隠れ里3
それから材料が無くなるまで、延々とから揚げを揚げまくっていた俺とウサ正宗。
油は跳ねるわ、熱いわ、催促が凄いわ、でなかなかハードモードの料理であった。
それを一時間以上ぶっ続けだからな。
グレートアウルの鶏肉の在庫が無くなり、食材が無くなったので終了を告げると、皆残念そうな感じであった。
だが、いきなり大量の油を摂取したりするのはどうなんだ?と思い、諦めてもらった。
300人未満の里とはいえ、里のラビッター族が総出の食事会であったらしいので、その人数分に近い料理を用意するのは大変だった。
まあ、パンとか野菜なんかは持ち込みで勘弁してもらったが。
スープを食器によそうのは、手伝ってくれていたラビッター族の方にまかせていたからいいんだが、デカイ寸胴鍋10個分のスープが全て完売になるとか、凄い食欲である。
一応スープはおかわり出来る様に、かなり余裕を持って作っておいたのだが、欠食児童のようだ。
みんな久しぶりの御馳走に、夢中になってがっついていた。
俺らは調理や配膳に忙しくて食事どころでは無かったが。
結局その日の俺とウサ正宗の分の夕飯はあまり残っておらず、パンがちょびっとしか残って無かった。なので、後で集会所に撤収した時に、PDSからディナントの町で購入したドネルケバブもどきを取り出して、ウサ正宗と二人でこっそりと食べた。これも大量に購入したのが沢山あるんだわ。
一週間以上前に買った品物だが、まるで劣化しておらず、まだ熱が残っていた。
うーーん、やはりPDSは便利だ。
で、そんな食事会が終わった次の日、宴会場所となっていた集会所の前には、面倒な宴の後の後片付けが待っていた。
彼らは食べる料理が無くなった後も解散せずに延々と騒いでいたのだが、俺は途中からパスしたからよく知らない。
病み上がりの俺の体には、延々と食事の準備と調理をしたのはそれなりにきつかったからな。
だが、昨日の苦労もした甲斐もあったのか、今日出会った里のラビッター族の顔は、少しだが元気が戻っている様に感じた。
まあ、後片付け自体は里のみんなが手伝ってくれたので、そんなに時間はかからなかった。
「さて、とりあえず昨日の食事はそれなりに盛況で良かった。
里のラビッター族にもそれなりに活気が戻った気がするしな。
後は定期的に肉や魚を摂取してもらう為にも、まずは彼らにも狩猟が出来るようにしてもらわないとな。」
「そうですね。
やはりおいしい食事は生きる活力になります。
彼らもこれで少しは意識が変わるでしょう。
今は未だ危険が大きいので、ご主人様と私だけで狩猟を行った方がよろしいかと。
そのうちに彼ら里の戦士達にも出来るようになってもらいましょう。」
「そうだな。
まだレベルも低いし痩せている状態だから、まずは栄養を付けてもらう為には俺らだけでやるか。」
「はい、それでお願いします。
ある程度、里のラビッター族の戦士達の健康状態が良好になられたら、彼らの狩りの訓練等は私にまかせてもらえますか?
里のラビッター族の戦士達を、モンスターに負けない様に鍛えて見せます。
ご主人様には戦力を上げる為に、ラビッター族用の武器や防具等の作成をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
確かに俺とウサ正宗は分業した方が効率がいいか。
この里の足りない物は沢山あるし、俺は特殊アイテム作成に専念するのも確かに有りだな。
「確かに里で必要な物は多い。
分かった。俺は里の必要な物を作っていくよ。
まだ、里のラビッター族がどういった物を使っているのか分からないから、彼らの要望も聞いてからかな。
まあ狩りの獲物を運搬するのはウサ正宗も大変だろうから、その時はなるべく俺もついて行くべきか?」
「アイテム袋に入る量は限られていますので、ご主人様が同行していただけるならば、大変助かります。
ですが、後々の事を考えるならば、いずれは里のラビッター族にも運搬役をやらせるべきかと。
運搬にも経験が必要ですから。」
ああ、そういえばアイテム袋はあまり一般的じゃないんだっけ。
高級品だから、あまり出回ってないとか。
あのグレートアウルも俺はPDSに収納したから、運搬するのになんにも問題無いが、普通の冒険者は剥ぎ取り部位を決めているんだっけか。
金になる部位や、武器や防具など有用な部位以外は大抵捨てていくのが一般的だ。
モンスターを丸ごと収納なんてのは普通は出来ない。
だから、馬車や、大きいリヤカーとか、台車なんかで運ぶのが一般的な冒険者のする事だ。
里のラビッター族も、アイテム袋が無ければそうなるか。
「そうだな。
いずれはそうなるべきか。
まあ、俺達だけで色々決めるのもどうかと思うから、大枠の目標だけ決めておこう。」
「はい、ご主人様。」
それから色々今後についてウサ正宗と話し合った。
この里に辿りつく原因になったストームドラゴンが少し気になるのは確かだ。仕留め損なったがダメージは確かに与えたから、しばらくはディナントの町まで行く事はできないハズ。
だが、とりあえずはこの里のラビッター族を放置出来ないしな。
優先順位的にはストームドラゴンより先にこの里をどうにかしないと、放って置くとリアルにラビッター族が全滅しそうだ。
塩や食料が足りない、武器も無い、レベルや能力も無い、でナイナイ尽くし。
かなり詰んでいるよ。
はっきり言って、人間の愛玩動物として生きているラビッター族の方が、よほどまともに生活しているのだろうな。
まあ、主人次第では虐待の可能性などはあるのだろうが、それでも飢え死にの可能性は低いだろう。
ある意味、彼ら隠れ里のラビッター族は人間に誘拐されて、金持ちに飼われる方が幸せなのかもな。と一瞬思った。
彼らは人間から逃げてきたラビッター族の末裔だそうだから、人間に飼われるのを選ばないかもしれないが、それでも生きていけるなら飼われる事を選択するのもありだろうと、俺は考えたのだ。
俺はまっぴらゴメンだし、ウサ正宗も同じだろうが、力無き者の選択肢としてはそれも仕方ないと思ったいた。
だが、俺はそれなりにこの里の者達に借りがある。まあ大半はウサ正宗が世話をしてくれたのだろうが、それでも助けてくれたのは事実だ。
それにウサ正宗の同胞であるラビッター族でもある。
だから、この地で懸命に生きている彼らの為に、まずは選択肢を与えるだけの力がなくていけないと考えた。
強さが無くては、今後この里の連中はどうやっても生き残れないからな。
それから、俺達は里の長老の家に行って、これら里の強化作戦の提案を長老にした。
「おおっ、これは竜司殿にウサ正宗殿。
昨日は素晴らしい食事を提供していただき、本当に感謝しております。
ありがとうございます。
それで、今日はなにか御用ですか?」
「ああ、とりあえず俺達はこの里のラビッター族の為に、今後こういった活動をしていくつもりだ。」
それで、俺とウサ正宗はこれからの里の食事の改善をする為の具体案等を長老と話し合った。
短期間は俺らで狩猟などをして食料の提供を行うが、そのうち里の者達にも狩猟が出来る様になってもらう為、長期的に訓練が必要となる事。
ウサ正宗がその訓練を担当する事。
更に俺がこの里で必要な物をある程度、スキルで作成出来るので、欲しい物の要望など。
それらの話し合いはかなりの時間に及んだ。
途中お昼休憩の為に、PDSからこっそりと食料を取り出して提供したら、長老は凄い驚いていた。
「これはなんという料理なんでしょうか?
昨日食べた、から揚げやスープも今まで食べたことが無い味の食べものでしたが。
人間の町ではこういったものがあるのですか。」
なんだかしきりに感心していた。
ただのドネルケバブもどきなんだが、長老にはそれすら珍しいものだったらしい。
俺には分からないが、やはり肉を食べる事すら久しぶりと言われたら、そうなるのか。
ソースもついていて、ジャンクな味わいだが、この里では作れない味なんだろうな。
その後も、話し合いは続き、昼過ぎくらいには何とか話しはまとまった。
「それでは、ひとまずはこういった形で頼む。」
「いえいえ、我らの里の為に、これほど協力していただけるとは、思っていませんでした。
本当に感謝の念が絶えません。
どうかよろしくおねがいします。」
で、だいたい短期的な内容は決まったので、俺らは長老宅を後にする。
まだ日が沈むまでには時間あるので、とりあえず里の外に行ってお肉をゲットしに行った。
里の狭い出入り口をなんとかくぐり抜けて行く。
背の低いラビッター族用に作られているので、身長が合わない俺は腰を屈めて歩く感じだ。
外に出ると、直ぐに森になっており、近くに大きな岩があって、非常に目立たない出入り口の仕様になっていた。
大きな岩は外的の進入を防ぐ為の物でもあるのかもな。
俺らはさっそく森の中に入り、獲物を探し始めた。
事前に里のラビッター族に話しを聞いておいたので、それなりに周辺の事情は知っていた。
俺が流されていた川は、ここから15分ほど離れた場所にあるらしい。
今日は川には用は無いので、森の中に居る、イノシシやオオツノ鹿等がターゲットになる。
グレートアウルはこの辺りの森ではあまり見かけないそうだ。
川の上流で見かける事が多いとの事。
俺らはなんだかんだで、相当流されたようだな。
現在地は不明だが、川を上流に向かって歩けば、ストームドラゴンに落とされた渓谷まで戻れそうだ。
まあ今は関係無いか。
それから森に入ってから一時間の内に、オオツノ鹿6頭と、イノシシ3頭を狩った。
オオツノ鹿は群れで居たのを遠距離から俺のボウガンとウサ正宗の投げナイフで狩った。大体150キロありそうな個体もいた。
イノシシも同様に遠距離から仕留めた。こちらは大体重さ200キロくらいありそな大物である。
でけぇー、どれも日本じゃ滅多に見ないサイズであった。
この森はたぶん辺境にあるので、人間の手が入っていない森だから、動植物が非常に豊富である。
歩く道もかなりの獣道である。
木々も非常に背が高くて、幹も太くて丈夫そうだ。
針葉樹よりかは広葉樹が多いようだった。
それにこの森は、比較的に他の場所と比べればモンスターが少なめだ。
それらのお陰か知らないが、その分出てくるモンスターも強力になっているのだが。
出てきたブラッドリザードという、デカイトカゲのモンスターだ。
赤い色をした鱗が特徴で、ヤモリとかトカゲをそのまま2メートルくらいに大きくした様な見た目だが、動きが素早くて、鱗もそれなりに硬い。
舌を長く伸ばしてべろんちょ攻撃をしてきたが、ウサ正宗の前には止まって見えたのだろう。
ウサ正宗は簡単に避けたが、俺は普通に避けられずに胴体に喰らった。
普段ならノーダメージに近い攻撃だったのだが、森での狩りをするのに金属のガチャガチャ音を嫌った為に防具がシルバーナイト装備じゃなくて、ブラックウルフ装備だった為に、それなりにダメージがあって痛かった。
まあ、その後反撃でサクって撃退したのだが。
一気にダッシュで近づいて、持っていたミスリス刀を大きく腕を横に振りかぶって、一閃。
それだけでブラッドリザードの頭が一刀両断されて死亡した。
親方の作ってくれたミスリル刀もなかなか良い感じの切れ味である。
これらをお土産として、里に帰還した。
その日の夕飯にオオツノ鹿2頭は消費される事になる。
シンプルに焼き肉にして、バーベキューみたいな感じで食べた。
食べられる部位の肉だけでも、二頭の合計で250キロ以上はあったハズなのだが、ほぼ全て食べ切った。
里の人数は三百人未満なので、お一人様一キロ近い肉を消費した事になるのだが、凄いな。
里のラビッター族の皆さんの食欲が凄いことを改めて感じた。
お読みいただきありがとうございます。
更新に関しては、毎日の更新は厳しいので、今後一週間に二度から三度の予定です。
よろしくお願いします。




