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リンドブルム3

 昨日は非常に有意義な一日であった。

 俺のPDSの中にはこの川原で採取した沢山の鉱石が収納されている。

 その多さにニヤニヤしながら、とりあえず朝食のサンドイッチをPDSから取り出して、簡単に済ませると出発する事にする。

 だいぶ遅れが出ている為である。

 まあ、今すぐにリンドブルムを倒さなくてはディナントの町が襲われる訳じゃあない。

 だが、もう一体のロックドラゴンがいるんだよな。

 向こうはAランク冒険者を含む多数の討伐隊である。

 正直それでなんとかならないと、あの町に残った戦力では厳しいだろうな。

 それこそ蹂躙される可能性はあった。

 だが、今の俺に出来るのはリンドブルムの対処だけである。

 移動距離がある以上は時間が掛かるからだ。

 これで俺もリンドブルムの対処に失敗してしまったら、リンドブルムが町に襲来しつつロックドラゴンも防壁を壊してこんにちは、町の人達はドラゴン達の餌食になる。となるのが最悪の事態である。

 俺もロックドラゴンを倒しにいくのに付いていくのもありだったが、ウサ正宗の件があるからな。

 集団行動は厳しいよ。

 それにPDSの事もあったしな。

 まあ、目の前の自分の役割を果たしていくしかない。

 俺は神様じゃない。なんでも出来る訳じゃないからな。


 それから登山を再開した俺達は、川原の上流に向かって川を沿って歩き、歩いて行けるところまでは川の傍を歩く事にした。

 それから1時間あたりはその川沿いを歩いた。

 ゴロゴロある岩や石に鑑定をかけて、またレア鉱石を見つけるとPDSに収納する。

 時間が掛かりそうな岩盤なんかはスルーしたが、歩きながらお宝採取している気分である。

 川は途中で滝の様な崖になっていて、それ以上は徒歩では無理だったのでまた山に入って行く。

 相変わらずの未舗装な道なき道であるので、山に入ると気を引き締める。

 もうレア鉱石もないだろうから注意がそれないが、川沿いは比較的見通しが良くて襲撃されても対処しやすかった。

 だが、山の中は深い森の中と変わらない見通しの悪さと足場の悪さである。

 不意打ちをされやすく、また疲労も溜まりやすい。

 またウサ正宗が先頭になり、道無き道を進んでいく。


 そんな山の中を五時間程歩いただろうか、途中休憩を何度か挟みながらえっちらおっちら進んでいたが、ようやく山の頂が見えてきた。

 まだかなりの距離があるが。

 それでも一応の目的地は山頂付近にある筈の竜の巣なので、これでリンドブルムや竜の痕跡が何も見つからなければ隣の山に行く必要がある。この山頂は生活圏内では無いということだ。

 山脈なので、ようは繋がっているのだが、その起伏の多さとアップダウンしている高低さのある道のりを眺めていると、相当な距離を再び歩く事になる。

 それは出来れば勘弁して欲しいのだが、リンドブルムを足止めするにはまず相手を発見できるかどうかが重要になってきていた。竜の巣や痕跡が無くてはそこでトラップを仕掛けても無駄になるので、どのみち確認の為に行く必要が出てくる。

 ひえーー、なんだかリンドブルムを討伐するよりも見つける事が一番大事な仕事になってる。

 確かに出会わなければどうすることも出来ないよ。

 しかし、本当にここまでの道のりは大変であった。

 モンスターとの戦闘回数自体はそんなに無いのだが、やはり道が険しい。

 そんな中、山中にて偶にワイバーンであれば上空を飛び去る姿を目撃する事はあった。

 俺とウサ正宗の上空を過ぎ去るのを木々の間から目撃した訳だが、どう考えても撃墜するには無理なほど短時間だけである。

 どこから来たのか、どこに行くのかなんて木々の葉が視界を遮り、分からなかったのである。

 なので山の中ではワイバーンを撃墜する事も出来ずにいた。

 せめてワイバーンがどこから飛んでくるのかその情報だけでも手に入ればまだ良かったのだが。

 なので予定通りに山頂に足を伸ばしてみたのである。


 そして、山頂に足を踏み入れるかなり手前で、十分に休憩と食事を取る事にする。PDSから水とドネルケバブのような物を取り出して簡単にお腹を満たす。

 ここから先は戦闘になるかもしれないからな。

 用心するに越したことはない。

 そして山頂に足を踏み入れる。

 ここまでは山の木々が周囲を遮ってくれていたのだが、山頂付近はどちらかと言えば大小様々な岩が転がっている地形であった。

 そして辺りを見回すと、まさに雲海の上に居る様な景色が広がっていた。その絶景を楽しむ余裕は俺には無かったが。

 見通しの良いその地形は、遥か遠くまでもよく見渡せる。

 これは隠れる場所が無いということでもあった。


 「ウサ正宗、どうだ?

 モンスターの気配はするか?」

 「いえ、申し訳ありませんが分かりません。

 ここは風の音が酷くて気配が読み取りづらいのです。」

 「じゃあ目視で確認するしかないか。」

 「はい、ここの地形は見通しが良い為、奇襲される事はまずないでしょう。

 ですが、同時にこちらから奇襲をしかけるのは難しいという事です。」


 とりあえず周囲を警戒しながら山頂を調べていく事にする。

 まったく人の痕跡が見当たらないのは、この山頂に立ち入る人間が少ない為であろう。

 そして、あたりを調べているとこの山頂で一番高い場所が不自然な形をしているのに気づく。

 なんだろう、とりあえず近づいてみるか。

 その不自然な場所に歩いてある程度接近すると


 「ご主人様、なにかが空から凄い勢いで接近してきます。たぶんモンスターです。

 気をつけて下さい。」

 「ああ、わかった。

 ひょっとして当たりを引いたか?」


 そういって話していると、遠くから


 「キョェェーーー!」


 という威嚇の鳴き声が聞こえてきた。

 どうやら、俺達に気づいたようだ。

 そいつが飛んで来た方角から推測すると、どうやら隣の山からやって来たようだ。

 徐々にその姿が俺の目にも確認できる大きさに近づいて来た。

 大きな翼に青い鱗、それに以前倒したワイバーンよりも大きいその巨体は、まさに俺達が求める特徴の飛竜と一致する。


 「大当たりだ、ウサ正宗!リンドブルムだ!

 まずは戦闘準備だ。」

 「いえ、残念ながらそんな暇はなさそうです。

 反対の麓からも、ワイバーンが飛行して来ています。」

 「げっ、マジか。

 トラップとか設置する暇はねーってことか。

 仕方ない、とりあえず武器を出せるだけ出しておくぜ。」


 PDSから投擲用のナイフやボウガン、爆弾などを取り出して近くの地面に置いておく。

 そこから飛竜を殺す為の武器である

 ブルータルブリッツ:ランク5:品質A+

 を装備して先に俺達に接近してきたワイバーン二体に対して先制攻撃を仕掛ける。

 ワイバーンとの距離はまだ100メートルくらい離れているが、こいつらの飛行スピードなら直ぐである。

 二体は同じ方向から飛んでいたので片方に命中させたが、翼膜に多少ダメージを与えるに留まり、姿勢を軽く崩したくらいで撃墜できなかった。

 ここにきて焦りが生まれたのか、クリティカルヒットにならなかった。

 その間ももう一体がこちらに接近してきていたので直ぐにボウガンの矢をリロードして、今度は外さない様に少し慎重に狙いを定めてから、放つ。

 こちらは30メートルあたりまで引き付けて撃ち込んだ為、見事に胴体に極太の矢が突き刺さり、めり込んだ。

 失速して山頂の岩や石に体を打ちつけながら地面に直角に激突、首が変な方向に捻じ曲がり、沈黙する。

 そうこうしている内にリンドブルムも接近してきてしまったので、リンドブルムに対して備える。

 図らずともリンドブルムとワイバーンから挟みうちの状態にされた。

 敵との距離が近くなりすぎたので武器を交換する。

 エアスライサー:ランク5:品質A+

 ここからはある程度接近戦である。

 まずは牽制の意味も込めて不可視の斬撃を縦振り下ろし、横なぎ払いと続けて放つ。

 しかし、リンドブルムはその不可視の斬撃が見えているかのように空中で滑空して回避する。

 いや、今の避け方は見えていたんだろうな。

 そして山頂の上空を旋回しながら俺達の様子をうかがっているようだ。

 今の不可視の斬撃は警戒させるのには十分だったようだ。

 もう一体のワイバーンはウサ正宗が相手をしていた。

 ナイフを左右の手から次々に投擲していくことで、こちらの立っている場所に強襲させないようにしていた。ただ、こちらはナイフなので投擲しても距離が近くないと致命傷にはならない為、牽制にしかならない。

 ワイバーンとリンドブルムは互いに連携をすることはなさそうだが、サッサと片方を片付けたい。

 隙あらばこちらに急降下して来ようとするので、不可視の斬撃を放ち追い返す。

 リンドブルムにはそんな事を繰り返していた。

 だが、魔力に限りがある以上はこのままではマズイ。

 接近戦をするか?

 いや、あの巨体だ。剣で斬り付けてもこちらが質量の差で押し負ける可能性が高い。

 ウサ正宗ならば斬り付けながらすり抜けるなんて芸当もできるのだろうが、俺には無理だ。

 ならばどうするか。

 そして作戦を決める。


 俺の前に大きな鉄の大剣をPDSから取り出して三本ほど並べて地面に突き刺す。

 同じ事を別の場所に移動して二回程繰り返す。

 いわゆる大きな三角形△になる様に配置する。

 そして大きなカイトシールドもPDSから取り出す。

 大剣の少し前とその周辺にはウサ正宗が爆弾を移動させてくれていた。

 この大剣は壁の代わりである。爆風を避けるための鉄の壁だ。

 大剣を設置している間もリンドブルムがこちらに降下しようとしたら、不可視の斬撃を放っていた。

 そしてこの布陣を気にせず突っ込んでくるワイバーン。

 俺は牽制の意味も込めてリンドブルムに剣を振るのを止めて、盾を構えてじっと待つ。

 そして、ある程度ワイバーンの距離が近づき後十メートルという距離で爆弾を起動させる。

 ズドーーーン!   ズドーーーン!!!

 大きな音とともに爆発が起きると爆風が辺りに吹き荒れる。

 大きな三角形△になる様に大剣を配置したのは、爆風がその三角形△の中心にいる俺らに届かないような形にする為であり、かつ相手の視界が爆風で一時的に遮られる事を目的としていた。

 そこに爆風を斬り裂いて不可視の斬撃が飛来する。

 爆風でこちらの様子も分からず、まさに胴体を断ち切られて一刀両断されるワイバーン。

 爆弾の存在は知らなかったのであろうリンドブルムも、ある程度こちらの行動には警戒しながらも接近していた為に、更に起爆した爆弾の爆風と音に驚いてしまい、不自然な回避運動をして姿勢を崩してしまう。

 そこにもう一度不可視の刃を放った。

 今度は翼を大きく切り裂く事に成功していた。

 回避行動も不自然だった為に、急速に落下していくリンドブルム。

 墜落した角度的に地面に対して斜めに落ちていったようだ。

 軟着陸できずに山頂の岩や石を体に擦りつけながら盛大に地面を滑っていく。

 それだけでかなりのダメージであろうが、未だに生きているリンドブルムに対して俺は油断せず、離れた位置から胴体にブルータルブリッツの極太の矢を叩き込み、その命を奪った。


 あたりに他の生きているモンスターがいないか確認する。

 先に墜落して沈黙していたワイバーンも死んでいるのを確認し、一刀両断されたワイバーンと一緒にPDSに回収した。

 それからこのリンドブルムもPDSに収納した。

 これでなんとかこちらの討伐目標は達成できた。


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