第一話
赤のスカジャンを着た男が四人。全員髪にバンダナを巻いていた。
今、このせまい路地には五人の人間がいた。
俺は煙草に火をつけて辺りを見回した。
と、いきなり脇腹を蹴られた。
俺はくわえてた煙草を落とし、小さく呻いた。
「なに、余裕ぶってんだぁ」
おれはそいつの足元に唾を吐いてやった。
「てめぇ、死にてぇのか」
「てめぇって言われたの久しぶりだなぁ」
ちゃかして言ってやった。どうやら頭に血が昇ったみたいだ。
「痛い目みないとわからんらしいな」
「うわぁーレトロなセリフしぶいねぇ」
俺の前に立ってたやつが俺の腹に拳をめり込ませてきた。
いいパンチだった。ボクシングかなにかをやってるのかもしれなかった。
次に奴の右のパンチが左頬に飛んできた。
「なかなかのパンチじゃん」
「ふざけやがって、おい捕まえろ」
俺の腕を取ろうと両脇に奴らのうちの二人が回りこんできた。
右に回っていた奴の、右膝にローキックを出した。
膝の靭帯を痛めたらしく、蹴った男は地面に転がった。
左の奴が俺の腰にタックルをしてきた。
そいつの顔に左膝をめり込ます。
鼻の潰れる感触があり、そいつも地面に沈んだ。
と、正面から俺を殴った奴でない奴が殴りかかってきた。そのパンチを上体を軽く横へ揺らしてかわして、右ストレートを顎に叩き込んだ。そいつはあお向きに倒れた。
俺を最初に殴ったやつが俺の目の前に立った。
「なに、俺とやる気?」
そいつはファイティングポーズを取った。やはりボクシングをかじってるらしい。
「しかたねぇなぁ、稽古つけてやるよ」
言い終わらないうちに男の右のパンチが飛んできた。
そのパンチを左手で横に払った。
顎ががらあきだった。おれはその顎に右の掌底を、斜め下から突き上げた。
歯がぶつかる音がして、そいつは仰向けに倒れた。
「なんだよ、一発で終わりかよ」
俺は煙草を取り出しながら言った。右膝を俺にやられた奴がおれを見て言った。
「お、お前なにものだ?」
「おっ、またレトロなセリフしぶいね」
俺は倒れてる奴らの財布を抜きながら言った。
「風化のやつらも案外たいしたことないな。そんなんだと陽介に殺されるぜ」
本日の収穫二万五千円。