王都からの部隊
ロックドラゴンの討伐報告より、二週間が経過していた。
この間、俺とウサ正宗は一週間前とだいたい変わらない行動をしていた。
食料収集を手伝ったり、町の掃除をしたりである。
住んでいる場所は以前と変わらない、相変わらず工房で部屋を借りていて親方の好意に甘えていた。
他に安全で信頼できる人物は少なかったし、下手に家を借りたりすると町の英雄とか救世主がとか言う、うっとおしい人達が押しかけてくる事になりかねないからだ。散々殺しまくったゴロツキから襲撃されかねないしね。
だが、いい加減俺が強い事とウサ正宗が見た目が可愛いだけじゃなく、相当強いという事がこの町の冒険者だけじゃなくて住民全員に知れ渡ってきていたので、「ラビッター族見っけたヒャッホー」で襲い掛かるアホは居なくなっていた。
ちなみに今の俺のステータスはこんな感じだ。
名前:鏡竜司
職業:武具マイスター
レベル:24
体力:421
魔力:278
SP:455
筋力:306
俊敏力:214
精神:183
知力:235
器用さ:287
スキル:特殊アイテムボックス「自動修復小」、特殊アイテム作成、ラビッター族召喚、鑑定
盾術1、機械弓術4、剣術5、双剣術2、体術3、武具覚醒
称号:異世界の来訪者
変わったのは主にスキルが剣術5になったのとレベル24になったくらいかな。
ここまでレベル1とステータスの基礎能力が違うと、筋力なんかは本当にヤバイくらい実感出来ている。あれだ、クルミを素手で握りつぶすヤツやリンゴを握力だけで潰すヤツがリアルで簡単に出来る。
廃人ゲーマーだった俺がなんて事だ。
そして、討伐報告から二週間頃になると他の町から救援物資が届く様になり、行商人や新たな冒険者や人の出入りが活発になる様になった。
俺も有名になってしまい、あまり昼間から大通りを歩いていると町の人達に囲まれてしまうこともあった。遠巻きに見ている分には構わないのだが、囲まれるとその中から攻撃を受けそうになった事がある。
簡単に言えば無害な民衆の中に俺に恨みを持った人物が紛れ込んでいたのだ。
ウサ正宗が速攻で害意をもった人物を認識していたので、その人物が群集の中から飛び出し刃物を取り出して俺に向かって突き出して来た、それを返す刀で俺が切り捨てたのだが、その時は囲んでいた人達がパニックになりかけた。
大声でパニックになりそうな人達に対して
「こいつは以前俺達に滅ぼされた闇ギルドの一員だ。」
と説明して事なきを得たが。
実際に、俺はかなり多くの人物に恨みを買っていた。
ゴロツキや闇ギルドの者をこれまでにニ百人以上は軽く殺していたからだ。
それは襲撃を受けたのもあれば、自分からアジトまで乗り込んで殲滅したのもあるが、基本的には向こうが犯罪行為をしていなければこちらからは手を出さなかった。
逆に犯罪行為をしている者に対しては徹底的に潰していった。
果物を盗む等の軽犯罪ならともかく、この治安が悪化していたディナントの町では脅迫や強盗だけでなく、誘拐や人身売買も行われており、そういうのを闇ギルドやゴロツキが率先して行ったからである。まさに彼らにとっては今は稼ぎ時なのであろう。
何も悪くないのに理不尽な暴力にさらされる町の人達を俺は許容する事が出来なかった。
だから、そういう犯罪者達には皆殺しで応じる事も多かったし、実際にそれで助かる事になる人も結構な数がいた。
ゴロツキに抵抗した為に斬り捨てられて絶命した者や、娘を誘拐されておもちゃにされた者、中には乱暴されすぎて壊れてしまっていた被害者も居た。
そういうのを目撃するとなんともやるせない気分になったが、俺にはそういった人をそれ以上助ける事は出来なかったので、生き残っていた被害者は詰め所に預ける事で対応していた。
そんな生活もロックドラゴンの討伐報告より三週間もすれば警邏隊の人員も増えて門の兵士も増えていた。他の町からの応援である。それに伴い徐々に治安も回復し始めてきたので俺も犯罪者狩りをするケースはだいぶ減ってきていた。
行商人が食料を運んできたので食料も安定して町の住民に届く様になる。更に冒険者も質は置いておいて数自体はかなり増えてきたので、俺が食料を調達する必要もなくなっていた。
そんな風に俺の役割はそろそろ終わりかな?と考えていたら三日後に王都からこの町に兵隊がやってくるという話を親方から聞いた。
立て続けにこのディナントの町は上位のモンスターに襲われることになったので、その原因究明だとか目的を語っていたらしいが、実際はどうやら。
そして三日後の昼頃に王都の兵隊300人がディナントの町に到着した。
彼らは武装隊と調査隊に分かれており、武器を持った人間と持たない文官のような人間に分かれていた。
装備は流石にただの鉄の武器では無さそうだった。一部の人はミスリル製等の武具を身にまとっていたが、装備については個人個人で違いマチマチであった。
彼らはまず自分達の宿を確保しようとしたが、残念ながらロックドラゴン襲来で町が壊れていてそんな大人数で泊まれる場所に空きは無かったので、一部は守備隊の兵舎に宿泊し、残りは町中の空いたスペースにテントを張って寝泊りする事になった。
徐々に復興してきているとはいえ、300人規模で収容できる施設等は重要度の観点から後回しにされていた為だ。それよりも町の防壁を再構築して元に戻す方に力を入れるのは自然な事であったが、それを理解していない人物も居た。
王都の調査隊に同行していた貴族の一人であるオーデンセ・メーリッシュである。
彼はロックドラゴンの素材で出来た装備が欲しくて付いて来ただけの人物であった。
貴族として贅沢な暮らしに慣れており、現状の守備隊の兵舎での暮らしは我慢できなかった。
ディナントの町の現状などどうでもよくて、自分が欲しい物を手に入れる為だけの我が侭で調査隊に付いて来たので、周りを省みる事をしなかったのである。
故に兵舎の前で我が侭が炸裂したのだが、そのオーデンセ・メーリッシュが駄々を捏ねる現場に運が悪い事に偶然通り掛かった俺とウサ正宗が鉢合わになっていた。
「くそぉー、どうして僕がこんなショボイ所で寝泊りしなくちゃならないんだ。
・・・・・・んっ。
おおおおーーーーー!!!
こんな所にラビッター族がいるではないか!!!
なんと珍しいことなんだ!!
皆のもの、直ちにあれを捕まえてこい!!
これは命令だ!!!!」
「お待ちください、オーデンセ様。
不当に捕縛命令をくだされても、それではこちらが法に触れます!!
どうかお止めください。」
「いやだ、いやだっ!!
そんなもの貴族としてどうとでも握りつぶしてくれる!!
だからさっさと捕まえろ。
二度目は無い、これは命令だ!!!」
そして俺ら、正確にはウサ正宗を捕縛する為に、王都から派遣されてきた兵士8人が俺らを囲む。
なんだか分からないが、とりあえず意味不明にわめいていたアホボンらしき貴族がウサ正宗を捕まえようとしているのは分かった。
そして相手も剣を抜き抜刀している。
流石に王都の兵士ともなれば鉄の剣では無いらしい。もう少しまともな装備をしていた。
だが、8人もの兵士に囲まれてもまるで気にならなかった。
向こうが手を先に出してきたのだから、皆殺しにしようかな。
そう考えていたのだが。
「これは何事だ!!
町中で何をしているんだおまえ達!!」
「った、隊長!!
申し訳ございません!!
オーデンセ様のご命令でして、こちらのラビッター族を捕縛せよとのご命令であります。」
「何をバカな事を言っているんだ、貴族の命令だろうが緊急時でも無いのにこんな町中で武器を抜くとは!!
貴様らには後で相応の罰を与える。
サッサとここから退け!!」
「はっ、かしこまりました!!
では、失礼します!!」
そして隊長さん?に周りの兵士は言葉で蹴散らされてしまい、慌てて逃げていった。
残されたのは悔しげな顔をしたアホ貴族と隊長さんと俺らだけ。
うーーん、なんだかメッチャアホ貴族に睨まれてるね。なんだかなーー。
「オーデンセ様、独断でしかも私用に兵を使われては困ります。
この事は後日王都に帰還した折にはきっちり報告させてもらいますぞ。」
「くそーーー、なんで僕の言うことを聞かないんだ!!
貴族である僕のいう事をないがしろにしたんだ、お前こそ覚えて居ろよ!!」
そういって俺を睨みつけてから守備隊の宿舎に逃げていくアホ貴族。
んーー、ほんとになんだかな。俺何もしてないのに凄い恨まれたよ。
「そちらのラビッター族の方にも迷惑を掛けてすまない。
どうか、許して欲しい。」
そういって隊長さんが頭を下げてきたので、許すことにした。
見た目は隊長なだけあって着ている鎧もミスリス製プレートメイルで、金髪のダンディでギリシャ彫刻のような精悍な感じのおじ様なのに。その苦労は凄そうであった。
この人が悪いわけじゃないのに。
「ああ、気にするな。
よくある事だからな、こういうことは。
なっ、ウサ正宗。」
「はい、ご主人様。
そちらの方も気にしないでください。」
「助かる。
俺は王都から派遣された部隊の隊長を勤めるアルスターだ。」
「俺はこのディナントの町の冒険者で竜司だ。
こっちは相棒のウサ正宗。」
「そうか、また何かあったら私の名前を出してくれ。
そうすれば、大抵の場合は引いてくれるだろう。」
「ああ、分かったよ。
なるべくあんたに免じてそうするよ。」
それから簡単に事の経緯を俺らに説明してくれた。
あのアホ貴族の無茶な要望の為に町中で貴族が泊まる様な宿を探していた為に、一時離れる事になりあのような事を許す事になったらしい。
今後はこういう事が起こらないようにするので許して欲しいと改めて言われた。
なんだか中間管理職の悲哀を見たな。
それから俺達は普通に工房に戻った。
そして、その後俺らがディナントの町では知らぬものがいない有名人であり、襲い掛かってきた人間には容赦無く皆殺しにする人物だと門の兵士から伝えられた時に、こう思ったそうだ。
「あの時制止できて本当に良かった。」
と後日出会った時に俺にこぼす事になる。
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