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ラムラッケ!! Dream Christmas  作者: 紫丁香花
5/13

12月12日 木曜日

薄野「時は来た」


6時限目の開始直後、薄野が皆に聞こえるように言った。


孝之「………何が?」


割りと長い沈黙の後に孝之が聞いた。皆の視線が聞けよと言っていた。


薄野「クリスマスパーティー開始まで二週間をきった、そろそろ動いても良い頃であろう」


何だか物騒な物言い、まさか個々でブラックサンタがくるのかと身構えるが、薄野は此方の想定外の事を言ってきた。


薄野「俺達のクラスが何をやるのかを知らしめる必要がある、特にこーんなにも魅力的で稼げる出し物は早々無い、そして我等がクラスが一番を取るために何をすべきか考えてみると、意外にも簡単な答えが出る」


皆呆然と薄野の話しを聞き誰一人相槌しない。

薄野は何も気にせず喋る。


薄野「それは広告だっ!!」


恭子「広告…?」


恭子の小さな呟きに薄野が反応する。


薄野「その通りだ羅臼恭子よ!先ず第一に必要なのは魅力を売り出す事だ、特に我々は苦戦を免れないやもしれん」


西神楽「へ?なんで?」


東神楽「あの衣装なら充分呼び込めそうな気がするけど」


薄野「確かに俺が制作したあの衣装なら充分勝てる可能性がある……がしかーし!あの学園のアイドルを叩きのめせるほど甘くはない」


孝之「学園のアイドル?」


渓「確かに…」


学園のアイドルと言われ納得する男子、孝之は未だに学園のアイドルが誰なのか分からないでいた。


恭子「て言うかあの衣装ってなによ」


恭子の疑問を答えないまま話しを続ける。


薄野「学園のアイドル…、そう留萌奏だ!!」


孝之「あー、何回か見たことあるな」


薄野「これは俺情報だが、留萌奏が在籍する予科二年四組の出し物はチャイニーズカフェだ!」


孝之「何でクリスマスにチャイニーズ…」


薄野「俺調べだとクラスの男子生徒が留萌奏にチャイナドレスを着させたかったかららしい」


「「「「「なっ何だってぇえええええ!!」」」」」


男子生徒全員が驚愕した。


「つつつつつつまりあれか、留萌さんがセクシーなチャイナドレス着て」


「なっ生足が」


ブハーっと皆鼻血を出して倒れていった。


薄野「想像しただけでこの破壊力だ……、ならば今のうちに手をうつしかなかろう」


孝之「手をうつって言っても、具体的に何するんだ?」


薄野「先ずは……ポスター貼りからだ!」


そういって薄野はA3サイズのポスターを取り出した。


薄野「このポスターを学園の目に見える所に貼っていく、予科だけでなく本校、アトリウム、レンガ館、フロンティア全てに貼る!そしてその為には女子生徒諸君の力が必要だ、特に羅臼恭子!恵庭夏実!西神楽!東神楽!貴様等四人の力が必要だ」


そういって四人を見渡す、夏実と恭子は警戒し、神楽sは何処と無くワクワクしていた。


東神楽「其で私達に何をさせようとしてるの?」


微笑して言う東神楽に薄野は勝ち誇ったかのように言った。


薄野「決まっている、宣伝だ……」
















恭子「まぁ確かに宣伝っ大事よね………、だからって何でこの格好よ!!」


神楽s、恭子、夏実はサンタの衣装に着替えさせられた訳だが、その衣装が何ともエロい、お腹を出し殆んど水着に近い格好だ。クリスマス独特のフワフワした物、赤色出なければほぼ水着だろう。

衣装自体ホワホワして暖かそうだが。


恭子「こんな格好して宣伝しろって言うの!?馬鹿じゃないの!!」


薄野「これが売りなのでなぁ、それにデザインは西神楽、東神楽、定山渓が考案した。俺はあくまで其れを造り上げたまでよ」


恭子「何で変態達にやらせるかなぁ…」


西神楽「ちょっとちょっと恭子ちゃん、変態扱いは酷いよ」


そういってぷるんっと胸を揺らす西神楽。


恭子「その体つきが変態なのよ!」


西神楽「いやーん、恭子ちゃん怒ったー」


東神楽「嫉妬よ、胸がないから」


恭子「貴女だって無いでしょ!」


東神楽「私はロリ体型だから」


恭子「しかも衣装違うし」


東神楽だけワンピース型の衣装だった。


夏実「私そっちの方が良いです」


渓「良いじゃねーか!」


夏実「良くないです!」


東神楽「まっ私はその分エロさ半減だけど」


渓「半減処か全く無いだろ」


東神楽「私、今履いてないのよ」


渓「何を?」


東神楽「パンツ」


ドサドサドサ……男子生徒大半が倒れた。渓は股間を抑え両膝立ちしていた。


渓「やっやるじゃねーか、この俺をここまで追い込むとは……」


孝之「やっ過剰に反応しすぎだろ」


一人、いや薄野を除外すれば一人冷静に佇む孝之に神楽sは孝之の股間を見る。


東神楽「勃起しないわね」


渓「ぶほぅふ!」


訳分からない言葉を発して倒れる渓、恭子が冷たい視線をおくる。


西神楽「孝之くん、まさかED!?」


東神楽「待ちなさい神楽、普段から春音先輩に鍛えられてるお陰で私達程度じゃ勃起(たた)ないだけかも」


西神楽「たっ確かに!?」


恭子「いい加減にしなさいよこの変態ども!」


拳骨で神楽sの頭を殴る恭子。


西神楽「あいったーい!」


東神楽「怒られたわね」


夏実「はぁ…、何だか私やってけそうに無いです…」


頭を抱える夏実、孝之はと言うとじっと四人の衣装を見つめていた。


恭子「何よ…」


訝しげに孝之見て言う恭子、孝之は薄野を見て言う、その言い方はとても素だった。


孝之「薄野、俺のは?」


薄野「…………」

恭子「…………」

西神楽「………」

東神楽「………」

夏実「……はぁ」


皆きょとんとした顔で孝之を見る、一名のみため息をついていた。


孝之「いや、だーかーらー、俺の衣装は?」


薄野「…………」

恭子「…………」

西神楽「………」

東神楽「………」


再び沈黙する一同に薄野が答えた。


薄野「千歳孝之よ」


孝之「ん」


薄野「残念ながら男性用のサンタコスチュームは用意していない」


孝之「………pardon?」


薄野「そもそもこのサンタコス喫茶は男性接客要員は存在しない、全て裏方に回ってもらう予定だ。即ち当日サンタになるのは女子のみだ!」


孝之「つまり、俺はサンタになれないと…」


薄野「うむ!」


孝之「うむ!…じゃねーよ!ふざけんなよ!俺はサンタになれるからこの出し物やろうと思ったのによ!」


だろうと思ったと夏実と恭子は思う。


孝之「くそー……、俺は一体これから何を楽しみに当日を迎えればいいんだぁ…」


まさにorz、これ程似合う文字、いや絵文字は無いだろうと言う位、今の孝之はその様にがっかりしていた。


そんな孝之を薄野は心の底から面白がっていた。


薄野「まぁ落ち着け千歳孝之よ、一応はクリスマスにぴったりの衣装があるのだが……」


孝之は瞬時に薄野を見る、薄野は続ける。


薄野「知りたいか?千歳孝之よ」


孝之はコクりと頷いた。







孝之「薄野…」


薄野「何も言うな、分かっている」


孝之「いや、絶対分かってねーだろ!」


薄野「何を言う、こいつもクリスマスの立役者だぞ」


孝之「いや、まぁ、そうだけど……」


薄野「他には何もないぞ」


孝之「絶対恭子とか夏実笑うぞ……」







10分後、教室にトナカイの着ぐるみがトコトコ歩いて入ってきた。その後ろには薄野が。


恭子「…………」

夏実「…………」


唖然とする一同に薄野が言った。


薄野「クリスマスはサンタだけでない、トナカイも重要だ!」


東神楽「可愛らしいじゃない」


確かに可愛らしいトナカイだが、中の人があれだと思うと。


恭子「ぷっ」

夏実「クスッ」


思わず笑いが出てしまう。


孝之『何笑ってんだよ』


声色が何処と無く不機嫌そうに聞こえる。


恭子「いや、だって…ねぇ」


夏実「似合いますよ兄さん」


必死に笑いを堪える二人、そして薄野が言う。


薄野「当日の呼び込みはこの格好をしてもらうぞ、因みにトナカイの名はハピネス君だ!」


孝之『何がハピネス君じゃ!』


トナカイの姿で怒っても何の迫力も無かった。


薄野「まっ何ならサンタはサンタでも黒色のサンタ衣装は用意しているのだが、着るか?」


孝之『着るかっ!!』


トナカイの姿孝之は虚空の叫び声をあげた。


薄野「さて!早速動いてもらうか!」


凡そ30枚程のポスターを5人に分け与えた。


薄野「後の事は任せろ」


恭子「任せたくないけど……仕方ないわね」


西神楽「じゃ早速配ろー!」


そういって四人のサンタと一匹のトナカイはポスター貼りに勤しむのだった。







孝之『貼りづら…』


流石にトナカイの格好をしてポスターを貼るのは一苦労である。しかし不思議な事に全くもって貼れない事はない、薄野曰くドラうもんの原理だとか、貼りにくいのは手先もそうだが視野も狭まるからやりにくいのだ。


其れにしても、色々な人に見られる。

取り合えずこのトナカイのキャラをどうするか考える、寡黙キャラか、それとも某非公認船橋ゆるキャラみたいに喋りまくるか……、寡黙ならプラカードが必要かなぁ、とか思っていると一人の女子生徒が話しかけてきた。


「あのー、大丈夫ですか?」


何がだろうと思っているとその女子生徒は手に持っていたポスターをチラッと見ていた。

大丈夫ですっと言おうと思ったが、キャラをどうするかまだ決めてなかった故に何も言えない。


「良かったら手伝いますよ」


そう言って桃色の髪の女子生徒は微笑んだ。

彼女の事は知っている、ただ喋ったことはない。接点も言うほどない、しかしここはご好意に甘えるのだった。















一条館の至るところに貼っていく、道行く男子に声を掛けられることもしばしば、これぞ学園のアイドルの力なのだろうと思わず頷く。最後の一枚は玄関に貼る。


奏「終わりましたね」


彼女は嬉しそうに言った。他クラスなのに手伝ってくれたのはすごく有り難かった。何かお礼をしようと思ったが、このトナカイの着ぐるみを着た状態では何一つ出来ない。

孝之なりに考えありがとうのジェスチャーをしてみる。何度も頭を下げるだけだが。

彼女はいえいえと言いながら片手を左右にふる、終いには頭を下げないでくださいとも言われた。


奏「困った時はお互い様ですから」


ええ子やなぁ、久方ぶりにこんなええ子を見たなぁと関心する。


奏「それじゃあ私はこれで」


そういって奏は教室方面に去っていった。


恭子「何してんの?」


ふと横を見ると何故か恭子が居た。

孝之はよく分からないジェスチャーをするので恭子は一喝。


恭子「喋れ!」


その時だけキャラを捨てた。


孝之『漸くポスター貼り終えたからさ』


恭子「ふーん」


孝之『なっ何だよ』


何か言いたそうな恭子、何も言わずに恭子を見ると恭子は冷めた目で孝之を見て言った。


恭子「私達が一人でやってるのにトナカイ様は助っ人ですか~、それも学園のアイドルとなんてねぇ~、随分と恵まれてるわね~」


孝之『いや、あの子はただ単に手伝ってくれただけで、偶々だって』


恭子「ふーん」


全く信用ない、話しを切り替えた方が良いかも。


孝之『てか恭子は終わったのか?』


見れば分かるが彼女はまだ一枚ポスターを持っていた。


恭子「終わったように見える?」


孝之「見えない」


恭子「はぁ……、ポスターが一枚余ったから玄関にでも貼ろうと思ってたら」


思ってたら孝之に遭遇した。しかも学園のアイドルと。


孝之「手伝おうか?」


恭子「そうね、じゃ貼っといて」


恭子は孝之にポスターを押し付け、彼女もまた教室方面に去っていった。


孝之『…………やるか』


恭子から渡されたポスターを二階に昇るエスカレーター横に貼っておいたのだった。











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