対人訓練2
お互いにまずは10メートルほど距離を取り、武器を構える。
やると決めているから、特に合図もなかった。
「うぉぉぉーー。」
俺はまずは様子見の為、相手の出方を観察しようと剣道でいう正眼の構えで<待ち>の姿勢でいたが、相手は気にせず突っ込んできた。
大きく横に振りかぶり、ハルバードによるなぎ払いをしてくる。
俺はその攻撃をそのまま受けず、構えは崩さずに一歩下がって回避する。
すると避けられたと判断したら、今度はハルバードを振りかぶった体勢のままオーランはタックルしてきた。
走って勢いが乗っている状態であるので、俺の剣先が相手の肩のショルダーガードに弾かれるように受け流され、俺は対応出来ずにタックルをもろに受けて吹っ飛んでしまう。
「ぐはっ。」
俺は二メートルほど元いた位置から弾き飛ばされた。
強烈な体当たりである。
そこに追撃でハルバードの縦の振り下ろしが落ちてくる。
だが、直ぐに横に転がって回避しながら俺は立ち上がった。
「やるな、オーラン。」
「今ので決まったと思った。
さあ、続きをやるぞ。」
そして今度は俺から仕掛ける事にする。
間合いが俺の剣よりもかなり長い。
俺の剣は1メートル10センチぐらい。
たいしてオーランのハルバードは大体2メートル近い大きさだ。
リーチだけで二倍はある。そして重く一撃の威力が高い。
だから、向こうには無い速さと手数で攻めるしかない。
俺は右、左とジグザグに動く事で相手に間合いを掴み辛くさせながら距離を詰める。
ハルバードの間合いに入った瞬間にオーランの突きがきた。
その突きは体を半身にし横に移動しながら剣で受け流す。
そしてそのまま、相手の武器の内側に入り込む。
かなり距離が近くなった。
「でぇいゃーーー!!」
気合とともに左上からの逆袈裟斬りで斬りかかる。
オーランはハルバードを受け流されて少し体勢を崩していたが、慌てずに突きの構えから引き戻して、剣をハルバードの持ち手に近い柄の部分で受ける。
そこからは俺の剣の連撃であった。
縦斬り、横になぎ払い、そして突きを一気に連携して叩き込む。
キンッ、キンッ、キンッ。
全てオーランに弾かれるが、胴体にかすめる攻撃も有り、かなりきつそうだ。
さらに攻撃を叩き込むが、突きで距離が出来てしまい、オーランもさっきより楽にハルバードで受ける。
「くっ、早い。」
オーランはそういいながらも受けに失敗はしていない。
そして一度両者ともに距離を離す。
「なかなかやる。
動きのスピードが思っている以上に速い。」
「そちらもな、突きが早いし受けも上手い。」
そしてまたぶつかり合う。
互いに再び距離を詰める。
ハルバードを何度も俺に叩きつけてくる。
それを剣で受け流し、体を使って避け、反撃をする。
そんな動作を何十回か繰り返したらオーランの動きが変わった。
オーランは大振りの一撃は止めて、ハルバードの柄を短めに持ち、コンパクトななぎ払いからの振り下ろしをしてくる。
俺は両手で剣を持ち、初撃のなぎ払いを受けて、振り下ろしをパリングの様に弾く。
だが、弾いた斬撃は重く手が痺れる。
そこに更に追撃の突きが来た。
剣では受ける暇も体勢も整っていなかったので横に移動して避けるが、避けきれずに防具に突きが当たる。
ドンッ
と音がしたと思ったら俺は吹き飛んでいた。
「そこまでです。」
ウサ正宗がそう宣言する。
するとオーランも構えを解いた。
吹き飛んで仰向けに寝転んでいる俺。
振り下ろしに比べれば威力はそう高くもなかったが、実戦なら胴体に穴が空いてもおかしくない一撃であった。
「いてて、やられちまった。
最後の突きはよけきれん。」
「そちらもよくハルバードと打ち合えたな。
間合いが二倍近く差があればそれだけで有利なんだがな。
人によっては一方的な展開になるだろう。」
「そっか、やはりリーチの差はデカイか。」
攻撃の一撃一撃の重さがあり、距離を詰めるのに苦労する。
無策で突っ込めば剣で攻撃する前にノックダウン。
やはり、速さとフェイントで距離を詰めてから攻撃するしかないか。
俺の現状の手札だとそうなる。
PDSの武器使って勝っても訓練にならないからな。
それにしてもレベルアップの恩恵をひしひしと感じる。
簡単に言えば武器同士で斬り合う形になっても、パワー負けしているがまだ踏ん張れる感じだし、剣の振る速度がかなり上がっている。
移動するスピードもかなり上がった。
戦っている最中にそれらを強く感じた。
以前の俺なら、もっと早く疲れが貯まり動けなくなっている可能性が高い。
剣を握る手に痺れが走るのももっと早かっただろう。
「少し休憩しよう。」
「ああ、わかった。」
そういって俺は宿から持ってきていた水筒から水をガブガブ飲み干す。
ウサ正宗が気を利かしてもう一つ用意していたのをオーランに渡す。
「おう、悪い。
いただくよ。」
そういってオーランも受け取った水筒から水を飲む。
「しかし、お前さんよりもこっちのラビッター族が強いとは。
親方がいうから事実だろうが、見た目だけで判断出来ない。変な気分だ。」
「そういうなって。
俺のこの剣術もそこのウサ正宗から教わったものだし、遥かに俺よりも強いのは確かだ。」
「そうなのか。
この世界は不思議に満ちているな。」
そういってウサ正宗をジロジロ見るオーラン。
やはり実際にその目で確かめてみないと普通は分からないか。
親方は手を見て全身を観察したら凄腕と判断していたが、どういう基準で判断したのか俺にはわからんしな。
「じゃあ、ウサ正宗とも戦って見るか?」
「いいのか?
それではせっかくなので頼む。」
「ウサ正宗もいいよな?」
「はい、ご主人様。」
そして、少し休憩してからウサ正宗はオーランと戦う事になった。
適当に十メートル離れたら開始である。
「うぉぉぉーーー。」
「ッフ。」
ウサ正宗に走りながら突っ込んでくるオーランであったが、それよりも圧倒的に早くウサ正宗は間合いを詰めた。
まだハルバードを横に振りかぶろうとした状態のオーランに一瞬で近づき、ハルバードを搔い潜って相手の懐に飛び込み、ナイフを首に掠めさせる様にしながらオーランの脇をすり抜ける。
オーランは思わず振りかぶったまま、たたらを踏む。
その背後にはウサ正宗がいた。
「一本、そこまで。」
正直なにが起こったのやら分からず、呆然としぎみのオーラン。
あまりのスピードの違いに文字通り手も足も出なかった様だ。
「お疲れさま、ウサ正宗。」
「はい、ご主人様。」
「お、俺は負けたのか?
とんでもなく早い何かが俺の横をすり抜けていったぞ。」
「あーー、あんまり気にするな。
俺らとは格が違う。鍛冶の腕前で親方に勝てないのは今はまだ当然だろう。
そういうもんだと思っとけ。」
「そうなのか。
納得いかん気がするが、ウサ正宗が強いのは良く分かった。」
そういってがっくりとしているオーランであった。
読んでいただきありがとうございます




