みんなの思いです。
私はいったい何所の誰なのでしょうか?
屋敷の皆さんは私のことを「北の方さま」と呼んでおられます。北の方様とは奥様のことだと言うのです。私はこの屋敷のご主人様である鷹明さまの奥様なのですって。
皆さん、私に親しく話されているところを見ると、やはり前から鷹明さまの北の方だったと納得できます。それに、萩さん、華さんは時々、私のことを「凛様」と呼ばれます。
ところで私は、いったい何時、鷹明さまと結婚をしたのでしょうか?思い出したくても思い出せない。
そして、私は病気だと言われました。どのような病気なのでしょうか?皆さん、教えてくれません。
私は毎日、何をして過ごしていたのかも分かりません。時折、庭師のような雑用を任されている武さんと言う人が私を見て、目に涙を浮かべて「北の方様。お労しや。」と嘆いておられます。
「お労しや。」と嘆かれるほど私の病気は重いのでしょうか?
それに、この前、お見えになった友親さまと楓さま。康紀さまと咲子さま・・・・あの方達は私の事をよく知っておられるようで、楓さまは私の事を「お姉さま」と呼んでおられました。何故、私が楓さまの姉なのでしょう?分かりません。
そして咲子さま。私、あの方の事をよく知っているような気もするのですが・・・・・
まぁ、皆さんは私の友達と仰っていたから友達なのでしょう。
私の旦那様との婚儀までの経過は分かりませんが、お見合いだったのでしょうか?それとも恋愛?
恋愛の末に婚儀をしていたら良いのですが。分かりません。
旦那様でおられる鷹明さまは何の取り得も無い、顔も綺麗なわけでも無い私を選ばれたのでしょうか?
萩さん、華さんの話しでは「そら、もう~お二人は相思相愛の中でしたから。フフフフ・・・」と言われています。はたしてそうだったのでしょうか?
一度、お友達に聞いてみたいと思っています。鷹明さまには直接には聞けません!
だって・・・・恥ずかしいじゃありませんか!(ポッ)
凛と夫婦を始めてから俺は調子が狂いぱなしだ。
「これが、凛か!」と疑いたくもなる。何と言うか・・・淑女のように恥じらい、落ち着きがある。
本当に凛はこれで良いのか!!何でも、俺の言う通りにしているが・・・・・
二言目には「旦那さまの言う事が正しいと思います。」だと言う!今までの凛では考えられん!
それに、屋敷の者まで「北の方様」だ。もし、凛が今までの事を思い出したら・・・・・・
考えるのを止めよう。
今、大変なのが宮中の中の者達だ!出会う者達、皆、「おめでとうございます。鷹明殿」とか「いったい、どのような方なのです?一度見てみたいものです。」とか宮中の女房達に措いては「鷹明様、いったいどうされたのです。あなた様が。」とか「わたくしが居りながら・・・」とか訳の分からん者達に毎日、言われている始末。俺が婚儀をする事が珍しいのか!馬鹿どもが!!
でも、屋敷に帰ったら凛に「お帰りなさいませ。」と言われるのも悪くはない。
まぁ、凛の物忘れが治るまで、このままでも良いか。
本当に凛様、鷹明様を見ておりますと、わたくしの気持ちまでが和みます。
凛様が鷹明様の身の回りの事を一生懸命に成されておいでなのです。勿論、華をはじめ屋敷の者達もこの、お二人を見て心を癒させていただいているようです。
このまま、凛様のお忘れが治りませんように仏様にお願い致しているのでございます。
私と凛さま・・・・・北の方様があのようになられたのは私のせいでございます。
本当に、申し訳なく思っているのでございます。あの日以来、私は北の方様にお出会いする事を避けていたのだございます。もし、あの時・・・・・・・・考えるだけで恐ろしいでございます。
だけど、今は北の方様と旦那様が睦まじい御姿を拝見させて頂いていますと私供までが嬉しく思うのでございます。しかし・・・本当に、これで良かったのでございましょうか?
わたくしが武の悲鳴を聞きつけました。
駆けつけてみますと北の方様がお倒れになられていたのです。本当に心臓が止まる思いでございました。でも、今はご主人様の北の方様。わたくしは夢を見ているようでございます。
そして、北の方様のお傍で毎日、楽しく過ごさせて頂いているのです。毎日が笑い声で溢れております。それに、何と言っても北の方様が大人しいのも良いものでございます。
以前でしたら北の方様のお考えが分からず苦労いたしました。
そして何よりもわたくしにとって嬉しい事は北の方様は鷹明様の事を「旦那様」と思い込まれておいででございます。このまま時を過ごさせて頂ける事を願って北の方様にお仕えしたく存じます。




