事後
俺にとって人生とは平坦で過疎化の進んだ田舎町の情景の様に静かなモノであって欲しいものである。
過度な刺激など願い下げ、俺はそんなマゾではない。
静かに生きていくべきものであり、ゆっくりと終わらせるべきものだった。
そんな風に生きているためだろうか。周りの人たちはそれを不審がり、やがて近づかなくなっていった。
家族すらもう長いこと連絡をくれない。
俺の周りに居たのは正義感が異常に強くて扱いづらい男と、俺のことを好きだといった変態後輩ぐらいだった。
我ながらなんて情けない青春を送っているのだろうかと思ったが、それが丁度いいのだとも思った。
俺みたいな世間外れサマにできることは少ない。せいぜい一人か二人、関っていく程度しか出来ないのだろう。
だからそれでいい。それが良いと思って過ごしていた。
なのに、現実には俺はたった二人を繋ぎとめることも出来ずに、また失った。
目の前にいるのは血を流して倒れているカナ。
――――――何かの間違いだろう?
鮮血を見た周囲の人達が悲鳴を上げて、やがて野次馬が増え始めた。
――――――なぁ、何かの冗談だろう?
心の中でつぶやく言葉は外に出ることは無い。あくまで俺の中で発せられ、昇華される。
――――――明日もご飯食べに来るんだよな?
声に出しても無駄だとわかっていたからだ。今目の前にある死体に何度語りかけても無駄なのだと。
――――――またイヴとイチャイチャして俺を困らせるんだろう?
それでも心の声の発生を止めることは出来なかった。
何度も同じことを呟き続けて、今起きたことに目を逸らし続けていたかった。
やがて救急車が来て、隊員の内の一人が彼女の脈をはかり、無駄だと判断しても救命措置を取ってくれていたのをただ呆然と見ていた。
カナの死体は担架に載せられて救急車に乗せられ、近くの救急病院に搬送された。
俺は警察に連れて行かれ、事情聴取を受けた。
目撃者の証言から、『俺が犯人ではない』 とわかっているが、被害者の友人が偶然立ち合わせていたことを不審に思った警察からコッテリ絞られた。
刑事さんに尋問されている間、俺は抜け殻みたいに座っていただけだった。
後日、俺が無実だったと判断した警察はすぐに釈放して家まで送ってくれた。ちゃんと謝ってくれたうえに、俺の様子を心配してくれる素振りまで見せてくれた。
家にたどり着くと、鍵の掛かっていなかった扉を開ける。
中には誰もいない。
机の上には出前の寿司が置かれていた。
いつもの俺の家だった。
ただ、カナと、
カナの心臓を刺したイヴはそこにはいなかった。
俺はベッドに潜り込んで、夢が覚めるのを待っていた。




