表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

少女の思い

 「……嫌だ」


 「何が嫌なんだ。似合ってるじゃないか」


 「そうだよぉ~とっても似合ってるよぉ~」


 試着室から出てきたイヴちゃんは白いワンピース姿だ。


 私の見立てだが、間違っていなかったみたいだ。背丈が低いがスラリとしたスタイルの彼女にはやはりこれしかないと以前から感じていた。


 まるで白い妖精。ムフフフ――――


 イヴちゃんを抱きしめる。


 とても嫌がるが、私は万力の力でイヴちゃんを放そうとしなかった。


 彼女の香りが鼻腔を擽ってとても変な気分になる。


 「おいカナ。そのにやけ面をどうにかしろ。通報されかねない」


 「だぁってぇ~」


 すごくいい香りがするだもん。やめられないよぉ。


 なんでこんなに可愛いんだろう。


 店員さんが訝しむ視線を向けていたが、そんなことは些事であるかのように、イヴちゃんに私は夢中だった。




 

 

 洋服店から外に出て、街道を三人で歩く。


 平日なのでそんなに人通りは無い。歩いているのは巡業中のサラリーマンや暇を持て余して買い物に出てきた主婦。フリーターかニートかもわからない若者。


 私も本当は大学の講義があったのだが、最近――――ここ三日間――――更に言うならイヴちゃんが来てからは禄に大学へ足を運んでいなかった。


 メール画面を開くと同じゼミの友達からの心配のメールが届いていた。


 歩きながら逡巡し、意を決して嘘のメールをする。

 

 『風邪が長続きしてる』


 送信ボタンを押した。


 「――――――? どうしたカナ」


 「うんうん、なんでもないですよ」


 ケータイを急いで閉じる。笑顔を向けてなんでもないように取り繕う。


 ――――――言えない。私がズル休みしてるなんて彼には言えない。


 私が二人の関係が心配で学校を休んでいるなんて言えない。


 「…………そっか」


 「うん、そうだですよ。それより次行く店は考えてるのですかぁ? せっかく両手に花のデートなのに」


 「デートじゃねえだろう。服を買ったんだからもう帰るに決まって――――」


 「日上。あれは何だ」

 

 イヴちゃんが目をキラキラとさせて興味深そうに指差す先には電子音と『GAME STAISION』と書かれた看板が立てられた店が。


 「――――ん。ゲーセンだろう」


 「げーせん?」


 「ゲームセンターだよ。行った事ないのか?」


 「げーむせんたぁ?」


 首を傾げるイヴちゃん。

 

 「じゃあ、次のデートプランはあそこで!!」


 二人の背中を押して先を促す。


 イヴちゃんの足取りは軽く、ひがみさんはお金の心配をしてか足取りは悪かった。


 だけどそれでも、イヤイヤでも進んでいた。


 ――――――よかった。


 今までの彼だと、決して遊ぼうなどとしなかった。


 友人に裏切られたと思っていた彼を必死に外に連れ出そうとしていたが、全て無駄に終わっていた。


 彼を助けたいと思っていたのに、私にはできなかった。


 だけど、今彼はイヴちゃんと一緒に居る事で何かが変わり出している。


 そのことで、少しは嫉妬していると思う。


 背中を押すことをやめて、二人仲良くゲームセンターに入っていくのを見つめる。


 とても嫌そうに見えるけれども、今の彼は三日前とは違う様に見えた。


 死にながら生きるようにバイト生活を続けていただけの彼とは、色がちがっていた。


 彼女の――――イヴという少女と関わってから、彼の目に生気が戻り始めていた。


 ――――――私じゃどうしようもなかったのに。


 気づけば二人は私を残して店の中に入っていた。


 私だけが取り残されて、一人街の中を立ち尽くしていた。


 「…………ひどいねえ。ひがみさんは」


 泣きそうになったが、それでも彼に元気が戻り始めたことは嬉しかった。


 だから、せめて私も楽しそうに振舞って、心配させないようにしよう。


 そう決めた。


 

 

 『本当にそれでいいの?』


 

 

 後ろから聞こえた声に、私は咄嗟に振り返った。


 振り返ってしまった。


 「ハァイ」


 気軽そうに挨拶をしたその女性の目は、イヴちゃんと同じ青い目をしていた。


 


   



    

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ