お初にお目に掛かります。
私の誤解から屋敷の皆さんに迷惑を掛けた数日後の事です。
その日は朝から屋敷の皆さんがバタバタと走り回っておられています。
勿論、萩さんなんかは髪を振り乱してという状態です。華ちゃんに「何かあるの?」と聞きますと「はい!今日は大変なお客様がお見えなのです。」と言って走っていかれました。
今まで、お客さんが訪問されるような事態ではなく皆さん、本当に大変そうなのです。
そして、私は誰からも相手をしてもらえず何か手伝える事が無いか?と思い、屋敷中をウロウロしていました。
すると玄関から凄い格好の人達が数人「こちらは桐 鷹明殿の屋敷でしょうか?」と声がします。
私は萩さんを見つけて「お客さんだよ。」と知らせました。
すると萩さんは顔を引き攣らせて慌てて行かれました。
私は本当に大事なお客さんなんだ~~と暢気にしていたんだけど、これがまた大変な御方が来られたのです。私はコッソリ様子を伺っていると何と・・・・・・凄い牛車から降りられた方は遠目でもキラキラした女の方でした。そして、萩さんを筆頭に女房さん達は廊下にずら~~と並ばれて一斉に三つ指をつかれたのです。思わず「すご~~い!!まるで大奥のお女中さんみたい」と心の中で叫んでいました。それ程、大事なお客さんなんですね。私は女の勘って言いましょうか思わず隠れるように部屋に戻りました。皆さん、凄く緊張されています。萩さんなんかは特に!あの萩さんを緊張させるなんて凄い大物だと思わずにいられない!!
暫らくバタバタ、ザワザワ。皆さんは早歩きで屋敷内をウロウロ。
いったい、誰のお客さんなのか?ご主人様に決まっていますよね。でも、肝心のご主人様はまだ、帰宅されていない。さて、誰があの凄いキラキラした方の相手をするのかと思っていました。
すると、萩さんが私の部屋に来て「凛様。初音様の御相手をお願い致します。」
「ハイ?・・・私ですか?・・・」
「鷹明様がお帰りになられるまでで御座います。どうか、お願い致します。・・・凛様・・・」
萩さんに頼まれたらイヤだと言えないじゃないの。
それに、あんな綺麗な人を傍で見れるって言うのも興味が湧くし。しっかり観賞しなくっちゃ!!
萩さんに彼女の名前を聞いてシズシズと部屋に行きました。
「失礼します。」
「・・・・・・。」
「初めまして。凛と言います。よろしく。」
「・・・・・・。」
「・・・・・あの~~。初音さま?」
「・・・・・・。」
「あの~~、聞こえてます?初音さま?」
「はい。」
「・・・・・・・」
(初音さんか~~。この人、綺麗~~!それに若そうだし。少し気が強そうに思うけど。でも、観賞用だわね~。)
「・・・・・・・・・・・。」(凛。初音)
「・・・・あの、凛様。お聞きしたい事が御座います。」
「はい。何ですか?私で分かる事があればお答えしますが。」
「鷹明様とどのような御関係で御座いますか?」
「関係ね~~~、何だろう?・・・分からないんです。」
「分からないのですか?」
「・・・・そう。・・・多分、鷹明さんの暇つぶし?でもないか。ねぇ、初音さま。鷹明さんから私の事を何か聞いてる?」
「・・・・・何も。」
「じゃあ、初音さまは鷹明さんとどのような関係ですか?」
「・・・・・・・申し訳ございませんが言えません。」
「そうですか。別に言いたくなければ言わなくても良いですよ。私も聞きません。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」(初音)
「それにしても、鷹明さんは遅いですね。」
「あの、凛様。もう一つお気きしても宜しいですか?」
「はい。どうぞ。」
「鷹明様は凛様にどのように接しておられますか?」
「そらもう意地悪ですよ。それに、私の事を馬鹿だ、馬鹿だと言うし。私が屋敷の外へ出たいと言うとダメだ。と怒るし、もう、訳が分かりません!」
「クスッ!ホホホホ・・・・失礼致しました。凛様。」
(まぁ~~!兄上様が意地悪?あの冷酷な方が・・・それに馬鹿?怒る?・・・兄上様って相当なのね。凛様には。これは、面白い事ですの。)
「初音さま。笑っている方がカワイイよ。あなたの笑顔、凄くステキ!」
「・・・・・・・凛様・・・・わたくし、初めて言われましたわ。可愛いって。」
「ウソ~~!初音さまって可愛いって何時も言われていると思っていた!」
「いいえ。わたくし、皆から能面姫と言われております。いつも冷たく見られていて。」
「そうなんだ~~~!初音さまの場合は表面に自分の感情が出ないだけよ!私の友達もそんな子がいるもの。その子、凄く綺麗で守ってあげたくなるんだけど、でも、私より強いのよ。それに私より年下なのにその子が年上みたいなの。面白いでしょう!だけど、凄く良い子なの。」
「あの・・・・凛様、もう一つお伺いしても宜しいですか?何故、鷹明様のお屋敷にいらっしゃるのですか?」
「・・・・・・本当は言いたくないんだけど。あのね、私、鷹明さんに拾って貰ったのよ。だから、そのままこの屋敷でお世話になっているの。」
「エェ~~!!拾われた~~!?何故?」
「話せば長くなるんだけど・・・それに信じる、信じないは初音さまの自由。あのね、私の生活で色々あってさ、夜の公園で星を見てたのよ。するとね、その星が私の所へ来て気が付いてみるとこの世界へ来ていたという訳。」
「・・・・・・凛様・・・・月から落ちたのですか?」
「ハァ!!初音さまも・・・まさか、月の姫って言うんじゃないでしょうね!」
「違うのですか?」
「・・・・・・・・もう良いです!」
そんな会話をしている時にご主人様が帰って来られました。
「初音。来ていたのか。」
「はい。お帰りなさいませ。」
「お帰り!鷹くん。」
「・・・・・(鷹くん?)・・・」(初音)
「ああ。ただいま。」
「・・・・・(ただいま?)・・」(初音)
「どうした?初音。」
「い、いいえ。・・・・・(あの噂は本当だったのですね。兄上様が婚儀をされたと言うのは。・・)」
「今、凛様と楽しくお話しをしていたところですの。ホホホホ・・・」
初音・・きっと俺と凛の事を確かめに来たな!!
何!!この空気!・・・この2人の関係は??




