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ブラックウルフ1

 正直冒険者ギルドがどうなろうと知ったことではないのだが、グレイウルフがそこかしこで現れているらしく、行商や旅人が町から出られず、新しく町に入ってくるものも減ってしまうため、町には大打撃なんだそうな。

 食料の備蓄なんかは町の住民の分だけでも三ヶ月分は備蓄が倉庫にあるとの事で、飢えの心配はしなくともよさそう。


 「なあ、ウサ正宗。

 ブラックウルフの件だがどうする?

 ギルドでの討伐隊に参加するのはメリットとデメリットがあるし。」

 「そうですね、今現在ギルドがどの程度のランクの冒険者が、何人クエストに参加するかも明示していませんでしたし、町にはあまり上位の冒険者が居ない可能性が高いかもしれません。

 参加が確定していれば、戦意高揚のためにも高ランク冒険者の存在は公表されるでしょう。

 ブラックウルフ自体は単体でそこまで強いモンスターでは有りませんが、統率されたグレイウルフが多数となれば、クエスト難易度は跳ね上がります。

 それにBランクの冒険者が倒される程という事は、Bランククエスト以上なのかもしれません。」

 「そうか、ならば烏合の衆の可能性もあるってことだよな。

 はぁーーー、それはデメリットがでか過ぎだな。

 俺達の手の内をさらす機会になるし、森の中でまた人間に襲われる事も考えると、ギルドの討伐隊に参加はパスするのが正解か。」


 まあ、俺らは最悪この町から出て行って別の町に移っても全然問題ないんだが、ここにはお世話になった竜の息吹亭のミリーやその親父さん、工房のゴッサム親方なんかもいるしな。

 そういう町の人達が襲われる可能性は低いが、彼らがいるなら、ブラックウルフを退治しようか。

 ブラックウルフの素材が一番の理由かもしれんが。

 ギルドの討伐隊ではなく個人での戦いで行くか。


 「なわけで、ブラックウルフを狩りに行きたいんだが、いいか?」

 「ご主人様はお優しいのですね。

 どうぞ、思うが侭になさってください。」


 なにやら生暖かい視線をウサ正宗から感じたが、気にしない。

 べ、べつにお前らのためじゃないんだからねwww


 一旦宿に戻り、戦いの準備を始める。

 大抵の荷物がPDSに入っているとはいえ、流石に普段着のままではキツイ。

 

 「瞬時装着、グレイウルフ装備S。」


 グレイウルフレザーヘルム:ランク1:品質C

 グレイウルフレザーアーマー:ランク1:品質C

 グレイウルフレザーガントレット:ランク1:品質C

 グレイウルフレザーフォールド:ランク1:品質C

 グレイウルフレザーブーツ:ランク1:品質C


 以前、森に薬草採取の時に倒したグレイウルフの素材はたくさんあったので色々試しに作ってみた。

 特殊アイテム作成のオート作成モードでもレシピがあったので作れたのだが、練習を兼ねてマニュアル作成モードで一式作ってみた。

 品質はそこそこで軽い着心地だ。防御力も低い事になったが、ジージャンに比べれば防御力はあるし、まあいいか。

 四つんばいになるとグレイウルフっぽくなれる装備である。

 わんわん。

 散々グレイウルフは牙や毛皮の剥ぎ取り等をしていた。

 肉を解体するときに刀の試し切りや、心臓の位置、どこに急所があるのか等を丁寧に調べた。

 流石に町中でやることじゃなかったから、わざわざ町の外まで行って、川の近くで作業した。

 分かったことは、未だ俺にモンスターを居合い刀で一刀両断する様な技量は備わっていないという事。

 バカ重い人間の背丈くらいある大剣を叩きつければ普通に両断できたが、切断と重さで叩ききるのは技術が違うからな。

 それでも始めに比べれば、段違いで上達してきた。

 ステータスもレベルは上がってないが微増した。

 以前のステータスが


 名前:鏡竜司

 職業:武具マイスター

 レベル:5

 体力:104

 魔力:48

 SP:93

 筋力:58

 俊敏力:39

 精神:51

 知力:113

 器用さ:62

 スキル:特殊アイテムボックス、特殊アイテム作成、ラビッター族召喚、鑑定

 盾術1 機械弓術1  

 称号:異世界の来訪者


 で今の強化訓練後は


 名前:鏡竜司

 職業:武具マイスター

 レベル:5

 体力:108

 魔力:55

 SP:103

 筋力:64

 俊敏力:45

 精神:57

 知力:115

 器用さ:67

 スキル:特殊アイテムボックス、特殊アイテム作成、ラビッター族召喚、鑑定

 盾術1、機械弓術2、剣術2、双剣術1、体術1

 称号:異世界の来訪者 


 特に剣術2と双剣術1、体術1がつく程度にはなった。機械弓術も上がった。

 遠距離も一応練習したからな。

 モンスターと戦っていないので、レベルは上がっていないが訓練の成果としては十分か。

 少なくとも刃物の扱いには多少慣れた。


 準備が整ったら町の外に、まずは情報のあった西の森に行く事に。

 今日の優先目標はブラックウルフではなく、その周りにいるグレイウルフの数を減らす事だ。

 数は力だ。

 弱くても、数が集まればバカにならない脅威になる。

 その事を意識して、グレイウルフを優先して狩りに行く事にする。

 森に到着すると、まずは数を減らす為に森に罠を設置していく。

 いわゆるトラバサミである。

 気づかれない様に隠蔽しておく。

 他にもいくつかの罠を設置して、罠エリアと交戦したときの戦闘エリアを事前に設定し、誘き寄せる作戦で行く。

 ある程度柔軟性のある作戦を立て、罠エリアに誘導できなかったケース等も想定しておく。

 設置が終わってから、森の探索をする。

 どうやら、グレイウルフは少し奥の方に居る様だ。

 いくつか分かれて気配があるらしい。

 気配の数が少ない方に行く事にする。

 俺は緊張しながらも、腰を低めにしてゆっくりと歩き、移動する。

 森の奥に移動する途中で、遠くの方からオオカミの鳴き声が聞こえた。


 「うぉぉぉーーん。」

 

 未だ向こうに気づかれていないと思っていたが、何かに引っかかっていた様だ。

 気づかれたようです。

 ウサ正宗がそう小声でいう。

 ここからは鬼ごっこと行こうじゃないの。


 俺達は後ろにウサ正宗、前に俺の順で駆け出した。

 目指すは罠エリアである。

 森の地面は腐葉土があり、ふかふかしていて足を滑らせない様に気をつけながら、追ってきているであろうグレイウルフ達との追いかけっこを演じた。

 足を我武者羅ガムシャラに動かすのでは無く、地面と水平に踏み下ろす。

 向こうは四本足だから滑ってもリカバリーできそうだが、転倒したらこちらは一気に距離を詰められてしまう。


 「はぁはぁはぁ、もうそろそろエリアに入るな。」

 「ええ、罠を踏みつけ無い様に気をつけましょう。」


 ここで順番を入れ替えて先を急ぐ。

 俺には全ての罠の位置が分からないからな。

 まだ姿は見えないが、なんとなく俺も気配を感じるし、時折グレイウルフの遠吠えが聞こえてくる。

 俺は最近の訓練で散々足場の悪い道を走らされていたが、ここに来てその成果を実感している。

 剣を振るうだけの訓練ではここでリタイアしていてもおかしくは無い。

 やはり最後は体力がものをいうのか。

 目的の場所である罠エリアに入り、足の疲労もかなり感じていたが、頑張って所定の位置である背の高く幹が頑丈な木の上に登る。あらかじめ縄梯子を取り付けてあったのでスムーズに登れた。

 この木はグレイウルフが登って来れないような大木を選んでいるので、たぶん安全なはずだ。

 そしてウサ正宗をおとりに使い誘導。

 森の中からは


 「きゃんん。」

 「ぎゃん。」


 などのグレイウルフ達の悲鳴が聞こえてくる。

 考えなしに罠エリアに足を踏み込んでトラバサミの餌食になっているグレイウルフ。

 そうなって身動きが取れなくなった個体は放置して、俺の居る木に向かってくる個体を優先的に迎撃していくウサ正宗。

 俺もPDSから取り出したボウガン

 ハードクロスボウガン:ランク4:品質A

 を取り出して木の上から射撃で応戦する。

 こいつは矢の充填がしやすく、飛距離も長めで反動が少ないのが利点のボウガンだ。

 当然攻撃力は、

 ブルータルブリッツ:ランク5:品質A+

 には及ばないが、グレイウルフぐらいなら十分な殺傷力がある武器だ。

 罠にかかって動けない相手に追撃で木の上からボウガンを撃ち込む。

 俺は安全圏で楽チンなお仕事です。


 ウサ正宗も罠を越えてきた勇敢なグレイウルフ達を相手に奮戦している。

 爪を振りかざして飛び掛りながら襲い来るグレイウルフに対して、半歩ほど体を横にズれるだけでギリギリに回避し、着地寸前の無防備な首にナイフを一線、振り下ろして絶命させる。

 ウサ正宗は歩きだす。自分に向かってくる相手には確実に死の洗礼が待ち受けていた。

 ウサ正宗からすれば、グレイウルフは遅すぎる相手であった。

 自分が五歩歩く頃にようやく相手は一歩進んでいる、それくらいに差があった。

 大型ナイフを振るうその腕は、あまりの速さに肩から先が見えない程である。 

 単体では歯が立たないと悟ったのか、複数で襲い掛かるグレイウルフ。

 だが、三匹同時に襲い掛かっても、ウサ正宗の攻撃範囲に入った瞬間に腕が振り下ろされる。

 正面から来た二匹は、左右の手にあるナイフで頭を唐竹割りにされて脳漿を撒き散らし。

 後ろから迫った相手には、相手を確認するまでもなく噛み付き攻撃をしゃがみこんで回避し、ナイフを逆手に持ち替えて頭の額に突き刺さす。ほとんど一撃でかたが着いた。

 相手の動きがどう来るのか見え、しかも自分よりもあからさまに遅い相手ではどうしようもない。

 そして二十匹以上刈り取ると、


 「うぉおおーーーーん。」


 遠吠えが聞こえてきてグレイウルフ達は下がり始める。


 「そうは問屋がおろさないんだぜ。」


 第二の罠を発動させる事に決めた。


お読みいただきありがとうございます。


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