リンドブルム1
準備に二日ほど時間を掛けて、ロックドラゴン討伐隊の準備が完了してから町を出る事になった。
ロックドラゴンは幸い一直線にディナントの町に向かって来ておらず、あちこち蛇行しながら移動しているので少し時間にゆとりがあった。
その間、冒険者ギルドから正式に今回の事態が町の人々に公表された。
ロックドラゴン討伐隊を編成している事、同時にリンドブルムがこの町に襲来する可能性がある事。
もしも、冒険者(俺ら)がリンドブルムを足止めできなければ町にやってくるかもしれないので、町の人にも自衛の為に防衛隊に協力してほしい。そう呼びかけた。
すると、戦う事は出来ないけれども多くの人が町の防衛隊に協力してくれる事になった。
自分達の町を自分の手で守りたい。
そんな篤い(あつい)気持ちが伝わってきた。
出発前に今回相手をするリンドブルムと、出てくるであろうワイバーンについて簡単な説明を受けた。
ワイバーンは緑の鱗と飛行能力が特徴で、大きさは大体小型の飛行機くらいのものが平均的な個体である。
リンドブルムはワイバーンを更にニ回り以上大きくしたものだ。
大きな翼に青い鱗、ワイバーンより更に高い飛行能力が特徴の飛竜である。
ワイバーンは、飛竜としては下位のドラゴンである。
上位種のリンドブルムはカテゴリーは下位のドラゴンの中でも上級に位置するドラゴンだ。
ファイアブレス等の火は吹けないし、他のドラゴンに比べれば防御力も低めだ。
しかし、リンドブルムの飛行能力は上位のドラゴンと遜色無いものである。
そのデカイ体躯で襲いかかられるだけでも、人間にはとてつもない脅威であった。
そして、俺達はリンドブルムに対する備えを十分に準備をしてから町を出発した。
まずは西の森の先を目指す。
どこにリンドブルムがいるのか確定はしていないので、とりあえずの目的地はベルヒエ山脈とその周辺である。
ひたすら徒歩で移動するので途中で休憩を適度に挟みながら、半日ほどかけて西の森を抜ける。
思えば俺が町の外から出て、これほど遠くまで来たことはいままで無かった。
基本的に自分のスキルを磨く事を最優先の課題としていたから、レベルもあまり上がっていない。
冒険者ギルドで討伐クエストも受けていないので、町の外に出てモンスターを倒していなかった。
そもそも、命がけで倒す理由があまり無い。
町で暮らすには十分過ぎる資金が手元にあり、武器も充実している。防具に関しては若干弱いが、それ程緊急で必要なものでもない。
前回討伐したブラックウルフの素材を使い、特殊アイテム作成で防具を作ったしね。
ブラックウルフレザーヘルム:ランク3:品質C+
ブラックウルフレザーアーマー:ランク3:品質C+
ブラックウルフレザーガントレット:ランク3:品質C+
ブラックウルフレザーフォールド:ランク3:品質C+
ブラックウルフレザーブーツ:ランク3:品質C+
流石にグレイウルフよりもしっかりした作りの物が出来た。
防御力も上がり、色も黒くなったが見た目はそんなにグレイウルフのものと変わらない。
でも討伐したブラックウルフは大きかったので、素材は余った。
今回はこの防具を装備している。
そしてベルヒエ山脈へ向かう途中でワイバーンに遭遇する。
三体同時に現れたが所詮下位のドラゴン、地上からボウガンを放ち各個撃破していく事にする。
ブルータルブリッツ:ランク5:品質A+
の威力は凄まじいからな。
一撃必殺とはいかなくても、ワイバーンの鱗の防御力ならば容易く突破してくれる。
俺はまず一番高度が下がっていて俺に距離が近いワイバーンに狙いを定めてブルータルブリッツの極太の矢を放つ。
空を悠々自在に飛んでいたワイバーンは突然翼膜を貫かれ、その痛みで高度が下がる。そこをウサ正宗が投げナイフで追撃して翼を切り裂き、続く攻撃により致命傷を与えられて死ぬ事になる。
突然仲間のワイバーンが高度を落としていく姿に驚きつつも、俺達の姿を確認すると他の二体も俺達に襲い掛かってきた。
近づかれる前にもう一体にブルータルブリッツを放ち、胴体に決まる。
ドンッ
と音がして急降下していたワイバーンの体が少し衝撃で浮かびあがり、その後は墜落していった。
最後の一体はこちらに向かってそのまま襲い掛かってきた。
だが、接近してその巨体から噛み付き攻撃を仕掛けられる前に、俺は武器を持ち替えて待ち構えていた。
エアスライサー:ランク5:品質A+
魔力を消費して不可視の空気の刃を飛ばす魔剣。
エアスライサーの放つ不可視の刃は20メートル以上の射程であるのが分かっているので、確実に当てる為に20メートルの距離に相手が近づいて来た途端に剣を振り下ろし、不可視の斬撃がワイバーンに襲い掛かる。
不可視の一撃がワイバーンの翼を大きく切り裂き、飛行が怪しくなった所に更にもう一撃飛んでくる。そして両翼を切り裂かれてしまう。
そこでほとんどの飛行能力を奪われて墜落、勢いが付いていた為に地面と激しく接触してガリガリその体を削り、そのまま墜落の衝撃で死亡する。
上空に放つ不可視の斬撃は味方を気にすることがなくて自由に振れる。
だが、ブルータルブリッツ等のボウガンに比べると射程が短い。
なので、先にボウガンでダメージを与えて、距離が近くなったらエアスライサーに切り替えた。
一応ブルータルブリッツで撃墜したワイバーンにも死んだか確認する為に不用意に近づいたりせずに、離れた位置からブルータルブリッツを急所に叩き込んで完全に沈黙したかどうか、念には念をいれて止めを刺す。
油断して怪我をするなんてアホらしい、キッチリ止めは刺す主義なので。
ワイバーン達の死骸をPDSに収納していると、とりあえずもう時間も夕方が近いので野営ポイントを探す事にする。
西の森を抜けるだけで時間がそれなりにかかってしまった。
だが、あまり無理をして疲れた状態でリンドブルムと対峙するのは遠慮したい。
最低限こちらの体調が良い状態で戦わないといけない。
それから大きな木の陰に野営ポイントを定めて、夕飯を取る。
食事は町の屋台で大量に購入しPDSに入れておいたドネルケバブの様なものと、肉の串焼きである。
そして俺は知らなかったのだが、食事の最中にウサ正宗からこんなものを渡された。
祝福の実。
レベル上げの効果を一時的に抑える効果がある。
長距離移動や洞窟での戦闘なので、長い期間休んでいられない状態の時に使うものらしい。
見た目は木イチゴみたいな小ぶりな実であった。
これを一日一粒食べると成長痛などの発生を遅らせる事が出来るとのこと。
へーー。
確かにこれは遠出して安全に睡眠が出来ない時には必要だ。
どうやら俺のレベルアップ時のステータスの上昇の仕方はかなり異常に高い様だ。
これが異世界人の恩恵なのか?
それとも称号:異世界の来訪者の影響なのか理由は分からないが、かなりのアドバンテージである。
もっとレベル上げをするべきかと思うのだが、急激なレベルアップは色々と肉体の動作に問題が出てくるのでウサ正宗に止められていた。
まあ、理由はなんとなくだが分かる。
普段は一般人の身体能力しか持たない者が、突然オリンピック選手並みの身体能力を手に入れたらどうなるのか?
その一般人は、100メートルをオリンピックの選手と同じ様なスピードで走る事が出来るのかといわれたら、答えはノーだ。
早く走る為にはそれこそ様々なトレーニングが必要であり、技術がある。
仮にハードだけ最高の物にしても、ソフト面が駄目ならその性能を十分には引き出せないであろう。
俺のレベルアップの成長の仕方は非常に歪な成長なのだろう。
だから、あまりウサ正宗はレベル上げにこだわっていなかった。
むしろ少ない力をどうすれば活かせるのか、効率的に体を動かすにはどうすればいいのかを重点的に鍛えていた。
まあなんでレベルは上がらなくても成長はしている、ハズだ。
そんな事を考えながら食事を終え、夜中はモンスターの夜襲に備えて交代で見張りをする事を決める。
この日は俺がこの世界にきてから初めての野宿をして休む事になる。
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