。


孝之「薄野を取り抑えて、後から沸いて出てくるブラックサンタを一網打尽にするか…、いやそもそも薄野が捕まる事が不可能だし……」


恭子「何とかして続行しないと……、誰か居ないのかしらねあの馬鹿共を一喝してくれる人は」


孝之「怒ったって無駄だろ」


恭子「じゃあどうするの?生徒が困ってますとかアナウンスする?」


孝之「デモかよ、まぁ放置するわけにもいかんし」


二人してため息をついて頭を悩ませる、そんな二人に誰かが声をかけてきた。


?「あら随分と仲良くため息ついたわね」


?「ため息をすると幸せが逃げちゃうんだよ!」


振り向くとこれまた薄野に並ぶ問題児神楽sがいた。


恭子「べっ別に仲良くなんてっ!」

孝之「いや、ため息つきたくもなるだろ」


二人の反応は全くもって反対だ。恭子は照れたかのように顔を赤くしたのに対して孝之は気だるく答える。


西神楽「何をそんなに悩んでるの?」


当然の疑問をぶつける西神楽に孝之は答えた。


孝之「どうやったらノエルの悪夢を止められるかって話しだよ」


東神楽「あらそんな下らないことを悩んでいたの」


恭子「下らないけど、此方としては大問題なのよ、クリスマスパーティーを無事に開催するのにどうすれば」


東神楽「あら、私はそう言う事を言ってるんじゃないわ」


孝之・恭子「「?」」


二人して首を傾げる。東神楽は突拍子も無いアイディアを二人に授けた。








奏「私がですか!?」


唯一被害の無いクラスの学園のアイドル留萌奏の言うことならブラックサンタだって手出しはしないと言うのが東神楽の考えだ。

無論その考えに反論は無い、東神楽の意見を聞き入れた恭子は直ぐに生徒会に向かいたった今生徒会長と副会長が説得している。


由香「はい~」


花梨「留萌さんなら、この現状を打開出来るかと。残念ながら我々生徒会としても非情に困惑しており、貴女の力が必要なのです」


奏「でっ、でも……、私が言っても落ち着くかどうか」


由香「大丈夫です~」


奏は余り乗り気ではない、正直自分が注意した所で治まる確証はないと思っているし、何より此れを受けてしまえば自分が学園のアイドルだと宣言してるみたいで何だか嫌だった。


巴「大丈夫だって奏」


薙「うん、奏の言うことなら聞くんじゃない?」


霧恵「寧ろ奏以外で何とか出来る奴が居ないだろ」


クラスメイトが賛同してくれるが、今一つ首を縦に振れない。


由香と花梨が説得するなか、孝之と恭子、そして東神楽は廊下からその状況をこっそり覗いていた。


孝之「やりますとは言ってくれないか……」


恭子「責任問題があるからかしら…」


孝之「いや、学生が責任とかは無いだろう」


東神楽「普通に考えたら責任問題は生徒会がとるものね。まっ私が提案したから私に責任がのし掛かるかも、でも私の提案を受理した恭子に責任があるかも」


恭子「何か考えるだけでかったるいわね」


孝之「でも、やってもらわないとな…、土下座すればやってくれるかな?」


恭子「やらないでしょ、そもそも男子のお願い何て聞いてくれるのかしら。毎日うんざりするほど告白されてるから、男性恐怖症とかなってないかしら?」


東神楽「カテゴリー5の権限使えば」


恭子「こんな下らない事で使わないわよ」


東神楽「なら千歳家の力使って説得しなさいよ」


孝之「既に副会長が御家の力使ってるだろ、いや、名前だけしか使ってないか」


恭子「ってこのままじゃ、埒つかないわ」


東神楽「あんた達生徒会なんでしょ、何とかしなさいよ」


孝之「いや、俺生徒会じゃないし」


一方奏達の方は。


花梨「勿論其なりの対価もお支払するつもりです」


由香「ちゃんとボディ~ガ~ド~も~つけますから~」


奏「ボディーガードって…そんな」


「そうです!ボディーガードなら俺達が居ます!」


「必要ありません!」


そう言ってきたのはクラスの男子生徒、彼の後ろからはそうたそうだ!とか頷いていたりしていた。

男子全員が奏に夢中だった。


由香「うちの生徒会にも~、頼れる~ボディーガード~が~いるんですよ~」


花梨「期待のエースですし、其に世界最強です」


そう言って二人して廊下を見る、つられて奏も見ると。


孝之「第一男嫌いなら近づけないだろ」


恭子「あんたなんて然程男感無いんだから問題無いわよ!」


孝之「其れはあれか、男として魅力が無いとか」


恭子「いや、男としての魅力はあるけど…あれよ、変にがっつかないじゃない」


孝之「俺を渓と一緒にすんな!」


恭子「あれは変態中の変態よ」


東神楽「そこの夫婦」


恭子「だっ誰が夫婦よ!」


東神楽「さっきから会長達が見てるわよ」


そして二人は揃って会長の方を見る。


花梨「頼りなさはあると思いますが…」


由香「逸材ですよ~」


最強のボディーガードこと羅臼恭子、カテゴリー5の魔法使いであることはもうこの学園、いや、この世界が知っている。男子生徒達も引かざるを得ない。


花梨「安全面においては完璧です。女性なので変な事をされる心配もありません」


奏としては安全面とかそんなのはどうでもいい訳だが、最早空気的に逃れられなさそうだった。

其に少し引き受けたい気持ちもあった。羅臼恭子と彼の関係性が少し気になったからである。


奏「わかりました、お引き受けします」


奏はうつ向いて言ったのだった。









放送室に向かう恭子、奏、由香、花梨。放送室は三条館にある職員室の横にあり、奏達の教室のある一条館からは少し遠い。連絡通路を渡って本校生のいる二条館を通り越して、更にアトリウムを通り越しての三条館だ。

長い道のりながらも奏はそわそわしながら歩いていた。いつ話しを切り出そう。羅臼さんは千歳くんとどんな関係なんですか?その言葉が中々口から出せない。

そして気がつけば三条館についていたのだった。


して孝之は校内をぶらついていた。恭子達と別れた後、一度教室に戻ってみたのだが奴の姿がなかった。

一体奴は何処に消えたのだろうか、幻術を使って雲隠れしたのか。一瞬恭子達の方に行ったのではないかとおもったが『心配しなくても此方は大丈夫よ』っと恭子が言っていたので多分大丈夫だろう。其に恭子はどうやら薄野の幻術を見破れるようになってきたらしい。


取り合えず孝之は当てもなく校内を歩き回っていた。


孝之「何もしない訳が無いよな」


孝之は意識を薄野に集中させ、奴を探す。









同時刻、放送室に集まった恭子達、放送室には恭子達生徒会役員、奏、そして放送部員2名が。他に人のような気配は感じられない。

何時でも校内放送出来る、マイクのスイッチを入れて奏が話そうとした時だった。


『フハハハハハハ!ハーッハッハッハー』


聞き覚えのある笑い声が校内に響き渡る。


『諸君!今朝の我々の早めのクリスマスプレゼントは如何だったかなぁ~』


恭子は奏を見る、彼女は何が起きたか分からずオロオロしていた。


恭子「直ぐに放送を止めて!」


そう言って放送部員に言う。放送部員は機材のスイッチをオフにするが校内に響き渡る薄野の声が止むことはない。


放送部員「だめです、止まらない」


恭子「何で……まさか幻聴!」


薄野は幻術の使い手、幻影、幻聴などお手の物。恭子は真っ先に孝之に連絡をとる。


恭子「もしもし孝之」


孝之『たく、一体何が起こってんだ。薄野が放送室ジャックでもしたのか?』


この言葉で恭子は確証した、薄野は幻術を使ってない。孝之は魔法を無力化する力を持っている、故に薄野は何らかの方法を使って放送室を無力化した。


恭子「探し出すわ」


そう言って放送のドアを開けようとしたが何故か開かない。

鍵がかかっている、内側から施錠出来るタイプなのだがその鍵が微動だにしない。


恭子「何でよ!」


花梨「どうしました?」


恭子「鍵が!この!」


恭子は右足に魔力をこめ扉を蹴破った。扉は勢いよく外れ外にいた何者かと衝突した。


恭子「あっごめん」


「ごめんじゃねーよ!死ぬわ!」


扉に当たったのは孝之だった。孝之は扉を退けて放送室内に入り辺りを見渡すが奴の姿はなかった。


孝之「一体何処から……」


そう言っていると薄野の奴は更なる仕掛けをしてくる。


薄野『さぁ、我らノエルの悪夢より、クリスマスにぴったりの曲を皆にプレゼントしようではないか!』


そう言って曲が流れてくる。聞き覚えのある曲だ、しかも誰もが聞いたことのある、だがクリスマスにぴったりと言われたら全くもって似合わない。


孝之「ちゃんこちゃんこちゃんこちゃちゃんこちゃん……」


恭子「盆踊りか!」


花梨「季節感ありませんね」


孝之「で彼奴はどっからやってるんだ……」


孝之達三人が頭を悩ましているが、由香だけは何処から仕掛けているのか分かった。


由香「緊急警報室ですかね~」


孝之「何ですかそれ?」


由香「万が一~学園に~不審~者~等が~入ってきて~、尚~且つ~放送室が~使えない~場合~、地下~一階~にある~緊急~警報室に~て~対処する~事に~なって~るんです~」


今一つ頭に入ってこないが花梨にはどうやら伝わったらしい。


花梨「放送室で避難等呼び掛けても伝わらない所がありますが緊急警報室は全ての部屋、廊下、空き教室に至るまで指示が伝わるように出来てます。現にこの放送室にも薄野くんの放送が聞こえてますし」


恭子「それなら話が早いですね。直ちに制圧しに向かいます!」


そう言って放送室を出ていく。


孝之「ちょっと待て恭子、俺もいく!」


そう言って後を追う孝之、恭子は全速力でアトリウム目掛けて走る。孝之もまた恭子を追って走るが、ふとした疑問を抱く。


孝之「てか、緊急警報室って何処だよ!」


その叫び声にも似た大きな声に恭子が走りながら答えた。


恭子「元々は警備室だったらしいわ、でも商業施設から学校に変わる際改造したみたいよ」


そう言って恭子は放送室のある三階からアトリウム目掛けて飛び降りた。孝之もまた浮遊魔法を使って怪我しない様飛び降りる。階段を使うより早い。

アトリウムにあるレンガの階段その下にお手洗いがあり、正面に裏口となる扉がある。

恭子は魔法力を高め右手を開き付きだす。


孝之「ちょっと待て!お前何するつもりだ!」


恭子「こうするのよ!」


手から光輝く光線を放ち扉を破壊した。


孝之「だああああ!何してんの本当に!」


恭子は奥へと進んでいく、左へ右へ曲がり真っ直ぐ突き進み目の前に緊急警報室が見えた。扉を蹴破り中に入り真っ先に放送機器のスイッチをきる。ここまでの時間に一秒もかからない。何故なら自身を光速かし突き進んだのだ。

因みに孝之は此処まで来るのに5~6秒掛かった。


中の様子を見る限り薄野は居ない。

がしかし、恭子は何かを感じ取った。


恭子「人の気配がする……」


孝之「でも薄野はいねーぞ」


その時だった、天井から何が落ちてきた。いや、勢いよく降りてきたと言った方が正しいか。


恭子「きゃっ!」


驚く恭子はバランスを崩しよろけた、それを孝之が後ろから抱き締めた、それを狙ってか降りてきた何かは立ち上がり緊急警報室を飛び出した。


孝之「待ってコラ!」


孝之は何者かを追いかける。アトリウム広場に出ると何者かはエレベーターの方に向かっていた。孝之は周囲にあるテーブルや椅子を浮遊魔法を使って全て浮かし何者か目掛けて投げつけた。

椅子やテーブルは何者かに直撃したかのように見えたが華麗に交わした。テーブルや椅子は無惨にも進路を潰し孝之は追いかけられなくなった。


孝之「あの姿……黒いサンタ……」


姿はまさしくサンタクロースだった、おかしな所と言えば色が黒かったり、顔に髭の生やしたお面をつけていた、目が三日月の様で不気味だった。


孝之「やってくれたじゃねーか、あの野郎」


散らかしたテーブルや椅子を浮遊魔法を使って元に戻す。全てが片付く前に恭子がやって来た。


恭子「あいつは!」


孝之「逃げられた」


恭子「そう……、やってくれるじゃないあの馬鹿」


恭子は悔しそうに呟く、その台詞が先程自分が言った台詞と似てて孝之はふと微笑んでしまった。幸いなのかそれを恭子は見ていなかった。


孝之「まぁ何はともあれ制圧は完了した訳だ。予定通り留萌さんにやってもらうか」


恭子「其れは……酷よね」


二人は飛び上がって放送室に戻った。













放送室にはやや窶れた花梨が、そして困惑した奏の姿が目に写る。


花梨「どうしましょう……」


珍しく花梨が弱気だ。


花梨「あれだけの事をされては、此方で用意した原稿では太刀打ち出来ないかもしれません」


奏はあくまで生徒会が用意した原稿を読み上げるだけだった、内容はごく真面目で至って平凡だ。それでもブラックサンタの勢いは落ちるとは思っていたが、今の騒ぎで皆が混乱している、それを用意した原稿を読み上げる程度で落ち着けるはずがない。かといって由香が何かを発言しようとしても其れは肝心な人達には伝わらない。

奏自身の言葉で伝えるしかない。


その事を奏に伝えるが奏は青い顔をしていた。

無理もない、何をどう言えば良いか分かるわけがない。


だがこの状況を打開出来る術がある。ここは魔法の国、魔法を使えば良いのだ。

孝之は右手を握りしめ唱える。


ラムラッケ……


その言葉が重苦しい放送室に響き渡る、そして不思議とその重苦しいさが軽くなる。皆が孝之を見る。

孝之は右手を開き包装紙にくるんだ茶色い塊を奏に差し出した。


孝之「はい」


奏「え…」


孝之「食べると良いよ、少しは楽になると思うし、其にこういう時は甘いものが欲しくなるしょ」


奏はゆっくりと其れを受け取った。孝之は他の人達にも配る。奏は貰った生キャラメルを口に入れた、優しくも懐かしい幸せな味、心が落ち着く、そして彼女は決意した。


奏「私にやらせて下さい」


花梨達は頷いて再び持ち場に着いた。孝之は壊れた入り口によしかかり奏の放送を聞いた。


奏『みなさんこんにちは、留萌奏です、さっきは凄かったですね、私も凄くびっくりしました。私実はこういうの好きなんです、いつも薄野くん達が馬鹿な事をやって其れを生徒会の人が追っかけて…本当風物詩ですね!でも流石に今朝のはやりすぎだと思います。皆頑張って朝早く、夜遅くまで一生懸命やってるんです、其れをあんな風にするなんて酷いですよ…』


そして一呼吸おいて言う。


奏『ものには限度があると思うんです、人を傷つけるようなやり方は私は嫌いです。ですからもうこんな事は止めてください』


心に響き渡る訴えに花梨も恭子もひと安心した。

と思ったら奏はとんでもない事を言った。


奏『あっでも、だからと言って当日何もやらないのは嫌ですよ、私は誰も傷つかない騒ぎを楽しみにしてます!』


あんぐりと口が開いた花梨と恭子、奏は一同に一礼して放送室を出ていく、その際奏が孝之に話しかけた。


奏「どうでしたか?」


孝之は微笑んで言った。


孝之「最高……、おかげで良い意味での騒動が起こせそうだよ」


奏「私千歳くんが何やるかも楽しみにしてるんですよ」


孝之「期待に応えられるようにするよ」


奏は他にも何か言いたそうだが、何も言わずに一礼して去っていった。

放心状態の花梨と恭子、正気に戻るのは凡そ一時間近くたった後だった。














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