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ラムラッケ!! Dream Christmas  作者: 紫丁香花
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12月2日 月曜日

深深と降り積もる雪、この国は昔から雪国と言われるだけの豪雪地帯でもある、特に都心でもこれだけ雪が降る国はこの国しかないだろ。


かの国は言う。クリスマスに雪が降るなんてロマンチック、等々と言われるが此方では実に当たり前の光景だ。



一人の少女はそんな降り積もる雪を眺めながら願う。


どうか、このクリスマス彼と良い思い出出来ますように……


少女は叶うかわからない願いを切に願うのだった。




トントントン、金槌で木と木を釘で打ち付ける。インパクトドリルを使って木ビスを打ち込む。


大きな欠伸をして満足そうに其れが出来上がった事を喜ぶ。

我ながら見事に出来たと思った。遂に完成した木で出来たソリとトナカイ4体、後は此れを上手く動かせれるか。


両手を木で出来たソリとトナカイの方に伸ばす、トナカイの関節は固定していない、だから本物そっくりに動かせる。一歩、二歩、試運転は問題ない。徐々に歩みから走りに変わりそして最後は飛んだ。

この飛んだ姿を皆に見せるまでは、この部屋から出すわけにはいかない、だから当日迄この秘密の部屋に隠しておく。

本来有るはずもない窓を作り上げ開ける。外からくる肌寒い空気と眩しい光が目を覚ます。


もう朝か…

少年は右手を握りしめて呟く。


「ラムラッケ…」


手から出てきたのは梱包された茶色い小さな固まり、固まりの紙を剥がし固まりを口に入れる。滑らかで柔らかい食感と優しい甘さ。


「さーて、いっちょやりますか!」


クリスマス迄、後三週間、少年こと、千歳(ちとせ) 孝之(たかゆき)は皆を笑顔にさせるべく伝説の男になるのだった。



国立魔法学園であるここファクトリア、かつては商業施設だったのだが改装され今は学校となっている。

その学校のかつては映画館であった所に孝之達のクラスがあった。





大きな欠伸をしてLHRに参加する孝之、流石に徹夜明けの作業はきつい先程から幼馴染みが黒板の前で何かを喋っているが耳に入らない、何故なら眠いからだ。

うとうとしていると前に座っていたクラスメイトが振り替えって話し掛けてくる。


「何だか眠そうだね」


にこにこ笑って言うクラスメイトに答えた。


孝之「まあな、ちょっと寝不足っていうか」


「あー、分かった。また何かやるつもりでしょ」


確かに何かやる訳だ。其れがそのクラスメイトには楽しみのようだ。彼女は西(にし) 神楽(かぐら)、天真爛漫元気満杯の金髪ショートヘアの女の子、豊満な胸が特徴的だ。


神楽の答えに孝之は勿体ぶるように言う。


孝之「まあな、何やるかは当日楽しみにしてろよ」


西神楽「えー、今教えてよ~、教えてくれたら私の胸揉んでも良いよ~ん」


孝之「揉めたとしてもおしえねー」


と言いかけた時、細い光の筋が孝之の頬を擦った。

光の正体は熱線だった為、頬がにわかにヒリヒリする。


「人がこんなに必死に話してるのに何神楽の胸揉もうとしてるのかしらァア!」


クラス代表、もとい幼馴染みの視線が怖い、声も怒号のように迫力ある。

彼女は羅臼(らうす) 恭子(きょうこ)、金髪でさらさらと長い髪と其れに合うスレンダーな体型が特徴、この魔法世界の中で2番目に強い実力者だ。


孝之「揉もうと何かしてねーよ!」


「兄さん不潔です」


恭子の隣で黒板に字を書いているのは孝之の従姉妹の恵庭(えにわ) 夏実(なつみ)、短い黒髪に左右に小さなリボンを着けた可愛らしい女の子だ。


夏実の抗議に孝之は反論する。


孝之「だーかーらー、違うって!」


西神楽「そうなの、孝之くんたら、グヘヘヘお前の胸揉ませろーって言ってきたの~」


よよよっと嘘泣きをする西神楽を見て夏実は孝之を蔑んだ眼差しで見る。


夏実「兄さん…」


孝之「お前信じるなよ!兄の言葉と神楽の言葉どっち信じる!?」


夏実「神楽さんですね」


孝之「酷くね!」


恭子「はいはい、孝之が変態でどうしようもない男なのはほっといて、話し進めるわよ」


このままでは話し合いが終わらないと思った恭子は強制的に話しを切る、孝之は不服そうに恭子を見る、序でに西神楽の方も。西神楽は悪びれなく屈託ない笑顔を見せて平謝りした。


恭子「えーと、今出てるのはアクセサリーショップ、休憩室、チャペル、フード系……」


今何をしているのかと言うと三週間後に迫ったクリスマスパーティーの出し物について話し合っていた。正直クラスの出し物なら何でも良いと孝之は思っていた。

彼奴がでしゃばる迄は。


「おいおい羅臼恭子よ」


恭子「……何よ」


恭子も孝之と同じ気持ちだったのだろう、その男が発言しただけで顔をしかめる。


「俺に良いアイデアがあるのだが……のらぬか?」


恭子「あんたが言う良いアイデア何て騒動の引き金じゃない」


「何を言う。この俺程品行方正、文武両道、完璧主義な男は居ないぞ」


恭子「何処がよ!」


恭子のツッコミに共感する孝之。


「まぁ話だけでも聞くがよい」


そういって席から立ち上がる。


「クリスマスと言えば其れは恋人のseason。出逢いのseason」


シーズンの言い方にイラッとする恭子。


「学園を歩けば其処ら中にカップルが、そしてまだ実ってないカップルも只見る。其処で俺は考えた。そんなカップルを更に熱く!燃え上がる出し物……其れはお化け屋敷だ!!」


思わずため息が出る恭子、理由は単純。


恭子「毎度毎度何かの度にお化け屋敷お化け屋敷……、もううんざりよ!!あんたのせいでイベントの殆んどお化け屋敷になってるじゃない!!」


この男とは一年生の頃から付き合いがある。そしてファクトリアのイベントは学園祭とクリスマスパーティーがある。そして去年この二つがお化け屋敷になったのだ。

去年だけではない、今年の学園祭もだ。


恭子「もう良いわよお化け屋敷は!」


「だが俺のお化け屋敷を待っている者もいるのだ、期待に応えないでどうする?」


恭子「どうもしないわよ!兎に角お化け屋敷は却下!」


「売上に関しては結果を残しているのになぁ……」


恭子「だまらっしゃい!」


先程からお化け屋敷を推している彼の名は薄野(すすきの)才色兼備、文武両道超がつくほどのイケメン、しかし性格に難あり。


恭子「孝之は何かアイデアないの?」


話しを孝之にふる。実際何も案が無い訳ではない、しかし成功するかどうかと言われればその確率はまだ低い、だから案と言うほどの物は現時点ではない。

なので矛先を替える。


孝之「残念ながら、これといって良いアイデアは無い、神楽はどうだ?」


西神楽「私の事?」


孝之「いやお前じゃない」


そういって目線は白く長い髪と白雪のように美しい肌の少女に向けられた。


「あら私だったの」


孝之「俺が"こっちの神楽"に意見聞かないだろ」


西神楽「うわ、こっちの神楽とかひどーい」


孝之が話しかけた神楽こと(ひがし) 神楽(かぐら)は少し考えてから発言した。


東神楽「そうね、今の現状で出来る出し物は人形劇なら可能かも」


薄野「ほほう」


恭子「人形劇ねぇ…」


中々良いアイデアだと思った恭子。


東神楽「本当は映画でも撮りたいところだけど流石に時間が足りなさすぎだわ、演劇の選択肢もあるけど演劇なら演劇部がやるし、クリスマスに可愛らしい劇をするなら人形劇の方がいいわね」


夏実「確かに良いですね」


薄野「しかしシナリオはどうするのだ?残り三週間で書き上げるなととは言わんだろうな」


東神楽「一応用意だけはしてあるわ」


恭子「お化け屋敷寄りは全然ましね」


最早流れ的にも出し物は人形劇と決まりかけていた時、あの男が立ち上がった。


「甘い甘い甘いあまーい!そんなのカップルしか楽しめねーだろ!クリパは俺たちも楽しめるイベントじゃなきゃいけないんじゃないか!?」


その男が何を言ってるか理解するのに幾分時間がかかった。


「お化け屋敷ぃ?カップルがイチャつくシャーラプ!人形劇ぃ?カップルが手と手を握り合うシャーラプ!!そんなのクラスが求めても俺は求めなぁあい!!」


拳を高々と挙げて宣言する。茶髪で異様にテンションが互い男は名を定山(じょうざん) (けい)。三馬鹿の一人である。


渓「俺は…俺は!!」


恭子がいちゃもんつけてくる前に渓は叫ぶ。


渓「サンタコスプレ喫茶にしたい!!サンタのコスプレした女の子が見たぁあい!!」


始めに言うがこの渓と言う男は変態だ。

この変態染みた発言だか男子からは賛同の声が上がる。


西神楽「わー、其れも面白そう!」


一部女子からも賛同の声が聞こえる。


孝之「サンタコス……良いなそれ!」


渓「だろ!」


孝之も渓に賛同し、夏実はムッとした表情で孝之をにらむ。


最早今年の出し物がサンタコスプレ喫茶か人形劇かに別れた時、恭子が動いた。


恭子「こうなったら多数決とるしか無いわね…」


そして運命の多数決をした結果予科二年三組の出し物は…………。













「はい孝くん、あーん」


美味しそうなだし巻き玉子を孝之の口元に持っていくピンク色の艷やかな髪色と西神楽と同様にナイスバティとは言え包容力は此方の方がぶかある。

彼女は千歳(ちとせ) 春音(はるね)、孝之の1つ年上の姉である。そして超絶ブラコンである。


差し出された玉子をパクリと食べて言う。


孝之「あー、旨い。流石春ねぇだわ」


春音「えへへ、本当~」


孝之「うん」


春音「そんな~、お嫁さんにしたいだなんて」


恭子「そこ迄言ってないでしょ」


相変わらずのブラコン振りに恭子と夏実はため息が出る。


孝之「そう言えば春ねぇのクラスってクリパ何やるの?」


先程決定した出し物だがクラスによっては既に決定している所もある。


春音「私のクラスはホットパイ屋さんだよ」


夏実「ホットパイ?」


孝之「パイの中にシチューが入ってるやつだよ」


夏実「あー、よくケンテッキーで売ってる奴ですね」


孝之「そう考えると本当にクリスマスって感じだな…」


ふと見ると横には大きなクリスマスツリーが見える。孝之達が食事をしている大広間、通称アトリウム館は食堂等が立ち並ぶ地下一階からスロープで上がり高さは二階まで昇るこの広間、特徴は風力発電機と花の廊下、煉瓦で出来た階段と滝。一言で言えばお洒落だ。


そして広間は通常何席か座れる場所があるのだが巨大なツリーのせいで座る席が数十席無くなった、お陰で座るのに一苦労した。

今日は孝之と春音は弁当、恭子と夏実は学食だ。


春音「孝くんのクラスは何やるの?」


孝之「サンタコス喫茶」


春音「サンタコス?」


恭子「サンタの格好して接客やるって考えて下さい」


春音「あー、成る程。孝くんもサンタさんになるの?」


孝之「当然!」


春音「じゃあお姉ちゃん見に行くね!」


夏実「いや、兄さんはサンタに成れないと思いますよ」


孝之「えっ何で?」


恭子「あの変態の事だからきっと……」


夏実・恭子「「私達にしかサンタコスさせない」」


恭子「わよね」


夏実「ですね」


孝之の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。

突然周囲がガヤガヤと騒ぎだす。孝之の席のすぐ近くで一人の女子生徒がとある女の子達のグループと合流していた。


孝之「何の騒ぎだ?」


主にガヤガヤしているのは男子、先程に比べ熱気が出てきたような気がする。少女は孝之の席の目の前の席に孝之と向かい合うように座った。不意に目があったような気がした。


恭子「まぁ予想は出来るわね」


夏実「兄さんは余りアトリウムを使わないから知らないと思いますけど、有名なんですよこの光景」


恭子「まっ其れは置いといて……」


恭子は急に話しを変えてきた。


恭子「あんたクリスマスに何かやらかすつもり?」


孝之「行きなり何言い出すんだよ」


恭子「ちょっと気になる案件が入ってきたのよ」


孝之「案件って生徒会の?」


視線は恭子と春音をとらえた。


恭子「ええ、でどうなの」


孝之「どうって……」


確かに何かやらかす気ではあるが其れを今此処でばらす訳にはいかない。


孝之「別に何もしねーよ」


恭子「どうだか、薄野と協力して何かやるつもりじゃないでしょうね?」


孝之「俺は一度だって薄野と協力はしてねーぞ」


流れ的に協力する形には何度もなっているが。


春音「まぁまぁ、きっとその件は孝くんには関係ないよ」


恭子「私もそうは思いますけど……」


一体何の話しをしているのかと気になっている夏実は身を乗り出してまじまじと春音と恭子を見る。

その視線に応えたのかどうかは分からないが、恭子は葉書サイズの紙を二人に見せるようにテーブルに置いた。

夏実がそこに書かれた内容を読み上げていく。


夏実「我ら秘密組織ノエルの悪夢はクリスマスパーティーにおいてブラックサンタを召喚し皆の記憶に焼き付くようなパーティーを開いてやろう。我々は壊すだけだこの腐ったクリスマスパーティーを……」


孝之「何だろう…絶対に薄野が一枚噛んでるよな…」


恭子「一枚処か首謀者よ」


孝之「まさかと思うが、俺がこれに参加してるとか思ったのか!?」


恭子「ねっ念には念よ」


孝之「あのな…、俺はこんな危なっかしい事はしねーよ」


夏実「じゃあ何をするつもりなんですか?」


孝之「皆を笑顔にするようなイベントだ!」


自身満々に言う孝之、今この場でパーティー当日何かをしますと断言したようなものだ。

相変わらず嘘がつけない孝之の発言、しかし孝之はこのブラックサンタに関わりがないと実証できたので恭子は一安心した。


春音「孝くんが当日何やるかお姉ちゃん楽しみだなぁ」


孝之「楽しみにしててよ」


恭子「大人しくしてるって選択肢は無いのかしら…」


春音「あっ孝くんご飯粒ついてる」


孝之「何処?」


すると春音は孝之の左頬をペロリとなめた。


春音「とれたよ」


孝之「ありがとう」


恭子「ありがとうじゃ無いわよ!!」


夏実「そうですよ兄さん!!」


行きなり怒った二人に驚く孝之。


孝之「なっ何で怒ってるの?」


恭子「なっあああああ当たり前でしょ、はしたないでしょ!」


夏実「そうです兄さん!」


孝之「えっ、でもいつもの事だし」


恭子「春音さん?」

夏実「春音姉さん」


春音「おっお姉ちゃんとして当然の権利だよ!」


恭子「何が権利ですか!!」


この光景はいつもの光景なのだが何も知らない少女は其れを固まって見ていた。


「奏?かーなーでー」


身体を揺さぶられ、意識を取り戻した。


「はっはひっ!あっ巴ちゃん」


「あんた大丈夫?」


「うん、…大丈夫」


本当は大丈夫ではないのだが此処はそう言っておく。


「にしても…相変わらず千歳先輩ベタ惚れしてるよね…」


「そうだね…」


「奏がちゃっちゃと話しかけないからでしょ」


「だっだって、何話して良いか分かんないだもん」


「じゃ、お得意の誘惑でもして惹き付けなさいよ」


「得意じゃないよ~、其れに巴分かってて言ってるでしょ!」


「まぁね~」


学園のアイドルと呼ばれている留萌(るもえ) (かなで)とその友人の滝川(たきかわ) (ともえ)は此方もいつもの会話をして盛り上がっていたのだった。










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