工房
工房を探すにも、もう夕方が過ぎて暗くなっていたので、次の日に探すことにした。
夕食は相変わらず自室でいただく。
今日のメニューはスープスパゲッティみたいな物にサラダが付いたものだった。
「いただきます。」
スープの中にあるパスタもグデグデな感じでは無くて、ウドンに近い歯ごたえで面白い。
トマト風味でイタリアンな感じ。でもスープの色はグリーン。
ちゅるちゅるおいしく食べました。
食後は二日振りのお風呂に入り、汗と汚れを落としてスッキリさっぱり。
あー、生き返るねー。
ビバビバ。
お風呂から上がると次の日に備えて、サクサク寝ることにした。
翌日の朝はいつもより早めに起きれた。
寝巻きから瞬時装着で着替えをして、ウサ正宗とともに軽く朝の稽古をする。
柔軟と体力トレーニングとしてランニング、その後にまだまだ未熟な素振りをこなした。
汗を拭き、身だしなみを整えて自室に戻る。
それから朝食を頂く。
運動後の食事はうまいね。
今日の予定は、まず工房の場所が分からないので先に武器屋に行って、出来れば刀鍛冶の工房を紹介してもらうつもりだ。
なんで職人街地区にある前回利用した武器屋にお邪魔する事にした。
「こんちわ、どうも。」
「おう、おまえさんか、今日はどうした?
また買い取りか?」
「今日はお願いがありまして。」
そういって事情を説明する。
練習用に刀身に樋入り(ひいり)が入った刀が欲しい事。
練習用なのであまり高いものは必要ない。
こちらで刀を鍛えている方を出来れば紹介して欲しい。
出来れば実際に打つ場面も見せてくれるとなおいい。
そう事情を説明した。
ただ、見学させてくれっていっても、見知らぬ他人に秘伝の技があるかも知れない鍛冶の現場に簡単に入れてくれそうには無いんだよな。
それにこの町の鍛冶レベルを知りたかったし。
なんでそう説明した。
「そうか。それなら紹介できる奴を知らんでもない。
気難しいヤツだが、そいつの弟子にでも鍛えてもらえれば安くつくかもしれん。」
そういって工房の名前と場所を教えてくれた。
紹介料として、ゴロツキの武器をひとつ渡しておく。
礼を告げて武器屋を出る。
工房の場所はここから少し離れていた。
いくつか裏通りの様な狭い道をとおり、その工房にたどり着いた。
「ごめんくださーーい!!」
がーーーん、がーーーん、がーーーん
と金属が何かを叩く甲高い音が辺りに響いている。
結構うるさいので俺も大声を出して工房の中に呼びかける。
それでもしばらくの間金属を叩く音はやまなかった。
「だれだ、何の様だ?」
工房から眼光の鋭いヒゲのドワーフが出てきた。
なんだか、仕事の邪魔をしてしまったようだが。
「通りの武器屋から紹介されてここに来たんだが、こういうのは頼めるか?」
でまた、説明。
練習用に刀身に樋入り(ひいり)が入った刀が欲しい事。
練習用なのであまり高いものは必要ない。
出来れば実際に打つ場面も見せてくれるとなおいい。
説明を終えた後、ドワーフがこちらに近づいてきて
「手を見せろ。」
そういったので素直に右手を差し出す。
じっくり手の相でも確認しているかのように手のひらを見つめると
「そっちのも手を見せろ。」
ウサ正宗にも手を見せることを要求。
ウサ正宗の許可を求める視線に、俺はうなずいてた。
で、今度もじっくり手を確認しているのだが先ほどよりも長い。手の相はないんだが。
俺より細かく手の平を見たら、それ以外にも手首や腕、背中や足などをじっくり観察していった。
「そっちの黒髪は駄目だが、こっちのちびっこいのは合格だ。」
そういって工房に入っていった。
あれ、俺の武器が欲しくて来たんだが。
少し待つとまた出てきて
「おう、これをもって振ってみろ。」
そういわれ、渡された刀を構えて縦に切り下ろす。
それを何度かやったら、頷いて
「やはり完全な素人か。
刀は繊細な武器だ。
素人が振るう為の刀なんざ今ここにはねえよ。
俺の武器は飾る為やろくに使えねえヤツには渡したくないんだが、そこのちびっこいのが久しく見ない凄腕だったからな。
そいつがついているなら特別に打ってやろう。」
で工房の中に案内された。
ドワーフの矜持的なもので、武器を飾っているだけのお偉いさんからの依頼すら断る事があるとか。
さっき刀を振った理由は、俺に最適なサイズの刃渡りやバランスを吟味していたらしい。
工房には他のドワーフもいたが、もくもくと作業している。
「俺がこの工房の主でゴッサムという。
お前用の頑丈で扱いやすい刀を打ってやる。
練習用だから複数本必要だろう?とりあえず三本作ってやるから足りなくなったらまた来い。」
そういうと実際に刀を打っている現場を見学させてくれた。
どうやらウサ正宗を気に入ったようだ。
完全に俺はオマケ扱い。
だが、実際の鍛冶の現場は凄かった。
まずひたすら暑い。
金属を溶かす為の炉があるから仕方ないが、刀を打っているゴッサム親方からかなり離れていても強い熱気が伝わってくる。
ぶわっと汗が噴出す。
そして、まず初めにインゴットを取り出して炉に突っ込み、真っ赤になった鉄を何度も何度も叩く。
ある程度細長く伸ばしたら、鉄を折り返してまた叩く。
それを何度か繰り返す。
叩くたびに火花が周囲に飛び散りなんとも過酷だ。
そして、徐々に形が剣っぽい形状に近づいてくる。
途中で水に突っ込んで焼き直しをしたり、様々な工程を経て出来上がる刀。
それを見てスゲーっと思ってじっとみていた。
うん、これは俺の適当なイメージでの作成じゃ刀は無理だわ。
しっかり目に焼き付けて、出来るだけものにしなくては。
刀が出来上がるまで黙ってみていた。
そして出来上がった刀の刀身をみる。
未だ研いでいないので波紋も刀身にないし、握る柄もない刀身のみの刀だが、一連の匠の技を見て俺は酷く感動していた。
機械も使わず手作業だけで刀の形に整えていくその技術はすばらしい。
いやー、いいものを見れたわ。
実に満足満足。
てっきり鍛冶なんてハンマーで金属ぶったたいているだけで、なにそれ美味しいの的なものだと考えていたが、見方が変わったね。うん。
刀身を研ぐのに時間がかかると言われたがそのまま見学続行。
結局その日に最後まで完成しなかったのだが、ここに来た甲斐があった。
この日は工房での見学でほとんど終わった。




