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灼熱の女神 後編

 気付いたら、俺は毛布を被って転がっていた。テントの外はかなり明るい。もう朝としての時間がだいぶ経過したようだ。

 さて、うん、何も着て無いね。

 俗に言う所のすっぽんぽんだね。

 またも衆目(仲間だけだけどさ)の中でやっちゃったんだ。そんでまたも気絶したのね、俺。

 いい加減慣れようよ俺、余裕を持とうぜ。

 いくら口から内臓を引きずり出されているような感覚があってもさ、もう少し頑張れるだろ。男なんだしさ。

 ううむ、なんか毎度自己嫌悪に陥るんだよな。

 なんかこう男として、耐えられないものがあるんだ。

 女が最中に気を失うとかはさ、なんかそれは正しいというか男としてある種の誇らしさというか、そんなものが感じられる話だが、男が襲われて気を失うってどうよ?

「はぁ~い、イサヤ。そんなカッコで色っぽく悶々としてると襲っちゃうぞ」

「うひゃあ」

 俺が変な悲鳴を上げたのはテスタが俺の生の尻を撫で上げたからだ。

「やめんか!俺を殺す気か!」

 最初の頃に念を押された。

 このチームの人間は全て団長の持ち物だから、下手な手出しをすると許さないと。

 俺がテスタを襲ったとか思われたら俺は間違いなく死ぬ。

「あら、貴方だってサフィの持ち物なんだから、あたしだって殺されちゃうかもよ」

「なるほど、持ち物同士がふざけあったらどういう判断が下されるのかな?」

「試してみる?」

「嫌だ」

「うふふ、一途なんだから」

 テスタは一人納得してニヤニヤしている。

 女というのはどうしてこう思い込みが激しい生き物なんだろう。

「あ~、晩飯食いっぱぐれた」

 腹が減った。思い出したらなんかふらふらするし。

「激しかったもんね、いつもながら」

 激しいとかいう問題でもないけどね。あれってなんかこう違うもんな気がする。

「飯ある?」

「んとね、さっき魚獲ってきたんじゃないかな?ジルのやつがさ。ねね、一緒に水汲みに行こうよ」

「腹が減って動けん」

「え~サフィに言いつけてやる」

 なぜそんな事を団長に言いつけなきゃならんのだ。というか俺がこんな状態なのは全部彼女のせいなんだぞ?


 サファラス。

 それが団長の名前だ。

 そう、なんと恋人を焼き殺したとかいう女神様の名前なんだよね。

 普通親はこんな名前娘に付けないよな?だから恐らくこれって自分が勝手に名乗ってるだけで本当の名前じゃないと思うんだ。

 でも、まぁ彼女にやたら似合ってる名前ではあるが。

「ええっとね、服着るからあっち行っててくれるかな?」

 なんか微妙に無駄な気はするが一応交渉してみる。

「なんで?今更恥ずかしくないでしょう?」

「いや、今更でも人としての最低限の尊厳は守りたいと思うんで」

「変なの」

 テスタはケラケラ笑いながらテントを出てくれた。

 なんでも言ってみるもんだな。

 毛布を抜け出して丸めて置いてある服をごそごそやっていると、

「体に自信がないとかか?」

 元凶が顔を出した。

 露わになった肩に黒髪がさらりと流れ落ちてやたら色っぽい。

 なんで肩が露わかというと下着姿だからだ。

「なんですか?朝っぱらからお誘い?」

「それもいいが、テスタロッタがお前が初心な小娘のような事を言ってると言ってきたから見に来た」

 待てや。

「いやいや、裸でうろつくのが平気とかいうのは、とりあえず俺の中では有り得ない選択なんです」

「お上品なんだな」

 裸を見せない人間はお上品なのか?彼女の中ではそうなのか?

「体に自信がないだけです」

 なんか違う言い訳をしようぜ?俺。

「ふーん」

 彼女の目は俺の全身を舐めて、しばし宙に浮く。

 比べたな?今、明らかに誰かと比べたな?

「いいんですよ、赤裸々に真実を述べても」

「いや、私は別に理想の体型とかこだわりは無いから、お前に不満はないよ」

 えっと、もしかして気を使ってくれた?

 いや、まさかね。

「それは嬉しいですね。でもそういう開放的な考え方に慣れるまでもう少し待ってくれますか?」

 彼女は口元をうっすらと吊り上げると、俺の耳に触り、そのまま顎に指を滑らせた。

 そんな事をされると自分の顎に微妙な髭が生えているのがやたら気になる。

 いっそゴワゴワとした男らしい髭なら良かったのに。

「別に慣れなくてもいいよ。女に振り回される男もイイと思うからね」

「出来れば俺は振り回したいですね」

 今朝は機嫌がやたら良いな、

 団長。硬化の召喚が意外と楽しかったのかな。

「それは生意気」

 唇が指の触れた所に降りてくる。

 俺は焦りを見せないように彼女の背に手を回すと、下着の上からその弾力のある筋肉をなぞった。

 あ、今更だが俺裸だよ。いいのか?

 彼女の唇の感触を感じると同時に、俺の腹がキュウとかギューとかいう絞められた獣のような鳴き声を上げ、思いっきり雰囲気をぶち壊した。

「とりあえず朝飯を食いたいんですが」

「色気より食い気か。全く同感だ」

 クックと喉の奥で笑うと、彼女は俺を離して野生の獣のような伸びをした。

 その刹那、ふわりとその体の匂いが俺の鼻をくすぐる。

 あ、今ちょっと色気に傾きそうになった。

「魚をバターで焼くって言ってたから楽しみ楽しみ」

 だが、俺とは逆に彼女の方は食い気に傾いてしまったらしい。

 もしや俺達って合わない?


 未来に対するちょっとした不安を抱きながら、俺はとりあえず手早く服を身につけたのだった。

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